11激走のトリデ

1、野分の朝

野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。

と「枕草子」に書いたのは清少納言。

台風の翌日は非常にしみじみとした趣があり面白い。

という意味ですが、台風の通過中はひどいもの。特に、今回の台風は「しみじみとした趣がある」とは、とても言えない感じでした。

2019年9月9日未明、関東地方あたりでは台風15号により、多くの人が被害を受けました。直接的な被害もあれば、間接的な被害もある。その間接的な被害のうちの1つが、「台風が通過中の朝に出社するか否か」という問題に悩まされたことではないかと思います。

今回は、自然災害時の出社について。

この記事がよくまとまっていましたので、例としてリンクを貼ります↓。

西山里緒さんが、Business Insider Japanに投稿した記事です。

「社畜日本」という刺激的なワードを使っていますが、このワードを聞いて何となくイメージができてしまうところが、逆に日本の勤務状況の縮図を表しているように思います。

あっさり午後出社やリモートワークか、「絶対出社」か…。

さて、皆さんはいかがでした(台風の来ていない地域の方は、いざこうなった場合どうなる)でしょうか?

2、午後出社・リモートワーク・絶対出社・参勤交代

西山さんの記事より、一部引用します(太字引用者)↓。

小売業の危機管理対応部署で働くヤマトさん(37)は、9月9日の朝9時にオフィスに出社して、呆然とした。
ヤマトさんはその日、普段より30分早い7時40分に家を出た。出社時間を遅らせる全体連絡は来なかったため「当然、時間通りに出社しなければひんしゅくを買うだろう」と考え、万全を期しての出社だった。
ところが、時間通りにオフィスに来ていたのはヤマトさんひとり。他の社員はみな自主的に午後出社・自宅待機を選んでいたのだ。
「だったら全体連絡でそう伝えてくれればいいのに」——。ヤマトさんは会社の対応に失望を隠せなかった。
時代の変わり目ゆえなのか、出社すべきか否かの判断に揺れた会社員はヤマトさん以外にも少なくなかったようだ。

「だったら全体連絡でそう伝えてくれればいいのに」。

まさにこれです。出社すべきか否か。なぜ全体連絡しない?

時代に適応した正直な会社ならば、どうすれば良かったのか? 猫頭巾さんのツイートが(皮肉のスパイスもまぶして)秀逸です↓。

これぞtwitterを駆使した戦略。もちろん全社員がSNSの使用を義務付けられていないと、なかなかに難しいかもですが、現代日本の物事の本質を見事についていると思います。

はっきり言って、こんな状況の中に自分がいたら、悪評とセットで社名を晒したくもなりますよね…↓。

この「津田沼駅の長蛇の列」は、今回の台風における日本の「絶対出社問題」を、全世界に晒す格好になりました。

「台風が落ち着いてから午後出社でいいですよ」とか、「自宅待機で、急ぎの仕事がある人はリモートワークしてください」などの指示が、ちゃんと会社から全社員に指示ができた会社がどれだけあるのか。緊急時に備える仕事のために出社させざるを得ないにしても、台風による不慮の事故などに備えて、現状確認と指示をきちんと出した会社がどれだけあるのか。

クラウドファンディングを扱う「CAMPFIRE」という会社では、会社からしっかりと全社的に「リモートワークを許可する」と発表したそうです。もっともこの会社は、普段から社員の自主的なリモートワークを認めている会社だそうですが…↓。

その一方で、まさか「カイシャへの忠誠」を確認するために、あえて指示せず、社員の自己判断に任せたリトマス試験紙的な会社もあるのではないか…と勘繰りたくもなる。

津田沼駅の長蛇の列を「参勤交代」、と例えたタイトルは言い得て妙で、まさに「将軍様」への忠誠を確認する、現代のサムライたちの縮図であるように見えてしまうのです。

3、イザカマクラ

ただし、繰り返しになりますが補足します。

停電を一刻も早く復旧すべき電気会社の方でしたり、急病や怪我人の治療にあたる医療関係者、電車などの保守点検関連の方たちなど、絶対にその場に出勤して仕事をしなければいけない方たちもいます。現在も復旧作業に従事されている方もいます。本当に頭が下がります。

しかし、だからこそ緊急時には、二次災害を防ぐためにも、組織の上層部の迅速な判断と、それを迅速に告知する方法、出勤させたのであれば組織が責任を持つという態度が必要ではないかと思うのです。

このような場合に、しっかりとした指示を出さずに、社員の自己判断に任せるのは、はっきり言って「責任逃れ」です。自己判断で来たんだから、何が起こっても知らないよ。それじゃあ「無責任」ではないですか。

台風列島とも呼ばれる日本列島。地震もよく起きます。ふだんからルール作りをしておくなり、緊急時の「回覧・告知ツール」を整備しておくなり、改めて「危機管理」が問われた、今回の台風であるように思いました。

古来、「将軍の危機には御家人が駆けつける」というシステム、御恩と奉公、「いざ鎌倉」という関係性が、日本の武士の世界にはありました。トライイットのページをご確認ください↓。

なお、鎌倉の腰越には、その名もずばり「イザカマクラ」という訪問介護などの会社もあります↓。

先に挙げた電気・医療・保守管理、またこのような訪問介護の会社のように「いざ何かが起こった時は、命の危険を顧みず駆けつける」という、無数の良心が、日本には根付いています。

逆説的になりますが、だからこそ、その駆けつけてくれる人たちが安心して働けるように、もし台風などの危険な状態なのであれば、駆けつける以外の効果的な方法もないかと考えるように、普段から考えておくべきではないでしょうか。鎌倉時代の昔であっても、「奉公」に対してはちゃんと「御恩」で報いていますので…。

4、つれづれなるままに

いかがでしたでしょうか? 今回の記事は「野分の朝」について、つれづれなるままに書いてみました。

なお、鎌倉時代~南北朝時代あたりで書かれた、吉田兼好の随筆「徒然草」の第19段にも「野分の朝」が出てきます↓。

野分の朝こそをかしけれ:野分は台風。台風一過の朝は風情がある。野分については『源氏物語』や『枕草子』などにもさかんに書かれているので、ここで書かなくてもいいようなものだが、腹ふくれる想いがするのでやはり書かないではいられないこと、どうせこの書き物はすぐに破り捨てるのだから書かないわけにはいかないと、この文の直後に言い訳をしている。

今回の台風でも、いろんな意味で「腹ふくれる想い」を味わった方も多いかと思います。そんな方には、こちらの本がおススメです↓。

沢渡あまねさんと吉田裕子さんの『仕事は「徒然草」でうまくいく』です。

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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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