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『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』
あの大ヒットした映画が
地上波発放送!ということで
かなり期待されているようですね!

ええ、この私も期待して
すでに録画予約をしております。
あとは、空き容量不足で録画が
途中で切れてしまわないように、
(皆様もお気を付けください…)
録画されたものをチェックして
大きすぎる番組は消したりしています。

2021年9月25日。

さらに10月からは、その続きである
「遊廓編」も始まるとあって、
さすが話題づくりも上手いものだと
感嘆しているところです。

さて、このように日本では
(いや、今や世界中で)すっかり
「煉獄さん、カッコイイ!」
「心を、燃やせ」
となっているわけですが、

そもそも
「煉獄」(れんごく)という言葉の
元々の意味はご存知でしょうか?

地獄、とはよく聞きますが、煉獄…?
煉獄の「煉」って、煉り羊羹の「煉り」…?

これは、キリスト教における概念です。
カトリック教会の教義によれば、
「煉獄」とは、
『この世のいのちの終わりと天国との間に
多くの人が経ると教えられる清めの期間』

だそうなんですね
(宗派によっては、認めていません)。

地獄ではなく、もちろん天国でもなく、
この世でもない、場所。
そこを煉(ね)り歩く。

『鬼滅の刃』本編を読んだ方であれば、
炎柱のこのキャラに「煉獄」という
名前をつけたセンスが
誠に秀逸だと感じると思います。

この作品の中の「煉獄さん」は、
偉大な剣士であった父親から認められず、
ある意味、悶々と悩んでいても
良いはずの人生です。
その悩みを「昇華」して、
竹で割ったようなさっぱりした気性、
言葉を濁さず「断定」する清々しさ
まさに「清め」のような
存在として描かれています。
敵からの「鬼にならないか?」のお誘いも
きっぱりと断っていますし。

ですが、その内心の憶測には、
やはり人間らしく、葛藤があります。
最後の最後、命を失う時には
亡き母に質問するのです
(ここは号泣シーンなので
ネタバレは詳しく書きません、ぜひ映画で…)。

つまり、煉獄さんは
清らかな存在であると同時に、
これでいいのだろうかと悩み巡ることも
忘れていない、
とても「人間らしい」キャラでして。

その奥深さがまた、
作品や映画の大ヒットにも
つながったのではないかと思います。

…ここから、少し話を拡大しましょう。
カトリックの本場と言えば、
ローマのあるイタリアです。

イタリアの人は、高等教育で
国民作家であるダンテの『神曲』を
学習します。

『神曲』とは、森鷗外の訳語でして、
現題は『神聖喜劇』と訳すのに近いもの。
この作品が書かれた13~14世紀の
イタリアは、しっちゃかめっちゃかの
政争入り乱れる乱世でして、
ダンテ自身もフィレンツェを追放
されたりしています。
まさに「悲劇」なんですが、
それを「喜劇」と表現してしまうのが
さすがは国民作家ダンテ。
この作品の中で、彼は
人間の道徳とか行くべき道とは何か、
などを描き出しているんですね。

さて『神曲』は三つのパートから成ります。
「地獄編」「煉獄編」「天国編」です。
主人公ダンテ(本人です)は、
古代ギリシアの詩人ウェルギリウスの案内で
地獄、煉獄、最後には天国を巡ります。
まったくの余談ですが、
漫画『聖闘士星矢』のハーデス編は
この地獄編に準じた舞台設定です
(もちろん解釈や描写は違いますが…)。

実際の物語は、作品を読んで頂くとして。

本記事のまとめとして、
半ば強引に『煉獄さん』と
この『神曲』を結び付けていきます。

煉獄さんは、断定します。
しかし内心には葛藤があります。
その葛藤を出さずに行動します。
しかしその葛藤を忘れたわけではありません。
断ち切ってはいないんです。

そのさまは、天国をさまよい求める
ダンテが描いた
まさに「煉獄」と重なります。

私たちが使う言葉も、同じです。
すべてを「断定」し過ぎると、
いつのまにか地獄に行ってしまう
こともあります。

断定しつつも、葛藤を忘れずに持つ。
迷うことを、恐れない。
人間をやめない。鬼にならない。
それこそが、逆説的になりますが
煉獄さんのような
「清々しい人生」につながるのでは
ないでしょうか?

この世の中は、有限ではありますが、
悩みは無限です。
その悩みの無限列車から
脱出したくなります。
私もついつい、もうこれでいいやと
悪い意味での開き直りを
してしまいがちです。

しかし、全く悩まずに、考えずに
思い込みだけで
ダンテイし過ぎること
は、
いつのまにか鬼の道、
地獄への片道切符にもなってしまいます。

時には、巡りましょう。
ダンテだけに。

…読者の皆様は、どうでしょう。
ダンテイし過ぎてないですか?

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