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スペイン、という国があります。
ヨーロッパの西、イベリア半島。
フランスから見れば
「ピレネー山脈」を隔てて鎮座する国!

「太陽の沈まない国」
呼ばれたこともあります。
el imperio en el que nunca se pone el sol。
世界中に植民地を持っていて、
世界のどこかでは太陽が上空にある。
ハプスブルク朝のスペイン!
1580年からは隣国の
ポルトガルもその傘下に入れていた。

そう、日本で太閤秀吉や
関ヶ原の戦いの頃、1600年前後には、
スペインはまさに「世界征服」目前で
ものすごく巨大な国だった。


…ただ、盛者必衰、というのも
歴史の常であります。
猛き国も、ついには衰える。
スペインという国は
まるでジェットコースターのような、
「上がって下がって」を体現してきた
歴史を持っている
のです。

本記事ではスペインの歴史について。

さて、読者の皆様は、スペインと言えば
どんなものを思い浮かべるでしょうか?

「情熱の国、バルセロナ!」
「サッカー、強いよね!」
「大航海時代で船乗りたちが進撃!」
「フラメンコに闘牛士!」
「パエリア、ドン・キホーテ、バルログ!」

色んなイメージが浮かぶかと思いますが、
例えば同じヨーロッパの
イギリス、フランス、ドイツなどとは
カラーが違うように感じませんか?

都市としては、
首都のマドリード、東の大都市バルセロナ
『バレンシア・オレンジ』のバレンシア
『セビリアの理髪師』のセビリア
これが人口上位四位。
特にマドリードは人口三百万人越え、
ヨーロッパ屈指の世界都市です。

ここに宮廷が移されたのは、
1561年「フェリペ二世」の治世。

…元々、イベリア半島は
「イスラーム」の勢力下でした。
もっとさかのぼれば
「ローマ帝国」の属州のひとつ、
「ヒスパニア」と呼ばれる地域。
北アフリカのカルタゴから
ローマ帝国が奪い取った土地。
それを東から北アフリカをぐるりと回って
やってきたイスラーム勢力に奪われた。

さらにそれを国土回復運動(レコンキスタ)
と呼ばれるキリスト教の
勢力の活動で奪い返す。

◆「地中海の覇者」カルタゴの支配下
◆「地中海帝国」ローマ帝国の支配下
◆「イスラーム勢力」の支配下
◆「国土回復運動」でキリスト教勢力に

そうなんです、イベリア半島、
スペインは紆余曲折の末にできた国。
718年から1492年、
何百年も続いたレコンキスタによって
キリスト教の国として生まれた。
東への「十字軍」は失敗しましたが、
西の「国土回復運動」は、成功した。

スペイン王国が生まれたのは1469年です。
イサベルとフェルナンドという
違う国の王様同士が結婚して爆誕します。
1492年、イスラームの拠点グラナダが陥落。
同年、コロンブスが
イサベルの資金によって大西洋に繰り出し、
新大陸を「発見」しました。
(本当は発見もなにもそこに在ったのですが)

フェリペ二世は、在位1556年~1598年。
織田信長や豊臣秀吉と同じ頃。
スペインが最盛期の頃の王様です。

東南アジアの「フィリピン」
彼の名前にちなんでいます。
メキシコなど中南米も支配。
極東、戦国時代の日本にまでやってきて
キリスト教や鉄砲をもたらす。
ザビエルも、フランスとの国境近く
ナバラ王国生まれのカトリックの宣教師。

…ではなぜ、この圧倒的に強い
太陽の沈まない国が沈んだのか?
いくつか理由はありますが、
まあ、敵が多かった。

まず、イギリス(イングランド)。
スペインには「無敵艦隊」と呼ばれる
強い海軍がいましたが、
1588年、イギリス艦隊に敗れます。

次に、オランダ。
オランダはスペインの領土でしたが、
「八十年戦争」とも呼ばれる
長い独立運動の末に
1648年に独立を果たす。

隣には、フランス。
1635年から1659年、
「フランス・スペイン戦争」と
呼ばれる戦いが起こる。
ドイツでは1618年から1648年に
「三十年戦争」が起こっていますから、
この戦いに連動した形。

ほか、イスラームのオスマン帝国や、
地中海のイタリア諸国とも戦う。

…要は、あまりに強くなり過ぎて、
「スペイン包囲網」ができていた。
みんな敵、四面楚歌状態。
「平家物語」で平家が強くなり過ぎて、
敵が増え、源氏にやられるのと
似たような感じでしょうか?

こうしてスペインは
植民地を奪われたりして、
世界貿易の覇権を徐々に失っていく。
戦争にはお金がかかりますから、
国家財政も破綻、火の車状態…。

その弱り目のスペインに目を付けたのが、
「太陽王」ことフランスのルイ十四世。
太陽が沈みつつあるスペインを
太陽の如きフランス王が狙う!


1701年「スペイン継承戦争」が勃発。

スペインを支配していた
ハプスブルク家のカルロス二世には、
世継ぎがいなかった。
ルイ十四世は自分の孫にあたる
フィリップに王位を継承させようとする。
つまり、フランスのブルボン家が、
ハプスブルク家支配のスペインを
乗っ取ろうとする。
戦争が起こる。

…結果的に、フィリップは
「フェリペ五世」として即位します。
さすがにフランスも楽勝とは言えず、
ぎりぎりで引き分けぐらいな感じでした。
太陽王のフランスがスペインを手に入れたら
他国にとっては超危険ですから。

「フランスは『永久に』スペインの
王位を請求してはならない」

そんな約束、ユトレヒト条約が結ばれて、
スペイン・ブルボン朝が生まれるのです。

…ただ、後にフランス革命が起き、
「ナポレオン」が皇帝になりますと、
そんな約束、知ったこっちゃない。

ナポレオンの兄ジョゼフがスペイン王に即位。
反発して「スペイン反乱(半島戦争)」が勃発。
1813年にブルボン王朝が「復活」しますが、
この争いで国土が荒廃してしまう…。

1898年には、日の出の勢いの
「アメリカ合衆国」と戦います。
この米西戦争で完敗。
フィリピン・グアムやキューバなどを奪われ、
南北アメリカや太平洋から一掃される…。
逆に言えばアメリカの台頭は、
スペインから奪った財産の上に成立している。

◆太陽の沈まない国・ハプスブルク朝!
◆「太陽王」に狙われ、ブルボン朝成立
◆ナポレオン兄が即位、半島戦争で荒廃
◆アメリカとの米西戦争で植民地を失う

最後にまとめましょう。

本記事ではジェットコースターのような
スペインの歴史を、かいつまんで
取捨選択して書いてみました。

その後、第二次世界大戦前には
「スペイン内戦」が起こり、
勝ったフランコが独裁政治を行いました。
彼が死去するとその遺言により
フアン・カルロス一世が即位し、
1975年「王政復古」が行われる。

現在のスペインは立憲君主制です。
現国王は2014年に即位したフェリペ六世

様々な勢力がせめぎ合いを繰り返し、
複雑な文化が醸成されてきたスペイン…。

ぜひ、歴史を紐解きつつ、その食文化を
味わってみてはいかがでしょうか?

※フィリピンとメキシコは、元は
スペインの植民地、同じ国でした。
『スペイン無双の栄光、太陽の沈まぬ国』↓

※フェリペ二世の前の国王、
カルロス一世(カール五世)を育てた女傑、
「マルグリット・ドートリッシュ」
についてはこちら↓

※フランスのルイ十四世、
太陽王についてはこちら。
『ヴェルサイユの太陽』↓

※スペイン内戦をモチーフに、
画家のダリが書いた絵画
「内乱の予感」についてはこちらから↓

合わせてぜひどうぞ!

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