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未発売映画劇場「いつか、どこかで」

前に「時限爆弾危機連発(ワイヤージレンマの謎)」でちょっとばかり触れたことですが、例の時限爆弾解体の最後の正念場で、「青のワイヤーか赤のワイヤーか、どっちを切る?(失敗したらドッカン)」の最初の例として浮上したのがこの映画。

これは現物を確認するしかないので、さっそく見てみた。

1958年のイギリス映画「Another Time, Another Place」(日本では完全に未公開なので、邦題はオレ製)

イギリス映画と紹介したが、製作陣はアメリカ色が濃く、原作小説もアメリカの脚本家レノア・コフィー(Lenore Coffee) 監督はイギリス人のルイス・アレン。

映画はいきなり、ナチス・ドイツのロケット兵器V2の発射シーンから始まる。大戦末期、この秘密兵器による空襲にさらされているロンドンが最初の舞台。

市中に落下したV2の不発弾を処理中の現場に駆けつけてくるのが、アメリカの新聞社の女性特派員(ラナ・ターナー)。ひと足先に現場に先に到着していたのがBBCの人気キャスターで、これがショーン・コネリー。007に起用されるよりも4年ほど前で、まだ線が細い二枚目に見える。

BBCがホントにそんなことをしていたのかは知らないが、やっていたのは不発弾処理の実況生中継。雨の降りしきる現場での解体作業はそれなりにスリリングなのだが、そのさなかに車のなかに退避したターナーとコネリーは、そこでイチャイチャしはじめて、緊迫感台無し

二人はかねてからの恋仲だったのだが、じつはターナーはニューヨークに婚約者(バリー・サリヴァン)を残してきていて、しかもそれが新聞社の上司という設定。単身赴任(?)先のロンドンで気が緩んだんだろうかね。ところがその上司がロンドンに来るとなって、さてターナー女史は恋の板ばさみ。苦悩の末、現・恋人のコネリーを選択するが、ところがコネリーにはじつは妻子がいて……というオイシイ展開。

ざっくり言えばメロドラマなのだが、じつはこの後にちょっと意外な展開があって、先の読めない展開になる。なかなかスリリングなメロドラマだ。

メロドラマ好きでない私に言わせれば、「すべてショーン・コネリーが悪い」だけどね(笑)

この映画でのコネリーは、メインタイトルで「INTRODUCING」とあるように、ほぼ新人あつかい。この前後にけっこう多くの出演作品があるが、TV映画が多いし、そう大きな役はなかったようだ。

初めてめぐってきたこの役が足がかりになったのだろうか、あるいはこの映画での無責任モテ男ぶりが、ジェイムズ・ボンド役をさがしていた007のプロデューサーたちの目にとまったのか。違うか(笑)

どちらにせよ、ここでのコネリーは存分に存在感を発揮していて、後年の活躍ぶりを充分に予感させる(じつは映画の後半には、ほとんど出てこないんだけどね)

007起用以前のコネリーといえば、比較的知られているのは「史上最大の作戦」(1962年)のスコットランド兵役くらい。相棒のノーマン・ロシントンとの漫才もどきのやり取りと、ブルドックを連れたケネス・モアの将軍とのシーンで印象を残している。

そんな「007以前のショーン・コネリー」の雄姿を見られるという意味では、貴重な作品といえばいえよう。

で、肝心の(?)ワイヤージレンマ問題は?

冒頭の爆弾解体シーンに戻ろう。

世の爆弾処理はだいたいそうなのか、解体要員がたった一人で作業に取り組み、他の一同は安全地帯へ退避する。解体要員は自らの作業を、離れた安全地帯のみなさんに、一手ごとに無線報告しながら解体してゆくのだ(こうすれば失敗してドッカンになっても、どこが悪かったか後で検証して次の作業のときに役立てられるのだ)

で、この映画では、この作業をけっこう克明に見せる。もちろんコネリーのキャスターがその一挙手一投足をリポートするわけだ。

おお、ワイヤージレンマにピッタリのシーンではないか。

と、期待を持たせたが、けっきょく「赤か? 青か?」の場面はなし。

雨で滑りそうになったりはするが、大した危機もなく、無事に解体作業は終わってしう。映画開巻から10分ほどで作業終了。

確証にはならないが、この絶好のシーンで「ワイヤージレンマ」を使っていないということは、1958年の時点では「ワイヤージレンマ」という概念が、少なくともまだポピュラーではなかった事の、一つの示唆にはなるかもしれない。

あ、モノクロ映画だから「赤か? 青か?」が無理だっただけなのかな?

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