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令和5年・九州場所雑記

ここ何年かつづいていた、序盤から番狂わせ、潰しあい、波乱、平幕力士の快進撃などが続いて誰が優勝するか予想もできない戦国場所。見ているこちらも、すっかりそうした乱世モードに慣れ切っていました。

それがこの九州場所では、横綱・照ノ富士こそ全休で不在でしたが、序盤戦を上位陣の3大関、3関脇が好調に乗り切って、いつになく締まった印象で始まりした。

その後、上位陣が潰しあいに入ると、するすると中位から下位の平幕勢が抜け出し、再び混戦模様。なかでも、2場所連続での快進撃を見せた熱海富士の活躍は目覚ましく、やっぱり戦国継続、またしても新たなる覇者が誕生するのかと思いました。

その流れを食い止めたのが、大関・霧島でした。

14日目の2敗同士の相星決戦で熱海富士の挑戦を跳ね返し、春場所につづく2度目の優勝を果たしました。勝ち星も13勝と、堂々「レベルの高い」優勝です。今場所で綱取りに失敗した貴景勝にかわって、来年初場所では綱取りに挑むことになりますね。成功すれば大関在位4場所でのスピード突破です。期待しましょう。

2023年の本場所が終わって振り返ってみれば、今年は横綱が1場所、大関が3場所、関脇が2場所で優勝し、さらにいえば関脇で優勝した霧島(霧馬山)と豊昇龍は大関に昇進しているので、全6場所の優勝を現在の上位陣で占めたことになります。そしてここ5年間、毎年生まれていた平幕優勝が、今年はありませんでした。

どうやら大相撲史上に残る戦国乱世の時代は、ここらでひと落ち着きのようです。来年からは横綱・大関の上位陣での競り合いが続くことになるんでしょうか。

昨年から今年にかけて激しい競争を繰り広げてきた大関盗りレースも決着が見えてきています。霧島豊昇龍が抜け出し、負傷で幕下まで下がった若隆景、今場所負け越しで来場所は平幕へ後退しそうな若元春が脱落。

残るは今年6場所すべてを勝ち越した大栄翔琴ノ若のみ。ただ、今場所9勝にとどまってしまった大栄翔は半歩後退。早く巻き返さないと、新たなる「万年大関候補」になりかねない状況です。

逆に琴ノ若は、今場所は内容もよく11勝。初場所の成績次第では大関陣に殴り込みできそうです。今場所は大関を連破して11日目まで2敗、優勝争いのトップに並んで、一気に今場所後にも大関盗り成るかのムードが盛り上がりかけました。私なんか「初優勝、新大関、琴櫻襲名」の三冠を手にすると思ったのですが、霧島との直接対決に敗れ、さらに竜電に取りこぼしての連敗で霧散しました。

それでも立て直して11勝4敗としたのだから、大関への資格は充分。霧島の綱取りとともに、初場所の大目玉になりそうですね。

今場所の土俵を大いに沸かせたのが、めずらしい決まり手。「大きく肩越しに相手の上手を取り、身体を反らさずに、つかんだ腕の方向に投げて勝つ」って、わかりますか? 相当の相撲マニアでもパッとはわからないでしょう。今場所3日目に琴ノ若が明生を下した決まり手がこれです。「大逆手」 幕内では13年ぶりの大技だったそうです。こういうのが出ると嬉しくなりますね。今場所は幕下でも「外小股」が出ていました。

宇良が出て以来、反り技も見られるようになってきたし、「頭捻り」とか「播磨投げ」とかも増えている気がします。かつてはそんな技はめったに見られなかったんですが。

これ、けっこう最近の新弟子入門の傾向によるものだと思うんですよ。かつては相撲経験なんてほとんどない中卒入門が多数だったのが、ここ近年は大学や高校で学生相撲を経験してきたり、中卒入門でも町の相撲道場みたいなところで相撲を習ってきている子が増えています。かつてはまったく別物に近かったアマチュア相撲とプロの大相撲のあいだの溝が消滅してきているんですね。

アマチュア相撲のほとんどは、トーナメント形式で大会がおこなわれています。負けたら終わりのトーナメント戦では、とにかく勝利が求められます。そのため、どんな手を使っても勝つ(いや言い方悪いけど)相撲が自然に身に着くのではないでしょうか。

今場所はまた、物言いのつく相撲も多かった気がします。土俵際でもつれる相撲がけっこうたくさんありました。これも、アマ相撲上がり(いやいや言い方)が増えたせいでしょうか。

誤解のないように言っておきますが、アマ相撲からの大相撲入りが増えるのは非常にいいことです。新弟子不足が心配される昨今、アマ相撲が大相撲入りの入り口になってくれるのは、大相撲側としても歓迎するべきでしょう。結果的にそれがお客さんの喜ぶ相撲につながるのなら、たいへん結構なことですからね。今後も多くの人材を大相撲に送ってほしいですね。

その物言いについてはちょっと言いたいことがあります。それは、ビデオ判定について。

このことはあらためて別稿にまとめますが、導入から50年以上が過ぎたビデオ判定システム、そろそろ改良していく必要があると思いますよ。サッカーのVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)などよりもはるかに先行していたシステムなのに、いささか立ち遅れた感があるもんですからね。

さて最後に、NHKさんへ。

NHKさん、盛んに12月からのBS放送改革を宣伝しています。現在のBS1とBSプレミアそれにBS4Kの3波を、BS1と4Kプレミアの2波に再編するというものです。

それについてどうこう言うつもりはありませんが、NHKさん「大相撲中継」はどうしてくれるんですか?

これまでは、13時からBS1で三段目上位から幕下、十両の取組を中継し、15時か16時ごろから地上波に移行、それと並行して「画質の良い」BS4Kでも中継しています。

このBS1での中継は、今後も継続するんでしょうね。というのも、4Kを未導入のわが家では、これがなくなると十両以下の取組の中継が見られなくなるからです。

けっこう心配しているのですが、九州場所の中継番組内ではきちんとしたアナウンスがありませんでした。もう次の初場所はBS再編後になるんですから、きちんと知らせてほしいですね。「4Kで見ればいいでしょ」となるなら、それなりに準備しなくちゃなりませんから。

ということで、来年も引き続きよろしくお願いします。

史上最強の年間最多勝2023

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