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500円映画劇場「デス・アイランド/殺人蜂の恐怖」

前にも書いたように、ホームセンターなどでのDVD安売りが壊滅し、レンタル店もほぼ消滅(わが家の近くでは)、レンタル落ちの格安DVDも滅多に見なくなったので、この「500円映画劇場」も、最近はもっぱらネット配信の映画をアマゾンなどで観ています。それも出来るだけプライム会員の見放題で無料で観られるやつ。看板に偽りあり? いやプライム会費が毎月500円だからいいでしょ(笑)

さてこの「デス・アイランド/殺人蜂の恐怖」もアマゾン・プライムの会員無料で見つけた映画です。

まぁ作品の質的には、かつてのヤスモノDVDに引けを取らないシロモノなのでいいんですが、この手の配信もので困るのは、作品の基礎情報が配信サイトからはほとんど得られないこと。アマゾンさんもそういった資料的なことにはまったく無頓着らしくて特にクレジットの標示などしていない。この作品も辛うじて2021年の作品ということだけは明記されていましたが、そもそもどこの国の映画かとか、劇場公開されたのかとかには触れられていません。映画を見はじめてから初めて中国語作品であることがわかった次第。

毎度おなじみのオールシネマさんで調べてみても、「中国映画」で「パニックもの」で「80分」ということぐらいしかわかりません。原題も出てないぞ。あれ、こっちでは2020年作品とありますが?

おまけに、これもいつもお世話になっている、ご存じIMDBにも、中国系作品に強いHKDMBでも、この作品は見つかりません。困ったもんだ。

あちこち検索してみてようやく判明した原題らしきものは、中国語題「杀人蜂入侵」英語題「KILLER BEE INVASION」だけ。映画でクレジットされてたのもこれだったような気がするから、まぁ間違いはないんでしょう。

そんなわけで、この作品が劇場用の映画なのか、テレビ用なのか、DVDスルー作品なのか、あるいは配信専用作品なのか、いまひとつはっきりしませんでした。ま、そんなことはどうでもいいんですが。

例によっての誇大広告

どこだかよくわからん孤島で、科学者の一団が研究に励んでいる。そこで発見された虫入り琥珀に封じ込められたハチがまだ生きていることが判明したからだ。このハチの遺伝子を調べれば不老不死が実現できる! そこで抽出された遺伝子をミツバチに移植してみると、あら不思議、突然猛毒を持つ凶暴な殺人蜂に変異し、群れを成して科学者たちに襲いかかる。貴重なハチ入りの琥珀と生存者を救うべく、送りこまれた傭兵の一団は、恐るべき危機に直面する……

とまぁ、何度もどこかで見たような凡庸な動物スリラー。ハチってのもこの手の映画ではめずらしいネタではないですね、「スウォーム」とか「キラービー」とか(古いな) その点でも新味はあまり感じられません。

ムシ映画は、CGの普及以降で作りやすくなったジャンルのひとつ。相変わらず大量生産されてるスパイダー映画とか、ついこの前にも「セミマゲドン」なんて映画見たよな。本物のムシを使う撮影は大変なんですが(「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」のあのシーンとか)、CGならば比較的苦労せずに撮れますよね。

しかし、ムシの群れを上手く映画に取り入れるのはけっこう難しいミッションです。人類をムシの群れと闘わせるのは、意外に困難なんですよ。

この映画でも、押し寄せるハチの群れに傭兵部隊が立ち向かい、無数のハチの群れに向かってマシンガンを乱射するんですが、そりゃあ効果ないでしょ。主役の女性科学者はその点冷静で、冷却スプレー使えばいいのよと建設的な意見を述べますが、そこで用意されているのはキンチョールみたいなスプレー缶。絶対量が不足でしょ、それじゃ。

せっかく用意した傭兵部隊の銃器がもったいないと感じたのか、製作陣は別の敵を用意します。

島には、なぜか未知の部族が棲んでいて、彼らが立ちはだかります。その部族が傭兵や科学者たちにけしかけるのは、凶暴なイヌの群れ。「夜犬」と称するそのワン公たち(ドーベルマンに見えます)に対してなら、マシンガンは有効ですからね。多勢に無勢だけど

で、その結果どうなったかというと、映画のタイトルにもなっている主役の「殺人蜂」がすっかり霞んじゃいました。敵方が二分されたおかげで、サスペンスも薄れちゃってます。そのうえ、ふたつの敵勢力に対抗する傭兵側の手段が、工夫不足で、ただ単に銃器や手榴弾をぶっ放しているだけ。工夫の足らないアクションが続くので、いかにも単調なんだよね。

誤解のないように書いておきますが、この映画、決してヤスモノではないようです。孤島のジャングルはちゃんとジャングルに見えるし(500円映画ではしばしば、そのへんの公園にしか見えないジャングルが登場する)、CGの出来自体は悪くないし、俳優もちゃんとしてる。ことに主役の女性科学者を演じるユー・ジンヤン(于心妍)はなかなかの美人で凛々しくもあり、私好みでした(笑)

だからといって、映画の出来栄えが素晴らしいかというと、そうではない。

どうしてこんなことになったのか。勝手な推測をすれば、予算はあるが、スケジュールに余裕がなく、シナリオの練り込みや打ち合わせが不足だったんでしょう。そのへんはやっぱりヤスモノ映画なんですよね。

そもそもの掴みに虫入り琥珀が出てくる時点で、そりゃ「ジュラシック・パーク」だろとツッコまれそうだし、殺人蜂にさされてもすぐには死なずにきっちり2時間後に死ぬんだとか、ツッコミどころも満載。傭兵カップルが「帰還したら結婚しよう」などと超わかりやすい死亡フラグを立ててしまったりするし。何かと安直なんですよね。

ハードがいくら進化して、技術的に高度な映像を撮れるようになっても、やっぱり映画の「芯」になるストーリーとか設定とかキャラクターとか、要するにシナリオは、なかなか技術の発展には追いつけないものなんでしょう。

最初に書いたように、この映画はどうやら中国映画のようなんですが、中国映画でもこれまでの500円映画の世界と同じようなことになるあたりは、興味深いですね。

こっちのほうが正直だけど、やっぱり誇大広告

アマゾンのラインナップを見ていると、どうやら最近は中国製のヤスモノ映画がずいぶん登場しているようです。かつて歴史的にはこの手のヤスモノ映画の世界では、1960年代はイタリア製が主流、その後ホンコン製、フィリピン製などが台頭しました。安売りDVDの時代には、カナダ製が多かったですね(あくまで私的な印象です) これからは中国製が主流になるんでしょうか。

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