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しくじり商品研究室:amadana シュレッダー

商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。
ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
(トップ画像引用元:https://www.amadana.com/product/ds-106

amadana シュレッダーの例

amadanaとは

amadana(アマダナ)は、amadana株式会社が展開している日本のデザイン家電ブランド及びその会社名です。2002年に会社が設立され、2003年にブランドが立ち上がっています。NTTドコモのFOMA N705iといった携帯電話でのコラボや、サントリーのザ・プレミアム・モルツを推奨する本格ビアサーバー、ウォーターサーバーや、さらには「amadana base」という家まで、多岐に渡る商品を手掛けています。

FOMA N705i (画像引用元:https://www.docomo.ne.jp/support/product/n705i/)

そのamadanaの商品の中で、今回は2004年に発売された商品群、中でもシュレッダーを例に見ていきたいと思います。amadanaの携帯電話を知っている人でも、シュレッダーがあることはなかなか知らないのではないかと思います(私も知りませんでした)。おそらく、あまり売れなかったのではないかと思います。

しくじり要因

まず、amadanaのシュレッダーについて紹介をしていきます。

パーソナルシュレッダーDS-106 (画像引用元:https://www.amadana.com/product/ds-106)

amadanaのシュレッダーは「リビングにも置けるデザインのシュレッダー」をコンセプトに作られています。2003年に個人情報保護法が成立し、2005年から施行されるにあたり、需要を見込んで発売されたものと思われます。
商品としては、amadanaらしいシンプルなデザインが最大の特徴です。機能面では静音性(53db/測定方法は不明)にもこだわっているそうです。
電動式で価格は当時¥19,950で販売されています。

①機能・デザイン・価格のバランスが取れていない

さて、個人需要においては、個人情報保護法によって、シュレッダーを購入した人が多いのではないかと思います。当時は、ナカバヤシ、フェローズ、アスカといったメーカーがシュレッダーを発売していたようです。電動式で容量が近いものはおおよそ¥15,000程度で販売されていたようです。電動ではなく、手動のものもあり、そちらは¥1,500程度で販売されています。
amadanaのシュレッダーは当時の電動のものから¥5,000ほど高くなりますが、これをどう捉えるか・・・
静音性については、体感は不明ですが、初めて購入する人が多いと価値が伝わりにくく、どうしても音が気になる場合は、手動のものでも代用ができてしまいます。
そうなると、デザインに¥5,000の価値を見出せるか・・・ということになります。価値観にもよりますが、導入期の一般ユーザーには高価に映ったのかと思います。端的に言ってしまうと、必要なものがカッコいいのであれば、高くても売れますが、それほど必要でないものは、たとえデザインが良くてもあまり売れないでしょう。

パーソナルシュレッダーDS-106 (画像引用元:https://www.zutto.co.jp/catalog/1079)

②ブランドイメージが希薄になった

2004年のシュレッダー発売の際、amadanaは同時に電卓、オーディオ、加湿器を同時に発売し、さらに、その後にマッサージャー、FAX、電話機・子機の発売を発表しています。シュレッダーも静音性についてしっかり説明することもできたと思いますが、当時のプレスリリース見ると、情報量が増えたことで、内容が「シュレッダーなど新商品群を発売」となってしまい、個々の製品の説明ができなくなってしまっています。
また、当時のamadanaのユーザーはデジタルリテラシーが高い人が多かったように思います。その中で、加湿器やマッサージャーがラインアップに入るとで、ブランドのイメージが希薄になってしまったと思います。

パーソナルシュレッダーDS-106 (画像引用元:https://www.zutto.co.jp/catalog/1079)

なぜバルミューダになれなかったのか?

バルミューダのトースターとケトル(ぱくたそ[ https://www.pakutaso.com ])

当時のamadanaは、今の家電メーカーでいうと、成長中のバルミューダのようでした。バルミューダも設立は2003年です。当時は、ブランド認知が高まるきっかけになった扇風機が出る前で、バルミューダの知名度はまだまだ低い時です。
家電業界的には、業界外のデザイナーと家電のコラボで、独特な高級家電があふれていた頃になります。おそらく、amadanaは初心に立ちかえって、家電らしさと高級感を狙ったものと思われます。
しかし、この10年くらいであまりamadanaの名前を聞く機会は減ってしまいました。
何がこの二社を分けたのか?
まず、商品へのアプローチの違いがあります。変化の少ない市場に機能面での新しさとデザインで商品をつくるバルミューダに対して、amadanaはデザインのみで勝負をした形になってしまいました
次に、商品の展開方法です。こだわった商品を少数展開して、ブランドイメージを構築してきたバルミューダに対して、多数の商品を展開、ブランドイメージが希薄になってしまったのがamadanaです。バルミューダの代表商品は?と聞かれたら、恐らく「トースター」と回答する方が多いのではないかと思います。しかし、amadanaの代表商品は?と聞かれると、家電に詳しい人でも分かれるか、もしくはなかなか挙げられないと思います。

バルミューダとamadanaの比較は、商品の展開・ブランディングの差がわかりやすい良い例だと思います。このシュレッダーを含むamadanaの商品群は、二社の分かれ道になった商品だったのかもしれません。

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