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ゲゲゲの謎

友達に、入村してきたよって言ったら「シルバニア村に?」って返されてわろた。
あまりにも対極。
哭倉村には全面禁煙から頑張っていただいて。


※ネタバレあるよー。


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『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』が正式なタイトルなんだけど、SNSでもよく見かける略称はゲ謎だし、鬼太郎はほんとにちょこっっっとしか出ない。基本のストーリーが『目玉親父の過去の話』なので、まぁそこはしょうがないところ。なのに物販コーナーは僅かに鬼太郎と猫娘のグッズがあるばかりで、今回のメインキャラクターのグッズはゼロに等しかったと友人に報告を入れたら「グッズは狩り尽くされてるから……」としみじみ答えられた。
聞けば興行収入8億突破、パンフも即完売の人気っぷりらしいので、まぁ無理もない。

11/17の公開日から、私のTwitterのTLはゲゲゲ一色に染められている。
オタクじゃない友人のTLには全然話題が上がってないらしいので、なんだかんだ棲み分けされてるんだなぁなんて思いつつ。でも私のTLは、右も左もゲ謎。溢れる二次創作ファンアート、様々な考察。みんなが話題にしてるなら自分も観てみたいという気持ちになるのは自然の摂理、クチコミはかくも強い。
最初は「とはいえ、子どももいるし映画の時間取るの大変よね」と諦めてたんだけど、先日夫がインフルに罹ったりして私も1週間バタバタ頑張ってたし、ここらでご褒美タイムを取っても良いのでは?という気持ちになった。5日に夫と休みが被っていたので、娘を夫に任せていざ予約。娘には「医者に行くからお留守番してて」と伝えた。リフレッシュ(医者)。

夫に、「そんなに話題なの?鬼太郎の話なの、それとも水木しげるの生涯的な?」と聞かれたので、うっかり「えぇと、目玉の父さんの過去話らしくて……親父さんも長身のイケメンビジュアルでね」と答えて、「あぁー……」と生ぬるい相槌を打たれた。
いや違う待って、間違ってないんだけどちがっ、第一印象を完全に違えた、違う違うそうじゃねぇーーーー!TRICKの紹介を「仲間由紀恵と阿部寛の美男美女コンビが」って伝えるようなもんだわ、そうだけどそうじゃねえ、顔面が良いに越したことはないけど別にあの2人の顔の良さを楽しみに行くんじゃなくてストーリーの面白さがまず第一に来るわけで、ちがーーーーー!!!!!!(って1人でもだもだ騒いでたら「いやひとでさんもまだ観てないんでしょう、落ち着いて」ってなだめられた。だってぇ!!!!!!)

実際イケメンって言っちゃったけど、今回の目玉の親父さんや水木さんはイケメンかどうかと言われるとちょっと評価しづらい。オタクにはウケる顔してるんだけど、一般的に言われそうなキラキラさわやかビジュアルではないし……いやそんな水木さん見たくねぇけど……(ギャグとしてなら見たい)。


そんな水木さんは、顔に傷のあるリーマン。
兵隊あがりで、命を拾ったからにはと野心を燃やす。基本目は死んでるんだけど時々イタズラめいた笑い方をするのが良い。なんとなく、水木さんが好きな人は金カム刺さりそうだなって思った。なんとなく。
その水木さんが、政界を牛耳る龍賀一族の党首が亡くなったことを知り、懇意にしてる社長がその後釜に来るかどうかというところに乗り込んでいくところからストーリーが始まる。
起こる殺人事件、その中にひょいとやってきた目玉の親父さん(本人が名乗らないので、付けられたあだ名が『ゲゲ郎』)、閉じられた世界の中でのエグい慣習や生業が暴かれていく、胸糞因習村の傑作と言える。

ところで今改めて公式HPの『キャラクター』ページを見に行ったんだけど、記載が
・鬼太郎の父
・水木
・龍賀沙代
・長田時弥
の順番で、(あーーーー、こんなにもキーキャラのしての立ち位置にされている……)ってなんかしみじみした。大事な役どころだとは思ってたけど、沙代ちゃんも時弥君も、こんなにも重い役回りにされるとは思ってなかったよね。
ひん。

今作はPG12なんだけど、人が死ぬシーンのグロテスクさよりも『女・子どもが辛い目にあう』の方が心にクるかなという気がする。
沙代ちゃんもかなりキツいし、時弥くんもほんとに報われない。映画を見終えてから夜、布団に入って、なんかじわじわとボディーブローが効いてきた。『龍賀の女として……』と言われたことを思うと、乙米さんや丙江さんや庚子さんも同じ任を求められたんだろうか。1人が『お気に入り』になるならそりゃ解放される側は大喜びかもしれないよなぁとか、結局自分可愛さの人間しかおらんなとか、色んなことを考える。
その中で唯一彼女を『女』として見ずに『子ども』として接した水木は、ほんとは大人としては一番正しい姿であり、沙代ちゃんの救いたる存在になるはずだったんだけど、その価値がわからないのは肝心の沙代ちゃんがまだ子どもだからという話に戻ってくる。つれぇーーーーー。

そういやラストで時ちゃんが召されるシーン、お迎えに来たシルエットが沙代ちゃんだったのは不思議な感じだなと思う。時ちゃんの年齢を考えたら迎えに来るべきは庚子さん(時ちゃんのママ)な気がするし、庚子さんが地獄落ちして来れないんだとすれば沙代ちゃんも多分迎えに来るの難しいのではっていう。庚子さんはMの製法とかにどれくらい関わってたかわからんけど、作中の描写だけなら罪人とは言い難い立ち位置なんだよなぁ……。

飄々としたゲゲ郎さんは、すごく良い。
奥さんにベタ惚れなのも、泣き上戸しながら奥さんを惚気るのも、岩子さんの美しいお顔がひどいものになってることで評価を変えないのも、全部すごく良い。
でも個人的に一番好きなのは、フィジカルがめっちゃ強い点である。もっと妖力任せの戦いするかと思ったら、手すりをへし折ってぶん回す喧嘩殺法でめちゃめちゃ魅せてくる。バトルシーンはもっかい見たい。最高。

そのゲゲ郎の相棒たる水木さんは、そこまで戦闘シーンで活躍するわけではない。あくまでも『ただの人間』にできる精一杯、って感じ。それがすごく良い。それにしても、水木さんは、あの作中で、一番『人』としての芯がちゃんとしてたな……。


そんでね、エンディング。
墓場鬼太郎に、そう繋げてくるんだなーって。いや良かった、すごく良かった。Twitter見てるだけの受動喫煙だと「なんでゲゲ郎も岩子さんも、人間っぽいビジュアルなんだ……?幽霊族が滅亡した!のシーンは全然違うビジュアルだよなぁ」って不思議だったんだけど、ちゃんとそこを納得できる形にしてくれる。
綺麗に収めてくれた感。

いやこれつらつらと語るといつまでも続いてしまうなぁ。水木さんが男性としては多分小柄(とはいえ当時としてはおそらく平均)だったり、スーツがややだぼっとした造りだったり(これも当時よくあるスーツ形状という考察ツイートを読んでから行ったのでよかった)、汽車の中がタバコの煙だらけだったり、細かいところの描写が丁寧で、とても良い作品だったと思う。

あくまでもPG12枠なので、万人に勧めていいかは悩むところだけど。
そのへんが大丈夫そうなら、一度ぜひ。

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