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春の訪れ

 ころっと変わって、本当に突然だが、我が家に新入りさんがやってきた。

 保護犬のトライアルをすることになったのだ。

 昨日まで、まだそこまで行かない可能性の方が高いと思いながら、一応部屋の模様替えをし、ケージを置いてみたりした。あとは本当に何もなかった。

 それがどうだろう。

 気づけば、今、早くも我が家の小さなソファには、昨日までいなかった可愛い子がすやすや眠っている。

 生まれて恐らく3ヶ月ほどという、Mixの女の子。

 お留守番が多くなっては気の毒だと思っていたので、子犬は極力避けるつもりでいたが…。

 どういうわけか、そういうことになった。

 夫は、『縁のものだなぁ』とつぶやいた。
 早速、家族はメロメロ。

 はてさて。

 今日は初日なので、この子も緊張がほぐれないはず。知らない場所、知らない音、知らない匂いに囲まれることはどれだけ不安だろう。いつもは一緒に戯れていた兄弟姉妹犬ともお別れしてしまった。想像するだけで切ない。

 自分の家にいるはずの人間でさえ慣れないのだ。

 ストレスがかかるため、今日はあまり構いすぎないように、と団体からアドバイスをいただいたせいもあってか、普段はあまり熱心に見ることの少ないフィギュアスケートをなんとなくみんなで眺めながら、隣に座る子犬に意識が持っていかれていたりして。

 命の存在感はすごい。

 あの機敏な動き。耳の動き。見つめてくる瞳。

 ああ、なんて責任重大なのだと、私は緊張が解けない。
 
 まだ出会って間もないのに、子どもたちを寝かせてリビングに戻ると、小さな彼女はしっぽを振ってペロペロ舐めながら、まとわりついてくる。
 
 そして私は、いつかこの子が私達よりも早く年老いて、もしかしたら先に天国へ行ってしまうということを早くも想像し、勝手にウルウルしたりしている(どうかしている)。

 これはすごいことだ。

 幸せにしたい。

 みんなで幸せに暮らそう。

 心からそう思った。

 ワンちゃんの世界も近年変わってきていて、もう厳しくしつける時代ではないそうだ。

 個性を受け入れ、褒めて認めて、愛情を表現して…。まるで人と同じではないか。

 本当に勉強になる。

 まもなく7歳になる息子が、誕生日にと願った新しい家族。
 以前から赤ちゃんがほしいと言っていた彼は、『僕に妹ができた』と笑った。
 
 もはや、これは必要な段階としてトライアル期間をいただいているだけで、そんな気持ちはなくなっている(そもそもトライアルで辞退する時というのは、たいていは先住犬等との相性によるものが多いらしい)。

 よかったね。
 一緒に大切にしようね。

 この子のためにも働き続けなくてはならない。こういう方向からの励ましは、思ってもみなかった。

 このご縁に、心からの感謝を。

 私達の新しい挑戦が始まる。

 

 


 

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