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G7デシダル相会合、今後のAI活用~石橋を叩く暇があるなら崩れてでも疾走する力強い日本に

先進7カ国(G7)産業・技術・デジタル相会合が3月14日、イタリア北部トレントで開かれた。人工知能(AI)の偽情報拡散などのリスクを踏まえ、公共インフラでの活用や国際的なルール作りを議論し、閣僚宣言をまとめて15日に閉幕された。日本からは河野太郎デジタル大臣らが出席された。

(20) Xユーザーの河野太郎さん: 「G7、始まりました。議長国イタリアの両隣りを去年の議長国日本と来年のカナダで挟む「トロイカ」です。」 / X (twitter.com)

会合では、2023年5月のG7首脳会議(広島サミット)で発足した国際的なルール作りの枠組み「広島AIプロセス」の推進が再確認され、G7以外にも広げる方向性や、ルールに沿った運用かどうかを監視する仕組みについても協議されたそうである。
「広島AIプロセス」とは、G7の関係閣僚が中心となり、AIの活用や開発、規制に関する国際的なルール作りを推進するために、2023年5月のG7広島サミットで立ち上がった議論の枠組みのこと。広島AIプロセス関連文書に基づき、各国・地域が詳細な法規制やガイドラインを整備していくこととなり、日本ではAIガイドラインの整備、アメリカではAIの安全性に関する大統領令に基づく新しい基準の検討、といった国としての取り組みだけでなく、国際的な視点でもOECD(経済協力開発機構)はAI原則を見直し、新たな課題や技術の進展に対応するための枠組みを整備するように動き出している。

会合において、AIを巡っては、「ChatGPT」など生成AIの急速な発展により、偽情報拡散や著作権侵害などの懸念が強まっていることが確認された。欧州連合(EU)欧州議会が3月13日に世界初の包括的な規制法案を可決したところである。日本も事業者向けのガイドライン(指針)公表に動いており、対応に迫られているのが現状である。

閉幕したあと河野太郎デジタル大臣は、
「日本が議長国を務めた去年を引き継ぎ、DFFTをさらに進捗させることが確認されたほか、国際的なデータガバナンスの強化がさらに必要だという認識を共有し、発信することができた」
と述べられ、広島サミットからの流れを引き継がれたことが強く感じられる。河野太郎デジタル大臣は、
「AIは民間企業だけでなく、地方自治体の行政にも非常に効果があるものであり、デジタル庁の中でしっかり活用するとともに、さらに一歩踏み込んでいかに行政の中でAIを生かすかということにも力を入れていく」
と述べられていたが、この会合の中で、日本におけるAI活用のヒントを得られたのだろうか。

日本では、今後のAI規制を見越して、AI開発企業に対して、3つの対策の検討を推奨している。
1.市場投入前の事前審査対応
2.リスク管理体制の構築
3.電子透かしなどの発信者特定情報の付与
である。

1.については、アメリカ・中国・EUではAI開発企業に対して、市場投入前にAIシステムを政府機関に届ける制度を整備しつつあり、日本も早急な制度整備が待たれている。
2.については、脆弱性対策や悪用対策に継続的に対応するための運用体制を構築し、利用者からの通報窓口の設置などを検討する必要があり、市場投入後のリスク管理が不可欠になってきている。
3.については、コンテンツがAIシステムで作成されたかどうかを利用者が判断できるようにするため、電子透かしなどの発信者特定情報の付与が検討されており、すでにオリジネータープロファイル技術を用いた実証実験が進められている。
いずれの場合も民間企業へ対策検討を促すものであるが、アメリカなどすでに手本となるものがある現状を考えると、日本はこの点に関して後進国だと言わざるを得ないのである。

民間企業は動きが早く、一歩一歩前進していることを考えると期待はできるが、国は期待できるほどの進行ができているだろうか。

今回の会合や広島サミットでも、日本が議論を進めることに貢献していることは容易に予想できる。「広島AIプロセス」へのG7の合意がそれを物語っている。しかし、実行力となると、諸外国に遅れをとることが多いのが残念な点である。

AIの課題に気づき、警鐘を鳴らす人は日本国内にも多く、個人レベルで横の繋がりを利用して対応しようとしているのが、「壁」に阻まれているのが今の日本である。「壁」とは法律や制度である。素晴らしい技術があり、俯瞰的に考察し、対応策を模索することはできても、「壁」のお陰で二の足を踏むことが多いのではないだろうか。

日本の政治家は、石橋を叩いて渡らない、ように思える。失敗することで自身の失脚を恐れているのかもしれない。私は、「広島AIプロセス」も「DFFT」も河野太郎デジタル大臣が諸外国に伝え、世界的には市民権を得てきていると感じている。
語弊があるかもしれないが、「日本発信の内容を何故、日本国内で理解されないのか」という思いでいっぱいである。

世界中の会議などに出向かれる河野太郎デジタル大臣は、日本の遅れを肌で感じているに違いない。AI技術は当初の予測を上回る速度で進歩している。AI技術に「明るい」人は専門家だけではない。一般の人にも普及し、誰もが利用できる下地が出来つつある。

誰もが利用できるということは専門家でなくても悪用することが可能な社会がきていることになる。国民を守るのが国の役目だと思う反面、AI技術に「明るくない」人が国側に多くないだろうか。
なんでも専門家に丸投げをして、結果ばかりを要求し、協力をしようともしない。

AI技術の問題は国家レベルの問題である。資源のない日本だからこそ技術面の優位性を獲得しなければ国としては発展はないはずである。河野太郎デジタル大臣が前面に出てアピールする姿を悪く言う人もいるが、極端なことをしなくてはならないほど、諸外国に遅れをとっているいう危機感がそうさせているのではないだろうか。

近いうちに、AIの問題は国民全員に関わるほど広まっていくと私は考えている。「覆水盆に返らず」となっては遅いのである。石橋を叩く暇があるのなら、崩れてでも疾走する力強い日本になることを切に願う。

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