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物価偽装・いのちのとりで裁判報告書(白井康彦さん著)概要

元中日新聞記者・ジャーナリスト白井康彦さんによる100頁以上におよぶ『物価偽装・いのちのとりで裁判問題報告書』をすべて読みました。誰にでもわかりやすいようにとの配慮でしょう、仮想物語など随所に盛り込まれています。よくここまで書けるなと理系出身の私からすれば、ひたすら感嘆。

白井さんの長編報告書の論点、要点を私なりにまとめてみました。

物価偽装と言われても「何をどのように偽装したのか」「なぜ偽装がバレなかったのか」と素人ながら疑問が湧き出る内容に対して、ここまで徹底的に説明された文章は他にないでしょう。

仮想事例を使った説明も、「バレなければいい」という担当者側の悪意は本当にあったのだと思えるほど、状況が想像できるリアリティ感があり、「こんなことが本当に日本であったのか」と読み進むごとに怖くなっていきます。

要因の倍率を乗する計算方法は、1つ1つの要因では倍率のおかしさは気づいても、最終結果のおかしさは気づきにくいので、こんな計算方法があるのかと驚きました。
1.2×1.2=1.44ですが、1.3×1.1=1.43と乗する数値ははっきりと異なっても計算結果はわずかな差になるような計算も可能ということですから、最終結果を事前に決めて、そこに合わせて違和感のない数値を乗するように調整すれば、自由自在に最終結果を操れるのです。

国家公務員になれる優秀な頭脳を間違った方向に使った、最たる例ともいえます。

CPI算出に様々な物価指数の利用も、どの生体にも一様にすべての物価指数を算定基準にするのもおかしな話です。

富裕層と貧困層では、エンゲル係数も異なれば、生活必需品でないものへの支出割合も異なって当たり前。
対象が生活保護受給者となると、ほかの人との支出割合が異なるものは増えるのではないかと容易に想像できます。

「貧乏人の俺たちはテレビやパソコンは思うように買えないぞ。」
などの文章を読むたびに「確かに!」と共感することばかり。

データの正当性を検証することは難しくても、1つ1つの物価指数を算出する前に各所得層で元データを正規化し、同じ基準で判断できるようにするとか、無駄に差異を大きくしない方法はあるはずです。それをせず、同じ母集団で生データを利用して算出していたとすれば、抽出データをいじられると簡単に結果を変更できる怖さがあることに、誰も気づかないなどというわけがないのです。

パーシェ指数とラスパイレス指数の2つを使い分けて、理想の結果を作り上げたのも物価偽装の肝になると思われますが、そもそも他のものを合わせて複数の指数を比較して物価指数を算出することを規定していれば、この偽装も防げたのかもしれません。

フィッシャー指数を含めた3つを比較して物価上昇を見る方法もあり、実際に利用している企業もあります。高校のときに学んだデータ分析にもありますが、分散だけだと一側面のデータの散らばりしかみれなませんが、共分散と合わせて相関係数を求めることで、データの傾向を見ることができます。

多角的な見方によりデータの本質を見るのが重要だということは誰もが知っていること。そこを規定せず、一部の担当者だけで秘密裏に行うから物価偽装ができてしまうのです。

統計処理は非常に複雑で、簡単ではない計算ばかり。CPI算出などに関わる担当者は全員統計学に長けている人物なのでしょうか。

それは「いのちのとりで裁判」を担当する裁判官にも言えるのではないでしょうか。

主張の正当性を判断するのに法律に照らし合わせるだけでいいのか法律に照らし合わせる前に、この事案がなぜ起こり、どこがおかしいのかと正確に理解する必要があります。その理解があってこそ、裁判官の良識が働き、法律での裁きに進めるはずなのです。

オールマイティな人間は存在しません。どんなに優秀な人物でも得手不得手があります。
専門性の高い事案に対して、しっかりとした専門家会議をもって、判決の一助にしているとは到底思えません。国民を守るのが法律の役割であり、国家公務員の責務のはず。

それに反するこの物価偽装は人災であり、国民を守るという本来の目的を忘れた暴挙といえるでしょう。
白井さんの文章を読めば読むほど、行政の身勝手な側面が浮き彫りになり、気分が滅入る。これほどの大きな事案に立ち向かい、戦う人の心労は想像を超えます。その心労に見合った結果がこれからも続くことを祈ると同時に、行政書士法人ひとみ綜合法務事務所としてもできることをしていきたいと思います。

ジャーナリスト白井康彦さんによる100頁以上におよぶ『物価偽装・いのちのとりで裁判問題報告書』は、行政書士法人ひとみ綜合法務事務所HPこちらのページの最後にPDFファイルでどなたでも全文ご覧いただけるようにしました。

『今後、残りの地裁判決や高裁判決でも我々が勝ち続けられない場合、最終的な決着はどうなるのでしょうか。決着が着く前に寿命が尽きてしまう高齢の原告も増加の一途になるでしょう。
我々は、こうした現実の理不尽さを骨身に染みて味わってきました。だから、私は「物価偽装・2分の1処理の酷さは広く周知され、歴史に刻まなければならない」と考えます。』

日本国民すべての生存権を守るため、日々戦っている白井康彦さんの言葉を全世界の人に聞いてほしい、貴重な白井さんの報告書の内容を知ってほしいと思い、弊所による英訳も前半一部ですがつけています。

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