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新潟式サイドアタック:2023 J1 第34節 アルビレックス新潟×セレッソ大阪

どんなシーズンになるのかドキドキしていたJ1昇格の年、終わってみれば圧倒的に楽しかった去年のJ2優勝をさらにスケールアップさせた楽しさだった。最高すぎるだろ俺たちの新潟。

そんな2023シーズンの最終節、今まで中央突破を信条としてきた新潟が最後の最後で繰り出してきたサイド攻撃について書いておきたい。

キーマン松田という戦い方

この試合のキーマンとしては松田になるだろう。松田が深さを作って守備を押し下げてから仕留めよう!みたいなサッカーが展開されていた。松田は来シーズンもレンタル延長となったので来シーズンはジョーカーではなくジャッククィーンキングエースという存在感を示してほしい。

今シーズンの新潟、保有選手による構築の都合などもあるだろうが中央突破を信条として戦ってきたところがある。バルサもティキタカスタイルだと当然のように中央突破になるのでスタイルを突き詰めた結果そうなったということもあるだろう。

世界的に2022シーズン以降はSNSでウィング論が盛り上がるくらいサイドアタックのバリエーションと重要性が語られていたし、実際に多くのクラブがピッチ上でサイド攻撃を繰り返してきた。メタゲームの円環としてのウィング論である。

新潟はそんなトレンドは気にせず自分たちにできることを淡々とやってきた訳だが、新潟のサッカーがある程度成熟したので次のレベルとしてのサイド攻撃でもやってみようか、みたいな流れなのかもしれない。勝てないから変化をとかじゃなくて次のレベルに行けるところまできたのでやってみようかウィング論という流れである。最新戦術に安易に飛びつかない新潟は本当に信用できる。意識高い系サッカーをやる新潟とかマジで見たくない。

とりあえずは松田のボールタッチを確認してみよう。

松田のボールタッチ。なんか凄いことになってる。

いい感じにモダンなウィングとして躍動している俺たちの松田。

ここまでタッチラインを踏んでる松田にボールを渡せるのは新潟のビルドアップだから成せることで、その多くはデンから供給される縦パスだったりヤン星や逆サイドから蹴り込まれるサイドチェンジ気味のボールだったりする。セレッソがコンパクトな442ということもあってこの試合では逆サイドの松田に振るボールの効果が抜群だった。

プロットが激しすぎて全部潰れてしまっているが、松田はタッチラインに背を向けてボールを受けることを基本とする。

これは松田というかウィングの基本的な受け方になるのだが、タッチラインに背を向けて受ければ体の向を変えずに180度の範囲からドリブルやパスなどでボールを動かすことができるというメリットがある。

モダンサッカーのウィングがドリブル突破する場面ではこの受け方からスタートすることが多いのだが、この受け方なら縦突破と中央への切り込みという2択を突きつけることができる。とにかくメリットありありなタッチラインを背にして受けるという基本動作なのである。

ちなみにこの受け方だとトップスピードに乗りにくいというデメリットがあるのだが、新潟の場合はダメなら戻すが基本なので松田も無理なら迷わず藤原に戻してやり直しをする。これはマリノスの屈強ブラジリアンウィングも同じ動きをしていたりする。まぁあの人たちは戻さず中央にゴリゴリ侵入するのを基本にしているっぽいけど。

前節マリノス戦におけるマリノスウィング全員のボールタッチ。こうやって見ると今節松田のボールタッチが色々おかしい。

下のプロットは松田のパス分布になるが、前方へのパスというのは1本だけで他は全てバックパスか平行パス、あるいはクロスとなっている。クロスの精度はもうちょっとなんとかしたい松田。

タッチラインに背を向けた状態でボールを受ける。ダメなら戻してやり直す。

とはいえダメなら戻すばかりでは相手に脅威を与えることができないのでウィングらしくドリブル突破も織り交ぜなくてはいけない。

ということで松田のドリブルをプロットしてみた。

行けると判断したら長距離を一気に運ぶ松田のドリブル。

特徴としては「行けると判断したら思い切り良く長距離を爆走」というドリブルになる。ノってるときの松田は誰にも止められない雰囲気があるし来シーズンはこのノリを毎試合ムラなく発揮できるようにしてもらいたい。

ビルドアップでボールと守備を動かしてタッチライン側のウィンガーにボールを預けて個人戦術としての択を掛ける。ダメなら戻して行けるならドリブルで長距離を運び中央レーンにボールを通せそうなら平行パスを供給する。これが新潟式サイドアタックとなるだろう。中央突破を活かすためのサイドアタックという見方もできる。

そんな新潟式サイドアタックの理想系みたいなプレイが前半12:20に飛び出たので記録しておきたい。これは本当に素晴らしかった。

セレッソ右サイドから放たれる低弾道クロスを泰基が弾いて高木谷口らのマシンガンプレスでポジティブ・トランジションを発生させてからガラ空き右サイドを走る松田目掛けてヤンが左足インフロントでマイナス気味にグラウンダーを蹴ると松田に吸い寄せられるようにピタリと収まる。そこから松田が誰もいない右サイドをペナルティエリア内まで40mくらいをドリブルで持ち運ぶ。最後は爆走オーバーラップする藤原に預けてリターンのグラウンダークロスに合わせられればというシーンだったが松田は約束通りに谷口を信じて華麗にスルー。結果的にゴールとはならなかったが決まっていれば新潟の素晴らしさを全クラブに印象付けるスーパープレイになっていたはず。2022シーズンの最終節で生まれた新潟の集大成みたいな三戸ちゃんの2点目みたいなゴールの2023バージョンが見れるかと思ったのだが願い叶わず。

試合終盤に入る後半64:00などのシーンでは星などボランチが蹴り込むボールに元気に走り出して決定機を創出したりもする。

縦ポン超ダッシュで一気にゲットゴールというのは松田よりも太田の役割になるはずなので来シーズンは相手に応じて松田と太田の使い分けというのが可能になるはず。

構える相手なら松田、ハイラインハイプレス相手なら太田みたいな戦術を後出しで使えることになる。ダニーロの更新がまだ確認できてないけど使い方としては松田タイプになるだろう。メチャクチャ楽しそうじゃないか。

今シーズンは本当に楽しかったJ1昇格一年目だったが、来シーズンも更なる進化に期待するしかない俺たちの新潟なので本当にサッカーが楽しすぎる。

アイシテルニイガタ!

試合雑感

誰が出ても最後まで自分達のスタイルを貫き通してもらおうかというスタメン。それ以外のコメントなど何もない。

試合が始まってみれば新潟ビルドアップ vs セレッソ442ブロックの構図。開幕戦から両者全くブレない。新潟は三戸にグリッド間の受けタスクを担わせることで中央を絞らせておいてからの大外松田という形がメチャクチャ効いている。松田が右サイドで押し込んだらヤンと星を右サイドのサポートに入れてトライアングルを形成してロンド地獄の出来上がりだ。

新潟は攻守共にセカンドボールを確実に拾うし猟犬プレスからのインターセプトも上手く嵌っている良い状態。

対するセレッソの攻撃は新潟のサイドバック裏を狙っているだろうか。内→外のダイアゴナルランが基本的な狙いだろう。最新戦術を追いかけずに古くからある連携を基本に忠実に遂行するセレッソが渋い。サポからは不評らしいが勝てないとそうなるのはどこも一緒だ。新しいものが強い訳じゃないし古くても良いものは良い。そのことをセレッソサポは誇りに持ってほしい。

この素晴らしい新潟のサッカーをもっと楽しんでいたいと思えど試合終了のホイッスルが鳴ってしまった。素晴らしいシーズンの締めくくりだった。最後まで己のスタイルを貫き通した俺たちの新潟を誇るしかない。誇らずにはいられない。長倉のおめでとうゴールも嬉しかった。長倉のトラップが出場時間を通してマジで色々おかしい。来年ブレイクしてしまう可能性は非常に高い。

新潟は終盤10試合負け無しだっただろうか。勝ってはいないけど全然負けていなかったのでは?と思ったら10位でフィニッシュ。やれることを全部やり切って辿り着けるところまで辿りついたシーズンだった。

さて、ここ数試合で気になったことがあるのだが、新潟はセカンドボールの球際でほとんど負けることが無かったように思う。結果としてずっとボールを保持していることに繋がっている。フィジカルトレーニングを何かやっていた結果だったりするんだろうか。

加えて、今日の試合はとにかくサイド縦突破からのクロスという決定機創出が目立っていた。セレッソの守備がコンパクトだったので相性を考えてというだけなのかもしれないが。とはいえ、肝心のクロスは残念なことにタイミングや質がイマイチだったので迫力はそんなになかったのだが、もしかしたら新潟の次のバージョンアップはサイド突破からのクロスというものになるのかもしれない。松田もレンタル延長になったし来シーズンのキーマンは松田太田ダニーロの右サイドになったりするのかもしれない。

とにかく素晴らしいシーズンだった。来シーズンも楽しまずにはいられない。

アイシテルニイガタ!


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。