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幅取りジョーカー松田詠太郎:2023 J1 第27節 ガンバ大阪×アルビレックス新潟

とんでもない中央突破によるゴール!こりゃすげぇぇぇ!DAZNの前で変な声が出た!

このガンバ戦、過去数試合において途中出場から輝きまくっていた松田がまたしても途中出場から眩しく輝いてくれた。ブリリアント松田。

ということで、モダンウィンガーへと進化した松田について記録しておこうと思う。いろいろ迷走して辿り着いたスタイルは至極シンプルなものだったという成長過程も良い。三笘は偉大。

モダンサッカーにおけるウィング

2023年のワールドフットボールにおいてウィングは欠かせないポジションになっているしウィングの質がチームの質に直結しているチームも少なくない。

大外タッチラインでボールを持つ、いわゆる幅取りをすれば中央あるいは逆サイドにスペースが生まれるのは必然なのだがモダンサッカーのウィングは圧倒的なスペックで単騎突破してゴールまで奪ってしまう。

このウィングの例えは一例でウィングと言ってもいろんなタイプがいる… のだが、モダンサッカーでウィングと言えばやはりブライトンの三笘、マドリーのヴィニシウスに代表される圧倒的な突破力を持つ逆足ウィング(右利きなら左ウィング、左利きなら右ウィング)になってくる。本間至恩という新潟の至宝。

逆足ウィング。ひと昔前ならロッベンというレジェンドが君臨しており右サイドからのカットインは来ると判っていても止められないという常軌を逸するものだった。

カットインドリブルの伝説であるロッベン、左足しか使えないが極まりすぎてラボーナでクロスを上げる左足の魔術師。

どこまで左足しか使えねぇんだよ!と言いたくなるがモダンサッカーのウィングは強烈なカットインはできて当たり前、その上で縦に抜けて利き足とは逆の足で高い精度のクロスを上げるというスキルも要求されることになる。それを世界レベルで実演しているのが三笘である。本間至恩という新潟の至宝。

右利き右サイドの松田

ロッベンは左利きの右サイドで三笘は右利きの左サイドという配置となり、二人ともいわゆる逆足ウィングである。カットインがメインウェポンでカットインを意識させることで縦突破を活かすというのが基本になる。

この逆足ウィングの前提からすると松田は右利きの右ウィングということでちょっと面白いしユニークな存在であることに気付いたりもする。

ここ最近で覚醒するまでは縦!縦!縦!縦突破が俺の生きる道!みたいな大本祐槻のDNAをしっかり受け継いだ感の強かった松田。クロスマシーンとして生きる道を突き進むのかと思われていた松田詠太郎22歳。愛称はポエム。

そんな松田が利き足とは逆の左足によるカットインを多用するようになってからのブリリアント大爆発。三笘のようにカットインを意識させてからの縦突破ではなく、縦突破を意識させてのカットインというスタイルである。

こうやって書くと至極単純な話でしかないのだが、少なからず意識しているであろう三笘をそのままトレースするのではなく自分のストロングに合わせてスタイルを取り入れたというところに松田を見続けてきた新潟サポーターの喜び大爆発である。クロスマシーンの道を外れて本格ウィンガーへ変貌を遂げた松田が素晴らしい。

実際のプレイをいくつか見てみよう。まずは湘南戦。

左のアウトサイドでボールを持ってそのまま左のインサイドキックで斜め楔を入れる。これはゴールに直結したスーパープレイとなったが、この成功体験が本当に大きかったのではないだろうか。その後もこれと同じ形を幾度となく繰り出し、もはや松田の代名詞と呼ばれるプレイになる日も近いだろう。これをキレキレで連発する松田無双。

続いては浦和戦。

タッチラインを踏みながら幅を取って中央のスペースを作ってから一連の流れ。トラップ一発で鮮やかに守備をかわして縦突破を意識させてからの左足カットイン。

途中でタックルを受けてボールを失うかと思ったが耐えてというかむしろ相手を弾き飛ばして突き進む松田。左足で蹴り込んで最後は小見の嬉しいJ1発ゴールに。ブリリアント松田の魅力が凝縮された凄プレイ。松田無双すぎる。

最後に新潟サポの記憶に刻まれた伝説のホーム福岡戦から。

縦を意識させてカットインを仕掛けて即座に縦突破に切り替え。

改めて見ると本当に凄いプレーだな。この頃から覚醒していた松田を思うと実戦経験というのは本当に大事にしたいものである。

これを90分常時できるようになるとマジ最高すぎるのだが今は途中出場のジョーカーとして疲れた相手をチンチンにする役割を全うしてくれればそれで十分。

幅取りジョーカー松田詠太郎、さらなる飛躍を期待せずにはいられない。

試合雑感

鹿島戦と浦和戦を経てスタイルを進化させた訳だが今日もレイオフでガンガン前進してゴールまで押し切ってもらいたい。終盤に出てくるであろう松田にも注目。

ガンバとの前回対戦はとんでもない塩試合だったので今日は良い試合をして勝ち点3もキッチリ持ち帰ってもらおうか。

ガンバはポヤトス監督の戦術が浸透して結果もついてきているので難しい相手になるだろうが下位の6ポイントマッチなので今日の結果がシーズンの結果に与える影響は非常に大きい。新潟とガンバ、ポジショナルの方法にどんな違いがあるのかが見所になる。

前半、緊張感のある試合展開になった。

ガンバの守備はそんなに固くないのでスイスイ運べるし面白いようにハーフスペースの小見に縦パスが通る。なのだが、ガンバの恐ろしさは攻撃にあり。

ビルドアップ自体に大きな特徴は無いものの、とにかく前の5人にいかにして高い位置でボールを預けるかということしか考えてなさそう。

前線5人の誰かにボールが入りさえすれば個人の質で殴ってゴールをこじ開けるという暴力的なサッカー。ガンバは攻撃的という昔からのイメージ通りのサッカーをしている。コーナーキックも可能な限り蹴らせないようにしなくてはならない。これがガンバのストロングになる。加えてアタッキングサードにおけるセカンドボールへの執着も非常に強い。

新潟としては縦パスをある程度余裕を持って通せているのでゴールが決まるとしたらゴール前のコンビネーションからだろうか。34分くらいのレイオフからの小見のシュートは僅かに外れたが、あの形はシン・ニイガタとして理想の形となる。

後半、ガンバは「もっと前5人にボール持たせろ!」という指示が飛ぶだろうし、新潟は「もっと前に運べ!」という指示になるだろう。戦術というよりはお互いの信念のぶつかり合いになるんじゃないだろうか。

そして試合終了。素晴らしい試合だった。正直勝ち点とかどうでも良くなるくらい素晴らしい試合だった。お互いスタイル、お互いの信念、お互いの全てをぶつけての1-1引き分け。見たものが全てだろう。

なんだが、SNSではイマイチ試合の評価が高くない。というよりはみんな新潟の質に対して不満げ。

質という意味では新潟やガンバ以上のチームはJ1でいくつかあるだろうが、今日の試合はお互いのレベルが拮抗しているが故に熱量の高い試合になったというである。

奪われ方自体は湘南戦の時と同じくチャレンジングな縦パスを通そうとして引っ掛かってカウンター被弾というやつになる。加えて終盤ではみんな足が止まって走れず守れずなんだがデンが全部なんとかしてくれた。デン神!

サッカーはミスのゲームとは良く言ったものだが、ミスの頻度や内容がお互い似たレベルだったので特に質が高かった訳ではない。熱量が高くてスタイルをぶつけ合う良い試合だったということになる。ブライトンの試合とか観たらどんなチームでも質に難ありと言いたくなるだろう。俺たちは日本のJリーグのアルビレックス新潟なのだ。今の新潟ができる範囲で全部を出したという意味でプラス評価となるだろう。

正直、孝司が欠けたら新潟のサッカーは成立しない。他のポジションはなんだかんだでバックアップ要員が控えているが孝司のタスクだけは現在の新潟ではどうにも出来ない。孝司が最終盤においてもガッチリ収めて溜めてくれたからこそ前に上がることが出来ていた。

孝司のバックアップ、谷口はどこかへ消えてしまったし長倉のアスリート能力が高いとはいえ、やはりそれはランニングの話となる。

孝司のタスクという意味ではガンバのジェバリが本当に素晴らしかった。基本落ちて受けるのだが、受けたら失わずにそのままゴール前までモリッと運べるというのは本当にズルい。ニイガタサイコー!とか言って入団してくれないだろうか。

とりあえず今シーズンまずは残留で、来シーズンの補強ポイントは孝司のタスクではないだろうか。あのタスクでスペシャルなプレイヤーがいればチームとしての質が一段上がるはず。

とにかく、今の新潟ならこのガンバ戦くらいの質が普通だと思うし、これから積み上げて更に極められるはずという期待を込めての賛辞となる。去年の方が洗練されていたのはやはりカテゴリーのレベルによるもので、得失点という数字からもそれは間違いない。伸びしろだらけの新潟なのでこのまま突き進んでほしい。なんというか子供の成長を見ている気分。

2023年9月時点におけるサッカー通と思われるキーワードランキング第一位」の幅取り。幅取りする我が軍こそ最先端でイケてるサッカーしてる感を表現することができる。

幅取りは間違いなくモダンサッカーにおける現在のトレンドなのだが新潟がそれをやらなくてはいけない縛りは何もない。メタゲームに勝てば良いのであって自分達がメタをやる必要は全く無い。現有戦力に最適化した戦術を用いれば良いだけだし、幅取り vs 幅取りの試合になったら戦力が上の方が勝つし新潟はそれだけの戦力を有していない。

幅取りしないと勝てない訳ではないし、新潟の今のストロングというか貫きたいのは中央突破だろうしこのガンバ戦では痺れまくりの正面突破でゴールを決めた。

幅取り役として機能しそうなダニーロだが、出場機会に恵まれないのは純粋に松田の方が序列が高く結果も残しているからだろう。加えて、新潟にとって幅取りはメインウェポンではなく切り札の扱い。メインウェポンはあくまで中央縦突破なので松田先発の時にはブースト役としてのダニーロがベンチに入るんじゃないかと思っている。

で、これまたSNSで話題になりがちな幅取り役じゃない小見の常時起用だが、そんなの松橋監督にしか解らないだろう。部下として見た時に能力よりも伸びしろや感情が優先することは少なくないだろうし世代別代表としての期待もあるはず。

という感じで、幅取りは優先度が低いというだけではないかと思っている。松田ジョーカー説。

実際に前節は浦和の屈強な442ブロックをレイオフで攻略して見事にブロックを崩して中央スペースなりハーフスペースを使っていた。この崩しの時に大外で張っているのはゴメスだったりする。ウィンガーじゃない。

ここ数試合で多用しているレイオフを外レーンだけではなく中央レーンでも積極的に繰り出してゴール前まで運んでゴール前を崩すというのが現在の新潟の基本戦術ではないだろうか。

そんな中央突破で試合を運んでいる中でいきなり幅取り松田が出てくるから相手は対応出来ずに松田無双になるというのが松田が目立つシナリオである。中央突破があるからこその幅取り。右と左に両方幅取り役を置いて90分揺さぶりまくるというのもアリだとは思うが長倉は大外よりもハーフスペースや中央で活きるし太田は壊れちゃったし。

中央突破で試合を作って幅取りジョーカー松田で仕留めるというのがしばらく続くんじゃないかなとか思うわけです。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。