見出し画像

サリーダ・ラボルピアーナ(サッカー用語雑感):2024 J1 第5節 アルビレックス新潟×柏レイソル

絶望的な前半と輝きを取り戻した後半。これは面白い試合だった。サッカー観てるなって感じがした。

この輝きを取り戻した後半の新潟だが、秋山の立ち位置、いわゆるサリーダの仕方を変えることで状況を変えた試合でもあった。

前半は秋山が最終ライン中央に落ちて島田が高い位置にいるという配置になるのだが、秋山と島田が中央縦に並ぶ形になるので柏の442守備に引っ掛かりまくりでうまくいかず新潟のストロングが何も出せなかったという展開になる。サイドチェンジで松田にフリーでボールが入ってもジエゴとサヴィオに噛みつかれて以上みたいな。サクッと先制されてるし。

いやこれどうすんだよと思ったハーフタイム明け、前半は縛りを掛けて呪力を溜めていたんじゃないかとさえ思えるほどに中央へ落ちていた秋山が左サイドに落ちるようになる。加えて高木が元気いっぱいにボランチの位置まで落ちてくる。この結果として自陣左サイド深い位置に立つ秋山基準の斜め関係トライアングル成立である。そこから先はいつもの洗練されたビルドアップで相手守備を翻弄する新潟という展開に持ち込むことになる。

こんな感じで人を代えずにやり方を変える、サリーダのやり方を変えるだけで状況を一変させた新潟というのが非常に面白い試合だった。特に後半はお互いのストロングをぶつけ合うナイスゲームだったし、先制されても大丈夫!ということを感覚ではなく理屈として目の前に提示してくれる俺たちの新潟が誇らしい。

試合振り返りはこんな感じになるのだが、この試合はサリーダが印象的だったということで一時期のポジショナルプレー解説前夜みたいな時期からしたらすっかり語られなくなったサリーダ・ラボルピアーナについて書いてみたい。日頃から頭の中でグルグル回っている話を書き出しただけの雑感なので有益なことは何も書いていない旨、予めご了承願いたい。サリーダ・ラボルピアーナに代表されるサッカー用語に関する雑感を書き殴っただけの内容だ。

サリーダ・ラボルピアーナ。言語としてはスペイン語で日本語に直訳はできない。この言葉が多様されるようになったのは戦術神ペップバルサが誕生した頃だと思う。語源は単純にラボルペ監督が良く使うやり方だったから。

その昔に日本ではボランチ落としとかアンカー落としとか呼んでいたような記憶がある。やってることは昔から同じで、昔も今も新戦術という訳ではない。当時にペップが欧州で派手に火力出すもんだから新戦術みたいな扱いを受けた。サッカー戦術はメタゲームの円環の中にいて誰もそこから逃げることはできず、その円環のリズムにインターネット解説班がシンクロしてしまったというだけの歴史だ。そもそもサリーダはスペイン語で「出口」の意味しかない。

なお、似たような雰囲気の言葉に「サリーダ・デ・バロン」がある。これは直訳するとボールの出口ということで非常にわかりやすい。ということで、自分の中におけるサリーダは和製スペイン語の位置付け。ノートパソコンとかショートケーキとかペットボトルみたいな感じ。

「サリーダ」とか言うとサッカー知ってる風に振る舞えるのは間違いないと思うのだがサッカー戦術の素人として5年以上何かを書き続けている立場からすると、「サリーダという言葉を使って通じるなら使う、変な目で見られそうなら使わない」という使い分けをしている。俺が所属している草サッカーチームでは俺自身のフットボーラーとしてのスペックがポンコツすぎるのでサリーダとか声に出すとただの勘違いくんにしかならない。なので絶対声に出すことはしない。コンドゥクシオンも同じだ。声に出せないサッカー用語。

DAZNのJリーグ解説においてサリーダとかは意識的に使わない人が多い印象だし代表戦などの地上波ににおける戸田(元)解説員、内田解説員、林解説員らもサリーダという言葉を使わずに現象を説明しようとして冗長な説明になったりする。欧州サッカーとJリーグで使う言葉を変えていたりもする。一方でハーフスペースは最近DAZN解説で当たり前に聞こえてくるようになった印象があるのだが、それが良いことなのかどうかはわからない。ハーフスペースは英製独語みたいな感じなんだろうか。halbraumが英訳された説を支持したい。

モニター前に座っている観戦者と違ってピッチの上の選手や監督ベンチからしたら造語でもなんでもいいので全員が共通認識できる定義されたシンプルな言葉があるというのは結構重要だったりする。ここら辺は大木監督がマニアっぽい。大木戦術からしたらそうなるよなという感想しかないのだが。

試合中に「ボランチ落ちろ!」と叫ぶのと「サリーダ!」と叫ぶの、どちらが伝わりやすいのかは正直わからない。日本に来たスペイン人が初見で「サリーダ!」と叫ばれても意図が伝わらないのだけは確かだと思うのだが、サリーダがチームの共通言語として成立しているのなら何の問題もない。外切りなんてのはプレーする上でメチャクチャ有効なショートカット言語だと思う。右と左で表現しようとすると自分から見て右なのか左なのか、相手から見て右なのか左なのか瞬間的に判断できないこともあるだろう。

他にもポジションを定義する6番8番10番とか。俺は正直良くわかってない。ハルプフェアタイディガーとか舌噛むわ!ドイツ人どんな舌してんだよ!とか、チャビターンでみんなイメージできるじゃん!チャビが現役だった時はシャビターンだったじゃん!みたいなやつとか。エムバペは何回転生してんだよ!みたいなやつとか。

何が言いたいかというとペップが全部悪いというだけの話だ。キリッと専門用語使ってサッカー戦術語れるとカッコいいもん。モテそうだもん。

「相手に意図が簡単に通じる共通言語なら使えば良いですよね、でも用法用量は適切に」ということがサリーダという響きを耳にするたび頭に浮かぶのです。

あと、小島は代表に呼ばれるべきだと思うのです。呼べよ!

試合雑感

まんま2023シーズンのスタメン。遠藤は出場するんだろうか。とりあえず宮本と島田の違いを見どころに設定する。サチローはベンチスタートなのだが試合終了後にはサポーターに暖かく迎え入れてもらえることだろう。

前半、あまりというかかなり良くない俺たちの新潟。スタメン選出をミスった感がある。

秋山島田のコンビ、秋山が最終ラインに落ちるときはサイドに落ちていたのだが今日は真ん中に落ちる。それが原因なのか秋山島田が斜め関係にならず柏の2列目を突破できず柏の守備の網に掛かりまくり。

ビルドアップが残念なことになっているので攻撃で可能性を感じるというか何か起きるとしたらそのくらいしか無いという意味の松田へのサイドチェンジなのだがジエゴとサヴィオが凄すぎて松田じゃ無理!という絶望感がある。この展開になるんだったらダニーロの躍動を見たかった。長倉が右サイドできるんなら変態トラップ&ムーヴでジエゴサヴィオを攻略できるかもしれないのだが… まぁないだろう。

柏のストロング、シンプルに縦に速くて強くてコーナーキックをデザインしてくる。ハンマーぶん回されてる感じ。サヴィオのキックが素晴らしい。

ガンバ戦ほどではないのだが正直勝ち筋が見えない前半。素人考えだと谷口を下げる決断をして長倉にボールを収めてもらうくらいしか思いつかない。島田をハーフタイムで下げて宮本もあるんだろうか。などなど松橋監督がどんな手を打ってくるかに注目した後半なのだが素晴らしく楽しい後半となった。結果はどうあれ毎試合楽しい試合が観れて幸せな俺たちの新潟。

新潟はハーフタイムで人を変えずにやり方を変えることで状況を一変させる。素人の考えは所詮素人考えだということを痛感する。

後半は秋山が真ん中ではなく左側に落ちる。加えて高木がボランチの位置まで結構な勢いで落ちてくる。その結果として秋山基準の斜め関係のトライアングルが形成されいつもの新潟ビルドアップの復活となる。そして千葉の素晴らしいゴール。高木の「左足だけど蹴っちまえ!」みたいなキックも良かった。

前節はボランチの斜め関係について書いたのだが、前半は斜め関係がほとんど作れずだったのに後半になったら秋山が立ち位置を変えることで状況を一変させてくれた。松橋監督の指示なのかどうかは知らないが試合終了後コメントを聞くと指示があったのかもしれない。いつもどおりやれよ!

なんな流れでお互いのストロングをぶつけ合うガチンコ勝負が45分間繰り広げられた後半だった訳だが、前半の絶望感から輝きを取り戻した新潟と自分たちのスタイルを貫き通す柏という試合。お互いのストロングをぶつけ合う試合は本当に満足度が高い。ラスト10分のアイシテルニイガタも良かった。新潟チャントにはスネアがほしい。小見と関根のタイマンバトルも面白くて、巨人相手に一歩も引かないどころか自分からフィジカルバトルを仕掛ける小見というのがカッコよかった痺れた憧れた。松田は決めろ。

どちらが勝ってもおかしくない試合だったのだが、勝ち点3が取れてたら今シーズンのハイライトになり得た試合だった思う。

サッカーって本当に楽しいですね!今日もマジ小島神!代表に呼べ!


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。