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朝井リョウ著『正欲』ー備忘録ー

 朝井リョウ著『正欲』。本に出てくることをなぞっているだけになるかもしれないけど、備忘録として残しておく。内容を大雑把に表現するとしたら、大多数の中の少数。その少数の中に入りきれなかった少数についての話だろうか。

ここからはネタバレになってしまうかもしれないので読む予定のある方は注意を。

 性欲。三大欲求のひとつ。子孫を残すためのエネルギーになるもの。性行為につながる原動力。公にすることは憚れるが生命のために必要とされているもの。暗黙の了解。対象が人であること。「明日、死にたくない」人にとっては疑いようがない欲求。これが「正欲」なんだろう。

 自分の欲について考えたことはあるだろうか。当たり前のようにお腹が空いて、眠たくなる。そして性的なものに惹かれる。これらは三大欲求と言われるくらいだから生きるために当たり前なものとして認識されている。だから自分の欲について深く考えることはないだろう。それは同時にあなたが大多数に属していることを意味する。私もその中の1人だ。

 もしもあなたの性の対象が大多数の中の少数だったとしたら。今であればその少数について、理解?、認知?が広がっている(読んだ人には共感してもらえると思うけどここの表現が安易にできない。?にはその葛藤があることをわかってほしい)。その少数にも属しない少数の中の少数だったら。誰にも理解されないようなものが性の対象だったら。多様性としての理解が広まっている中でそれが多様性として認められなかったら。

 読後に価値観が広がったなんて簡単には言えない。多様性の理解をもっと広げようなんてことは安易には言えなくなる。それは大多数側の人間が自分たちの陣地を確保しながら、手を差し伸べているのに過ぎないからだ。

 なんだか救いのないようで救われる。何が何を救うのかはわからない。だけどそんな気がする。



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