恋の種を蒔く
叶うはずがないのに。
いつも使っているコンビニ。いつもは電子マネーを使うのに現金で支払いをする。いつもは沢山買わないのに要らないものまで敢えて買ってしまう。
それは少しでもレジでの時間を増やすためだった。
叶うはずがないのに。
隣に住んでいる人。初めは挨拶程度の関係。何度も出勤時間が重なるうちに会話をするようになる。
それは出勤時間を30分早めて、隣の人と同じ時間に自宅から出ていたからだ。
日常の中に恋のきっかけの種を蒔く。それが恋に発展するわけがないと思いながら。だけど、いつかその種が芽を出すかもしれないと淡い期待を抱いてもいる。
こうやって半ば諦めながらも、少しの期待を胸に恋の種を蒔く。種は土の中に眠っているから始めのうちは自分以外、誰も気づかない。だけど丹念に水をやって大切にしておく。そうすると、その種を気づいてくれる人が出てくる。その瞬間に芽を出すのだ。
恋人を探す人はまずは種を蒔くことから始めよう。
恋に敗れた人は少しの休息をとる。うまくいかなかった種は成仏させて、また新しい種を蒔こう。
もう恋なんてしない。そう決心した人は種を無理に蒔く必要はない。だけど、恋の種を持っていない時間が増えれば増えるほど、種を作るのに時間がかかる。だから、ひとつで良い。ひとつでいいから種を持っておこう。
みんなが恋の種を大切にすれば、いつかきっと芽は出る。そう信じている。
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