私にとってトイレは排泄物を吐き出すだけの場所じゃない。

　仕事中に上司からきついことを言われたとき、お客さんから理不尽なクレームを受けたとき、同僚のやり残した仕事が回ってきたとき、推しのアイドルが卒業を発表したとき、ミスをしたとき、抱えきれない業務を抱えて涙がこぼれそうになったとき。

　私はトイレに駆け込む。1mと少しの空間で私は心を落ち着かせる。自分の心の声に耳を傾けて、感情と向き合う。

　それだけじゃない。大事な商談があるとき、会社のお偉いさんにプレゼンをするとき。

　私はトイレに駆け込む。緊張を落ち着かせるのと同時に自分を励ます。大きく深呼吸をした後にガッツポーズで自分を奮い立たせる。

　こうやって私はトイレに何度も助けられている。会社の中でトイレは唯一のプライベート空間になる。誰にも邪魔されない、自分と向き合える時間を作れるのだ。

　私にとってトイレとは、心の安定を図る大切な居場所なのである。