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台湾人はなぜ、安倍元首相の他界にこんなに反響があるだろう。一般人が考察してみました。

7月8日に安倍元首相がお亡くなられた速報が台湾でも流されて、ショックで言葉を失った人が続出でした。その後、民間では、自ら祭壇を設けたり(高雄鳳山紅毛港保安堂、台湾で日本軍艦を祀る唯一のお寺と言われています)、台湾101、中鋼グループ(高雄にある民間企業)のビル壁面には悼むメッセージがともされたり、嘉義にある故宮南院も、安倍元首相が生前にピアノで弾いた曲「花は咲く」に合わせて、白色の光と噴水ショーで哀悼の意を表しています。

高雄のお寺の祭壇

台北101の点灯

中鋼グループビルの点灯

故宮南院の噴水

一方、日本台湾交流協会の前では、一面の白い壁が建てられ、中国語で「哀悼 台湾の永遠の友人 安倍晋三首相」で書かれて、周りはたくさんのメッセージで埋められて、二面目の壁が建てられてもすぐ文字に埋められています。

蔡英文総統のツイートより引用

そして、政府機関や公立学校で11日に半旗を掲揚したり、蔡英文総統をはじめ、行政院長蘇貞昌や衛福部部長兼防疫指揮官陳時中など、ほかの政府要人も日本台湾交流協会の祭壇に足を運んだり、副総統頼清徳が急遽来日し、安倍元首相の自宅に訪れたニュースもありました。

安倍元首相の他界に対して、政府だけではなく、民間でもこんなにも大きな反響があるなんて、台湾人の私でも正直驚きました。ネットで様々な報道や投稿を読んで、その反響の後ろにある思いを考察してみたいと思います。
 

安倍元首相在位期間の台湾への支援

安倍元首相は、様々な場面で「台湾は基本的価値観を共有するパートナーであり、大切な友人である」と明確に述べました。例えば、2015年の参議院特別委員会の質疑の際にも、2019年10月蔡英文総統が台風19号被害へのお見舞いと日本への支援を表明したツイッターのメッセージに対しても、台湾の位置づけを強調しました。

さらに2018年2月、台湾の花蓮に規模6.2の大きな地震があり、花蓮市内では、7階建てのマーシャルホテルや12階建てのビル、そのほかに民家41棟が倒壊しました。あの頃に総理大臣を務めた安倍元首相は、手書きで「台湾加油」(台湾頑張れ)の応援メッセージを寄せ、激励する動画を公開した他、外国で唯一、国際緊急援助隊専門家チームを派遣してくれました。

在此向因台灣東部發生的強烈地震而犧牲的罹難者致上深切的哀悼,並向受災戶致上衷心的慰問之意。 東日本大地震時,日本受到長年以來的朋友--台灣的各位溫暖的幫助,日本國民直到現在仍記憶鮮明。在重要的友人面臨困難的時刻,日本願協助台灣任何必要的支...

Posted by 安倍晋三 on Wednesday, February 7, 2018

安倍元首相個人が台湾への支持や友好的メッセージ

2021年3月、中国が台湾産のパイナップルの輸入を禁止し、台湾農家に大きな損失を与えました。安倍元首相はSNSで台湾産パイナップルとの写真を掲載し、台湾産パイナップルへの支持、台湾への支持を表しています。

そして2021年6月、台湾では新型コロナウイルスのワクチン確保量不足という深刻な問題に直面し、日本政府にワクチンを贈ってくれました。このことについて、安倍元首相はラジオ番組でこうおっしゃいました:「台湾は日本にとって古く大切な友人だ。その国が困っている中でワクチンを提供するのは当然のことだ」。

さらに、2021年12月、中国の軍機が度々台湾の防空識別圏に進入し、安倍元首相は台湾のシンクタンク主催の講演会で「台湾有事は日本有事だ。すなわち日米同盟の有事でもある」と発言し、今年の3月には、蔡英文総統とリモート通話で、台湾のCPTPPへの加入を期待すると言及しました。

同じく今年の4月には、ロシアによるウクライナへの侵攻の影響を受けて、安倍元首相は米紙ロサンゼルス・タイムズと仏紙ルモンドに寄稿掲載し、「米国のあいまい戦略は中国が米国の決議を軽んじる要因になる一方、台湾には不安を与えており、インド太平洋地域での不安定さを高めている」と指摘しました。

これらの支援、支持、そして台湾のために国際への呼びかけなど、もちろん台湾のメディアでも報道され、台湾の人々も覚えています。なので、安倍元首相の台湾を支持する発言や画像などが、ここ数日に頻繁に引用され、新聞報道以外に一般人のSNS投稿も多数見られています。

安倍元首相個人ではなく、「日本」という国全体に対する感謝の意

台湾人が安倍元首相への好意は、日本への好意にも繋がっています。台湾人が安倍元首相の他界に対する反響は、実は後ろには日本に対する感謝や心配の気持ちがあります。
 
7月8日に銃撃された速報が出されてから、台湾のメディアの放送から個人のSNS投稿まで、至る所に安倍元首相に関する情報が流されて、注目度が他のニュースよりも高いです。なので、台湾人にとっては、「日本ではとんでもないことが起きた。大変だ。」という認識になっています。
 
かつ過去に日台共に震災やコロナ禍などに直面する際に、お互いに支えあってきた仲間である認識は元々できていますので、向こうが大変な時に何かしたい!という思いもあるではないでしょうか。
 
その思いに、感謝、心配、そして悲しみも混ざっていて、こうしてメッセージとなり、画像となり、動画となり、様々な形で表現されています。

国際政治上に力強い友人を失う痛み

さらに、「これから日本では、こんなに台湾のことを応援してくれる政治家は、いますでしょうか。」という声もありました。台湾にとっては、国際的支持が貴重で、喉から手が出るくらいほしいものなので、安倍元首相が今までの国際への呼びかけなどは本当にありがたいですし、これからもし台湾に何かあったら、きっと今までみたいに応援してくれるでしょう、と台湾の人々が信じていました。


以上、4つの部分から台湾の反響の理由を分析してみました。もちろん、台湾人は全員日本語がわかるはずでもないので、直接に日本のニュースや情報を知ることも難しいですので、安倍元首相のことも全面的に把握しているわけでもなく、日本国内での与論や評価などもほとんど知らないと思います。
 
ですので、日本の方から台湾の一連の反響を見ると、不思議と思われるかもしれませんが、台湾人にとって安倍元首相は「台湾にめっちゃ優しい人」という認識で、それなのに、台湾のおいしいごはんを差し上げる機会もなく、こういう形で死んでしまったなんで、本当に無念すぎるというふうに思っている人が多いらしいです。
 
優しくされたら、優しくしてあげたい、これが台湾です。
 
ご冥福をお祈り申し上げます。
 
※あくまで個人的な意見です。

Cover:蔡英文総統ツイッター

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