初めての転勤

小学1年の時だった。期待した学校生活は、隣に座る男子のせいで台無しになっていた。何もしていないのにキレて八つ当たりをしてくる、たまりかねて母親に相談したがらちがあかない、等々足をけってきた。もう堪忍袋が破れそうだぅた。今度来たらもいっきりやり返してやろうと思っていた。いつもより早く帰って来た父が一週間後に都会に引っ越すから準備をしなさいと言われた。それからはバタバタの日々だった。祖母の家に行ったり、買い物をしたり、荷物を作ったり、でもうれしかった。新しい生活と友達が待っている。ある日ビルのお店の前を通った。学校に入ってからあまり買い物についていかなくなっていた。おじさん、ビルはと尋ねたら、最近は仕事には連れていかなくなってね、裏に繋いでいるよ。私は裏木戸を開けた。ビルは柔らかな日を浴びて楽しそうにしていた。ビル。バイバイ大きな声で呼んだ。きょとんとした顔で微かにしっぽを振ってくれた。おじさん私引っ越すの、どこへ東京。気を付けてな、元気でまた会えるかな。うん、大丈夫ありがとう。この時の思い出が強すぎて学校での挨拶は憶えていない。ビルの犬種はグレートデンだった。まさに優しい巨人そのものそして一番好きな犬だ。