見出し画像

『HOTEL――性的同意の本質』2024-02-28

 先日、このようなニュースがあった。

 しばしば、「○○するのは、セックスOKという記号であるか?」というような議論が口論になることがある。たとえば一緒に旅行するとか、相手の家に行くとかである。

 たとえば、何処かで前にも紹介したことがあるけど何処だかは忘れたのだが、『HUNTER×HUNTER』で知られる冨樫義博の名作『レベルE』にこんなシーンがある。
 レギュラーの登場人物達がホテルのロビーで、カップルらしき2人組の会話を聞いてしまう。どうやら旅行中に男のほうが性関係を求めたが、断られた上に彼女は気分を害し、けっきょく旅行も途中でお流れになってしまった、ということらしい。
 彼らがいなくなった後、レギュラーのグループのうち若い男が、性関係を断った女性の対応を批判して、第三者同士で勝手に議論が始まってしまう。

 このマンガの中で口論になっているのは、あくまで普通のホテルであり、立ち寄った目的としても、旅行という性関係以外の理由があってのことであった。

 しかし2024年に起こった現実の事件の舞台は、ラブホテルの話である。つまり、もっぱら性関係を持つための施設である。

 言うまでもなく「ラブホテルが性行為のために行く施設だ」ということは広く認められており、日常語としても(ちょうど英語でgo to bedが「寝る」を意味するように)「(ラブ)ホテルに行く」は性行為を示唆する言葉になっている。

桂正和『DNA2 D・N・A2 〜何処かで失くしたあいつのアイツ〜』集英社

 そしてそれを前提に、行政はラブホテルに対して差別的な扱いまでしている。
 コロナ禍においては持続化給付金やGO TOトラベルの対象外とされ、さらには今年の能登震災における二次避難所として、ラブホテル側から名乗りを上げているにもかかわらず排除されるという事態にまでなっている。

 行政のこの対応自体はもちろん私は不当な差別と考えるし、そもそもなぜ被災者に犠牲を強いてまでも差別したいのか理解に苦しむのだが、それは行政の行為が悪いのであって、その前提知識である「ラブホテルはセックスのための施設」ということが間違っているわけではない。

 また、ラブホテルへの出入りの証拠を掴むことが、性関係の証拠となることも司法実務において認められていることは、下世話な知識ながら多くの人が理解しているところでもある。

「ホテルに出入りする写真や動画は、不倫の証拠になる?」
この点、出入りしているのがラブホテルであれば、不貞行為(後述しますが、基本的には性行為をともなう不倫のこと)の強い証拠になり得ます。
しかし、シティホテルやビジネスホテルであれば、それだけでは不貞行為の証拠としては不十分な可能性があるでしょう。

アディーレ法律事務所HP
【ホテル不倫】不貞行為の有力な証拠とは?慰謝料と離婚の請求方法

(強調は引用者)

 わかりきったことを長々と例示しなければならなかったのは、ラブホテルであっても性的同意にならない!と主張する向きが、単に頭のおかしな女が当事者だっただけの不運ではなく、どうやら警察が真に受けた上に、さらにそれにウェブ上の論争まで起こってしまっているからだ。

ここから先は

2,190字 / 2画像
表現の自由に関する問題、男性論女性論、フェミニズムなどに絡んで独自の考察を展開していきます。

シンカ論マガジン

¥500 / 月 初月無料

主に表現の自由に関する問題、ジェンダーやフェミニズムなどに絡んで考察を展開していきます。週1回以上更新。月額500円で初月無料です。

ライター業、連絡はDMでどうぞ。匿名・別名義での依頼も相談に乗ります。 一般コラム・ブログ・映画等レビュー・特撮好き。