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『ジャグラーの仮面』2023-12-23

『粛聖!!ロリ神れくいえむ』は、音楽系同人サークルIOSYSが2022年に制作した楽曲である。
 2023年9月、歌っているバーチャルYouTuber兼イラストレーターである「しぐれうい」氏のアカウントで公開された。しぐれうい氏のアバター9歳時点の姿という設定の童女キャラクター「ういちゃん」がアップテンポな曲に乗せてする特徴的なダンスと、ユーモラスな歌詞が受け、VTuberとしては史上最速の約18日で再生回数1000万回を成し遂げた。

 この曲に関連して主に【ツイフェミ】を中心とした層にバッシングを受け、炎上・謝罪させられたのが株式会社アーテックと、横山だいすけ氏である。

 株式会社アーテックは、学校教材や教育玩具の製造・販売を行っている会社だが、言いがかりによる炎上被害を受けたのは、本曲の動画で「ういちゃん」が所持している物体に好意的ニュアンスをもって言及したためである。

 というのも、動画の中で「ういちゃん」が持っている黄色い楕円形の物体は防犯ブザーであり、実在の株式会社アーテックが販売している、実在の防犯ブザーをモデルにしているからである。
 X以外でも、YouTubeやTikTokの公式アカウントでスタッフが本楽曲のダンスを踊るなどしていた。

 このことで炎上させられたアーテックは謝罪および、言及していたポストとTikTokアカウントの削除に追い込まれた。

 また横山氏はNHKの長寿幼児番組『おかあさんといっしょ』で11代目「うたのおにいさん」をつとめた俳優。
 YouTubeやTikTokで活動していたが、TikTokアカウントに本曲のダンスを再現した動画を投稿したところ、バッシングを受けて謝罪に追い込まれる被害があり、結局彼はTikTokアカウントの削除に至った。


 さて、そもそも本楽曲の特徴である歌詞は、女児への性加害をひとかけらも推奨したり助長する内容でないのはもちろん、その逆にロリコンを罵倒する内容であった。
 しかし、そんなことはバッシングしている側にはどうでも良かったのだ。

 その直後に彼女らからバッシングを受けたのが、アニメ『骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中』であった。
 これは2022年の作品であったが、X上で切り取り動画がアップされたことが発端で、山賊らしき男たちにレイプされかける令嬢とメイドの場面が叩かれた。実際の作品ではその後、主人公の「骸骨騎士」が颯爽と登場して山賊どもを斬り捨てる。これはいわゆる #Activebystander の描写であり、フェミニストが推奨していたはずのものである。
 しかしこの部分が切り取り動画になかったことをもってバッシング側を擁護するのは、あまりに甘すぎると言わざるを得ない。
 娯楽作品において犯罪の場面の直後にヒーローが登場して悪役をやっつけるなど当たり前の構成であり、そんなことすら想定できない人間達が「メディアの悪影響」だの「フィクションによる差別助長」などを語る資格すら無い。
 さらにちょっと前にも、漫画『溺愛ロワイヤル』が同様の理由で叩かれていた。こちらはやや強引なキス程度の「性加害」ではあるが、未遂のまま助けが入る点も同じである。

「ロリ神レクイエム」「骸骨騎士様」両作品への叩きに共通するのは、次のような論理だった。

 性犯罪を断罪する内容の作品だろうと、その作品をオタクが楽しんでいる以上はノーカンなので悪

 だということである。

 これは従来、フェミニズムによるキャンセルカルチャーの判断基準について、彼らを批判してきた私たちの見解と、残念ながらやはり一致する。

 そしてこの曲を「楽しんでいるオタク」が気に入らなかった人々は、ファン達に、ひいてはオタク層に小児性愛者のレッテルを貼り、「小児性愛コンテンツ」なる造語を作り出してアーテックと横山氏に襲いかかったのだ。

 しかし実際のところ、この曲を好んでいる人々は――そしてオタク一般も――別に小児性愛者でもなんでもない。

 オタク層には、自分達自身に向けられた偏見を笑いとして昇華する、という文化があるのである。
 それがいかに的外れなものであっても、彼らは敢えて受け入れて創作に取り入れたり、あくまで冗談としてではあるが「2ちゃんねる」「ニコニコ動画」などのオタクが集まるネット空間では演じ合ったりさえした。

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