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人生にスパイスを与える、映画の名言#004 残りの人生を誰かと一緒に過ごしたいと思うなら、出来るだけ早く始めるほうがいいだろ?

"I came here tonight because when you realize you want to spend the rest of your life with somebody, you want the rest of your life to start as soon as possible."
残りの人生を誰かと一緒に過ごしたいと思うなら、出来るだけ早く始めるほうがいいだろ?

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 時は1977年。友達の恋人ハリー(ビリー・クリスタル)と共に、シカゴからニューヨークへ車で旅をすることになったサリー(メグ・ライアン)。全く気が合わない二人は、道中も最悪の雰囲気に。
 それから5年後に飛行機内で再会するも、ハリーを疎ましく扱うサリー。時は経ち、さらなる偶然で三度再会する二人。最悪の思い出があったにも関わらず、今回は互いの身の内話を打ち明け意気投合。ハリーは長年「男女間に友情は芽生えない。セックスが必ず邪魔をするから」という理論を掲げながらも、サリーとの友情を育んでいく。やがてそれが”一線”を超えた時、二人の間に思いがけない感情が生まれていく・・・。

 「When Harry Met Sarry」(原題=ハリーがサリーと出会った時)というタイトルから始まる、80年代、いや映画史上最高の一本と言えるロマンティック・コメディの名作。元は新進気鋭の脚本家だったノーラ・エフロンが、脚本を執筆する数年前に、監督のロブ・ライナーとプロデューサーのアンドリュー・シェイマンと食事をする機会があり、当時離婚直後だったライナーと独身のシェイマン、そしてエフロン自身も離婚を経験していたことで、当初話し合うべきだった別の映画の内容よりも、三人は互いの身の内話(特に恋愛や結婚について)で盛り上がることに。それをエフロンが膨らませ「セックス抜きで男女の友情は成立するか?」という問いを元に、脚本を書き上げた。結果は大成功。クリスタル演じるハリーは、やや自己中心的で偏屈な人物に見えつつ、我慢強く人にも優しい(面倒くさい性格なのは確か)。対してライアン演じるサリーは、自分の意見を決して曲げず、レストランではウェイターを困らせる注文(どんなソースでも直接料理にかけず、必ず横に添える)をするような、ちょっと”こじらせた”ヒロイン。でも二人に共通してるのは、都会の真ん中で心に孤独を抱え、友情を超えないよう線引きをした関係を続けつつ、どこか互いを求め合ってるように見える、不思議な関係だ。

 そして表題に選んだのは、クライマックスでハリーが言い放つセリフ。これがどういったシーンで使われるのかは、是非作品を見てほしい。劇中で二人が歩くセントラル・パークの美しい風景や、赤裸々に語られる男女の会話(特に伝説となった、中盤に出てくるレストランでのサリーの振る舞いは、いつ見ても笑える)等、見所は盛り沢山。単なる恋愛映画に留まらず、真っ当な大人になれない、不器用な人間ドラマとしても見応えのある作品です。


-恋人たちの予感(1989年)
監:ロブ・ライナー
脚:ノーラ・エフロン
出演:ビリー・クリスタル、メグ・ライアン


この記事を書いた人
大石盛寛(字幕翻訳家/通訳)
通称"日本字幕翻訳界のマッド・サイエンティスト"。
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