見出し画像

【ひつじが週報】200215-200221

●200215

珍しく盛況。団体さんの来店が重なって、テーブル席側も含め店内が満席に。カウンター席の方々に移動してもらったりしてなんとかしのぎながら、それでも数名の来店を泣く泣くお断りした。自慢ではないがひつじがは基本満席になるような店ではなく、混み合うのは本当に稀。この日も満席になったのは1時間弱でさほど長くはないものの、皆で示し合わせたかのようにそこに来店が重なった。

瞬間最大風速的に混み合い、その数十分後にはさっきまでが嘘だったかのように静かになる。嵐の後の静けさを一晩のうちに体験できるのはそうそうない。お見送りをしながら「いつもは暇なんですよ…」と言ったところでまったく説得力もなくて悩ましい。そりゃ賑やかな瞬間に来店したらその店が流行ってるように感じてしまうのはごもっとも。自分だって仮にその状況に出くわしたら「またまたそんなご謙遜を〜」と思うし、言ってしまう。そういうものでしょう。なので、日報などで真実を補足していかねばと強く思う。日報とはそういうもの……なのか?

気候や時期、店内や周辺各地での催しの状況などから、その日が盛況なのか凪なのかを開店前に準備しながらぼんやりと予測している。当たることも外れることもあるけど、最近は的中する確率も増えてきた。凪で当てるのは嬉しくも何ともないが、いずれにしてもそういういわゆる「波」的なものになるべく左右されないようにしていきたい。と、大波がさって静かになった店内で考えていた。

静かになった、とは言ったものの珍しくノーゲストになる時間帯がなく、久しぶりにお会いする方から最近よく来てくれる方までパラパラと来店があり、お話をしていた。結果、閉店時間を迎える頃にはクタクタになっていて、最後のお客様を見送ったあとに偶然店先で鉢合わせになった人たちの入店をお断りしてしまった。この辺のモヤモヤについては東京湯島の夜学バー”brat”の店主さんと現在やってる往復書簡の方で書いたので割愛。ルールに縛られすぎると後悔することを身を以て知り、反省しながら食器を洗った。なのでいつもよりちょっと時間がかかった。

イレギュラーが起こる日には、いつも見落としている大切な気づきが見つかって良い。しっかり拾って考えて、それをいつもの中に落とし込んでいかねば。

●200216

昨日ほどではないものの、そこそこ賑やかな営業。関東から綺羅星のような初来店が。出張で福岡に来られていて、その合間に本屋巡りで立ち寄った書店(ajiroさん)の紹介でこちらにも寄ってくれたとのこと。嬉しい。近所の作家さんたちも一緒になって、店内にある人形などを使って哲学談義をしたり、各々の鉄板ネタを披露しあったり、たまたま男性だけだったこともあり、話の内容が部室感満載だった。

来店回数に関係なく、その場を構成している人たちで空間を作り上げる(たまたまこの時は「部室」)のは本当に面白く、それを面白がって柔軟に対応を変えてくれる人がひつじがにいてくれるのはありがたい。おかげでこの場は部室にも教室にも相談室にも公民館にも、もちろんバーにもなれる。

カウンター席中央部が盛り上がりを見せている傍で、奥側の方では関西在住時につくったフットサルチームの友人と、大阪で働いていた前職の後輩が偶然同じタイミングで福岡に来ていて、さらに偶然同じタイミングでひつじがに来店してくれた。一人来てくれるだけでも珍しいのに、それが重なることなんてまずありえない偶然なので、興奮冷めやらぬままにお互いを紹介しつつ話していた。ちなみに二人ともすでに2度目の来店なのがうれしい。まさか福岡の店の中で関西の人間同士をつなげることになるとは思わなんだが、向こうでフットサルを一緒にやりましょうねとの話になったみたいでそれもまたうれしい。

お店が動くわけにもいかないので(動く方法は模索中)、福岡で首を長くして待っているしかないものの、そんな中でもこうやって関東や関西からふらっと立ち寄ってもらえることで簡単に地域の壁を超えることができる。もちろん遠方から福岡に来るのは簡単なことじゃないが、だからこそ来てくれた人に損はさせないようにしたいし、地域関係なく立ち寄りたくなるような場でありたい。ムヅカシイ。

●200217

凪。あまりの寒さで、人通りもまばら。空調は直ったものの、その暖房効力を上回る冷気。そして隙間風。木造建築の弱さを文字通り肌身に感じながら、それでも立ち寄ってくださった猛者の皆様とストーブを囲みながら談笑した。

暖房が壊れた時に嫌というほど実感したが、人は寒いと「寒い」以外のことを考えられなくなってしまう。今だと想像しにくいが夏の暑さも同じだろう。そのぐらい思考が捗る「適温」は限られていて、人間は弱い生き物だなあと改めて空を見上げてしまう。

ただそれでも我慢してたらある程度環境には慣れる強さがあるのもまた人間。例えばたとえ寒かろうと、暖房が壊れた頃を知っている身としては「あの時よりは断然快適」とポジティブな解釈をすることができる。当然それは自分だけの解釈なので他人に押し付けるものではない。が、それぞれがそれぞれにそんな解釈のゆとりを持てたら、きっと世の中ももっと寛容になるのではないかと思った。これは実例が実例だけに店内が寒いことに対する言い訳をしているように聞こえるかもしれないが、実際その通りなのでぐうの音も出ません。何も死地に飛び込みなさいとかそんな話ではない。時にはちょっとしんどい思いをしておくと、それが後の自分を助けるかもしれない。

●200218

凪。昨晩同様の寒さ。そして昨晩同様の人気(ひとけ)の少なさ。天候その他諸々に大きく左右されてしまうので、早い所その状況を打開せねばなあと思いながら、天候その他諸々に左右されない強いお客様方とのんびり話していた。

日頃よく来てくれる大学生の親戚の方がご来店。姪っ子(その学生)から話は聞いてて、近くにきたので立ち寄ってくれたとのこと。色々とありがたい。偶然別の大学生が就活準備で来店していたので、その学生の話をみんなで聞いていた。今日知り合ったばかりの学生の話を真剣に聞いてくれて、さらにはご自身やお子さんの経験を踏まえて助言をしてくださり、傍で聞いていて勉強になった。

誰かのために自分が持っている中で役に立ちそうなものを差し出す。特別な技術じゃなくても良い。誰だって何かしらは経験してるし、その経験を必要としている誰かしらはいる。それも意外と近いところにいる。そんな人同士がうまくつながるようにしていくのはもちろん場側がやることだけども、この場で出し惜しみせずに持っている知見を差し出してくれる人に増えてほしいし、現時点ですでに居てくれるのは誇らしいことこの上ない(この日みたいに初来店の方が自然とそうしてくれた日なんてもう最高!)。

●200219

凪。昨日偶然知り合った大人たちから話を聞いた学生が二日連続の来店。昨晩助言されたことを踏まえて、エントリーシートの内容を詰めていく。

後半はよくきてくれる絵本作家さんだけになり、モノの語源についてあれこれ調べながら話した。都市伝説系に造詣が深い方なので、話を聞いているだけでもその分野に関する知見が増えていって良い。この先使いどころがあるかわからないけど、徒花になっても良いのでとりあえず頭の中に蓄積しておく。

昔から一見役に立たなそうな話を聞くのが好きだった。実際いつどこで何の役に立つのかわからない話も、それでもたまにどこかでパズルがはまるように「あの時聞いたあの話…」なんて運良く繋がることがあるから辞められないんだと思う。その気持ち良さは手元にピースを持ってなければ味わえない。もちろん手に持てる(記憶できる)数には限りがあるし、聞いたそばから忘れる話もあるけど、それでも無駄なピースを手にしておく余裕は常に持っていたい。

●200220

幾分暖かさを取り戻したものの、凪。まったりとした空気に浸りながら、初来店の方や沖縄から来られた方と談笑。イベント終わりで近隣の作家さんも来られ、これまたまったり談笑。こういう時に話した内容の大半は翌朝になると綺麗さっぱり忘れているけど、それでも覚えていることがいくつかあって、そういうものを大切にしていきたいと思っている。なのでよほど忘れたくないことでもない限りお店で話したことはメモに取らない。ちなみにこの日に話したものは何も覚えてない。たまにはこんな日があってもいいと思う。(日報とは?)

●200221

少しずつ暖かくなるにつれて、店内にも風が吹いてきた。今年の冬は短かった。早い時間帯に前日(20日)営業前に行った焼酎イベントでご挨拶した酒蔵の方がわざわざ立ち寄ってくださったので、お酒造りの話などを伺った。イベントではたくさんの方をお相手されてたはずなのに、こんな小さなお店にまでこうして律儀に顔を出してくださるのは有難さしかないし、そういう真摯な蔵人さんやその人たちが造るお酒をもっと解像度落とさず飲み手の皆様に伝えられるように、今以上真摯にお酒と向き合わねばと静かに誓った。

ひつじがは未だ世間的にほとんど認知されていない小さな店だけど、だからこそ今この段階からひつじがの相手をしてくださってる関係者各位のことは長く大切にしていきたいし、いかねばと思う。(あわよくばその方々がひつじがと絡んでよかったと思ってもらえるぐらいの力はつけたい。助平心)

卒業間近の大学生が来店。一年前のプレオープンから足繁く来てくれてて、就活時もみっちり話を聞き、店内で色んな大人と知り合ってる店の名物学生。この日も同じくプレオープンから通ってくださってる社会人の方とおよそ半年ぶりの再会を喜んでた。お互い頻繁に来ていて、そのたびに「最近◯◯さん(くん)来てますか?」と名前を出し合いながら、何の因果か絶妙に来店が重ならない状態が続いていたので、こちらとしても喜ばしい気持ちで再会を祝した。

そんな風に家や職場以外で約束はしてないけど偶然会えると楽しい相手がいるのは楽しいことだと思う。楽しいが続いて馬鹿みたいな文章になったけど、まあ事実楽しいからそのままにしておきます。