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ぽよぽよ日記〈電気風呂、長電話、すももと物事のいい面〉

梅雨の季節のぽよぽよ日記。
時系列なんていらないぽよぽよ日記。


6月〇日
深夜、同居してる相方が酔っ払って窓から帰ってきた。普通に怖いからやめて欲しい。
「鍵どうしたの?失くしたの?」と何回聞いても「かおりがドア開けてくれないから〜」の繰り返しだったからもう聞くのやめた。
やれやれ、私も酔っ払ってる時ってこんな感じなのかしら。

6月〇日
車を走らせて紀伊半島を旅した。
「今日はどこに泊まろうか」とか、お腹いっぱいにならないように食べたいものを慎重に吟味してみんなで分け合いっこするのとか、私たちにしか分からない言葉やネタが生まれていくのとか、そういうのって何度旅をしても幸せでくすぐったい。
毎日ケラケラ笑ったり、やっぱり食べすぎて苦しくなったり、黙ってみんなで車窓を眺めたり、子供みたいに急に走り出したり、寝る前にぽつぽつ話したり、した。

きっと旅から帰ったら、ちょっと寂しくなって、でも家が落ち着いて、こんなことがあったよって誰かに話したくなって、写真見返して、ぷぷぷってお風呂で思い出し笑いしちゃうんだろう。

6月〇日
やっぱりな。ぷぷぷ。

6月〇日
恋人と長電話しながら海辺の公園を散歩した。
今宵の月はちょっとすごい。おっきくてオレンジですごく低いところに浮かんでるから、視界に入った一瞬「こんなところに吉野家あったっけ?」って思った。ほんとに。
空には満天の星。昼間は雨が降っていたのになぁ。
電話が来なければ家を出ていなかったから、思いがけぬ絶景に感謝した。本当は二人で見られたら良かったけど、一人で流れ星まで見てしまってごめん。代わりに帰りは走って帰るよ。

7月〇日
関東は記録的な大雨。
鎌倉には明け方から避難指示が出ている。私はたまたま東京にいるけれど、風邪をひいている相方が一人で家にいることが心配でならない。こういう時の想像力は邪魔だ。
いつも心配かけるのは私のことが多くて、それも嫌だったけど、大事な人を心配するのって自分が辛いより辛いかもしれない。
大丈夫で良かった。

6月〇日
会えるはずだった日に会えなくなった。
残念だけど、ちょっと安心もした。
大切な人と会う時はなるべく100%の自分で会いたいから、余裕のない今はこれでよかったのかもしれない。
いつもより少し丁寧にコーヒーを淹れた。

7月〇日
恋人との長電話の切り方がめっぽう分からない。
近頃は朝刊が来て鳥が鳴き始めても「じゃあおやすみ」が言えない。
何もかもが便利な時代で、なんで未だに人間ってこんなに眠らなくちゃいけないんだろう。
「どんなに昼間眠くても後悔しないぞ」と決め込んで朝焼けの雲におやすみを言う。幸福な疲労感。

6月〇日
人はいろんな理由で嘘をつく。
相手を傷つけないための嘘をついていたことがバレて、逆に相手を悲しい気持ちにさせた。嘘をつき通せばよかったのかもしれないけれど、結局一人で抱えきれないもんだから言ってしまった。
辛いことも全部分け合おうなんて簡単に言うけれど、それってなかなか難しいぜ?

7月〇日
コンビニでスマートに「LINE Payで」と言った直後にスマホの充電が切れた。ありゃ。

6月〇日
電気風呂が苦手だ。
しかし銭湯で見つけると毎回果敢に挑戦する。ちょっとずつ手足やお尻を入れてみてはビビビッとなって「うわぁぁあ」とか言って飛び出る。のを繰り返す。
しっかり肩まで浸かってウトウトしているおばさんたちの気が知れない。同じ生き物なのか。
諦めて露天風呂でぽよぽよしていたら、私の連れが同じように電気風呂と戦っているのが窓越しに見えた。結構まぬけで笑った。

6月〇日
心が疲れきったので、誰もいない雨の帰り道で水溜まりを思いっきり蹴ってみた。ビーサンが吹っ飛んだ。
帰ったら熱いシャワーを浴びてお香を焚こう。

6月〇日
20年振りくらいに再会した幼稚園の親友と雨上がりの動物園を散歩したり古着屋を漁ったりコーラを飲んだりした。
実家に連れていきお母さんがひどく感動しているのを見て、私も感動していることに気がついた。不思議と先週も会ってたみたいな心地でいたけど、お互いの20年、きっと知らないことばかりなんだな。空白は急いで埋めなくてもいいんだけど。

7月〇日
死んだ後の話をした。
天国ってあると思う?とかじゃなく、死んだら誰かがNetflixのサブスク解除しなきゃいけないんだねとか、自分しか知らない知り合いとか予定とかパスワードとか、結構大変なことあるよねとかそういう現実的なこと。
前に友人が死んだ時、行くはずだった居酒屋の予約をキャンセルしたことを思い出した。
存在するはずだった彼とのなんでもない夜は、電話一本、20秒あまりで永遠に存在しないことになった。
電話に出た何も知らないお姉さんの妙に明るい声と、その夏に漂っていたねっとりとした息苦しさを思い出した。

7月〇日
夜に出かける。乗りたかった電車には間に合いそうにない。次だと20分も待つのか、むむむ。
悪い。

暇つぶしに駅前のコンビニに入る。夕飯を食べていなかったことを思い出した。
ラスイチだったとり五目おにぎりを手にコンビニを出ると、改札の前で仕事帰りの相方と会った。いい

私「ただいま〜」  挨拶を間違えた。
面白いからいい。

彼女は黙って、私の汗ばんだ首元にへばりついていた髪の毛を取ってくれ、シャツのボタンを閉めてくれた。シャワーの後急いで家を出できた人間として模範的な容貌の私。
悪いというか余裕がない。

「今日な〜駅で朝市みたいのやっててん!」とビニールいっぱいのフルーツを見せてくれた。
美味しそうなすももを一つもらった。
いい。

ホームでとり五目おにぎりとすももを食べた。
ずいぶん待っている電車はさらに8分遅れるらしい。
悪い。

やっと電車に座ると、窓の夜闇を鏡にして盆踊りみたいな踊りを練習する女性がいた。音楽を聴きながら、気持ちよさそうにステップを踏み腰を揺らすその女性を、空いた車内でぼーっと眺めていた。
すごくいい。

今日仕事中に包丁で切った親指の傷に、たぶんさっき食べたすもものエキスが作用して、なんか痛い。地味にめちゃめちゃ痛い。
悪いというか痛い。


今日も今日で、いいことも悪いこともどっちでもないこともたくさん起きた。
「いい日だった!イェイ!」と言い切ることのできる日はそう多くもなく、だからといって「悪い日だった?」と聞かれたらそんなこともない毎日。

いつも心がけていることの一つに、「なるべく物事のいい面をみよう」というのがある。
簡単なようでいて、時にそれはすごく難しい。
特にこんなジメジメとした梅雨の季節は。
自分に余裕がないと物事のいい面に気づけない。

でも、いい面をみられない時には、誰かに力を借りればいい。逆の時は、誰かの代わりにいい面に気づいてあげればいい。そんなふうにみんなで力を合わせて、物事のいい面を見つけていけばいい。

そのために我々は今日もささいでどうでもいい会話をする。

電気風呂と戦ったり、長電話が切れなかったり、すももをあげたりする。


そういうのってちょっと素敵じゃんね。
ぽよぽよ。


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