天皇賞(春)を考える

【長距離で強い馬を狙うレースではない】

 天皇賞(春)は3200mとJRAのG1では最長距離。長距離路線で実績を残してきた馬が多く集まるレースですが長距離で強い馬を狙うレースではありません。長距離で”も”強い馬を狙うレースです。
 実際過去の勝ち馬を眺めてみても、ほぼ例外なく2500m以下の重賞で連帯実績があります。まあ、長距離重賞の数がそこまで多くない中で、G1に出走できるだけの賞金を獲得してきているので、中距離重賞でも実績を持っているというのは自然なことではありますが、長距離だけでなく、中距離でも通用するだけのスピード能力を持っているというのは重要な要素。
 ではなぜ、中距離重賞での実績が重要になるのかと考えるとそれは”これまでの長距離重賞に比べて急にメンバーレベルが上がり、求められる追走スピードが速くなるから”シンプルにこれでしょう。
 日本のレース体系上、チャンピオンコースは東京2400、賞金的にも有馬、ジャパンカップ、日本ダービーと中距離に高額賞金レースが集中しており、当然能力の高い馬はそこを目指して育てられます。そんなハイレベルな中距離路線を歩んだ馬の中で「中距離がメインだけど、長距離レースもいけますよ」と顔を出してくるのがこの天皇賞春。
 基本的にスローで折り合いをつけながらスパートに向けて足を溜めて、如何に最後まで足を使って伸びれるかを競うことが多い生粋のステイヤー組とは全く異なる基準のスピードで結果を出してきた馬が急に入ってくるので、求められるスピードが急に上がり、中距離実績の乏しいステイヤーは力を出せず、結局中距離でもつよい馬が勝つ。という結果になりやすい。
 近10年で中距離実績が無くてもこのレースで好走した馬はたった2頭。それは今年も出走してくるテーオーロイヤルとシルヴァーソニック
 この2頭が好走した近2年の天皇賞春は稍重で例年よりもスピードが求められない条件だったとも考えられますが、特に今年人気になりそうなテーオーロイヤル……どうでしょうか。
 ちなみに今年の出走メンバーで2500m以下の重賞で連帯経験があるのは
・サリエラ(ローズS2着)
・サヴォーナ(日経新春杯2着、神戸新聞杯2着)
・タスティエーラ(ダービー1着、皐月賞2着、弥生賞1着)
・チャックネイト(AJCC1着)※
・ディープボンド(京都新聞杯1着、有馬記念2着)
・ドゥレッツァ(金鯱賞2着)
・ハピ(シリウスS)※
・ヒンドゥタイムズ(小倉大賞典1着、小倉記念2着)
・ブローザホーン(日経新春杯1着)※
・マテンロウレオ(きさらぎ賞1着、京都記念2着、中日新聞杯2着)
 の10頭。※をつけた3頭は渋った馬場とダートでしか連帯経験が無いので今回求められる実績からは少しずれるかなということで、一応区別できるように。半分以上該当してしまってますが、人気になりそうなテーオーロイヤルはここ3戦長距離ばかり使ってきていますし一つ不安要素かなと思います。

【結局上がり勝負】

 そもそもがスタート直後の最もラップが早くなる地点にのぼりがあることも相まって、基本的には差し優勢なコース形態である京都3200。最後の勝負どころが坂を下りながら加速した上での平坦でもあるために、如何に最後まで早い足を使えるかというのが重要になります。
 過去の傾向を見ても、かなり早い上がりを求められるパターンも珍しくなく、長距離戦でありながら馬券内に来るには先行でも35.0前後、後方からならば34秒台でまとめる必要がある。顕著な例だとディープインパクトは33.5で圧勝したりしています。
 これは前段の中距離実績が求められるという点とも通じますが、結局は中距離でも通用するだけのあがりを求められやすいのが天皇賞春、今年のメンバー構成を見ても昨年のようにガンガンハイペースで引っ張りそうな馬もおらず、基本的にはそこまで流れずにスローからミドルで最後に足を使う展開になるのかなと思います。
 今回のメンバーだと、比較的切れる足を使っての好走経験がある馬が多いですが、その中でも重賞で33秒台もしくは上がり1位をつかって好走した経験がある馬に限定すると
・サリエラ☆
・サヴォーナ☆
・タスティエーラ☆
・テーオーロイヤル☆
・ドゥレッツァ
・ハピ
・ブローザホーン
・マテンロウレオ
・ワープスピード☆
 の9頭。このうち☆をつけた5頭が33秒台の上りを重賞で使った経験がある馬です。緩い流れからの瞬発力戦になった場合は順当にこのあたりが有利でしょう。

【好走ローテに特徴あり】

 いたってシンプル、休みを挟んで1度か2度使って天皇賞を迎えている馬が好走馬のほとんどを占めている。
 まあこれもこれまでに書いてきたことから通じるが、基本的に能力の高い馬ほどレースは沢山使わずに目的をもってレースを絞って狙いを定めて仕上げてくる。
 あとはそもそも、能力上位の馬が天皇賞に向けてとってくるローテが、”有馬記念→前哨戦→天皇賞春”や”菊花賞→前哨戦→天皇賞春”という使い方になりやすいというのもある。
 こんな当然と言えば当然の話でも、今回のメンバーであればかなりこれだけで絞り込めてしまう。該当するのは
・タスティエーラ
・ディープボンド
 の2頭のみがドンピシャで合致。少し変則的ではあるが
・サヴォーナ
・サリエラ
・ドゥレッツァ
・ブローザホーン
 の4頭も該当と考えていいかもしれない。かなり少ないですね……これだけで決まってくれるとかなり面白いですが……無くもなさそうなメンツではありますね。
 逆に狙いづらいのが休みなくコンスタントに使われている馬。今年でいえば
・ゴールドプリンセス
・テーオーロイヤル
・ハピ
・マテンロウレオ
・メイショウブレゲ
・ワープスピード
 特にテーオーロイヤルとワープスピードは前走の阪神大賞典時点で言われていたことではあるが長距離戦線皆勤賞でこのレースに臨んでおり、今回に向けて更にパフォーマンスをあげられるほどの余力が残っているのかは疑問が残る。

 さて、シンプルではありますがここまで上げた3つの条件に該当したのは
・サリエラ
・サヴォーナ
・タスティエーラ
・ドゥレッツァ
・ブローザホーン

 の5頭。長距離戦線では苦戦を強いられている牝馬と世間では侮られがちな4歳世代が3頭、そしてまだ実績には乏しい小柄な5歳牡馬……なかなか面白い感じになりましたね。

【現在の注目馬】

 ということで現在の注目馬は条件に該当した馬の中でもっとも人気薄になりそうなサヴォーナです。
 まず京都外回りへのというか直線の長い右回りコースへの適性がかなり高いのが魅力ですね。ゆきやなぎ賞、アザレア賞、神戸新聞杯、菊花賞、日経新春杯と右回りかつ外回りでは2-2-0-1で4連帯に菊花賞の5着。
 血統的にも馬体的にも、そして走りのフォーム的にも加速には時間がかかるタイプであり、直線は長いほうが良く、小回りコースはあまり向かない。 
 唯一馬券外になった菊花賞の内容も決して力負けという感じではなく、位置取りと足の使い方の差がかなり大きかった。スタート出は致命的ではなかったものの接触もあり行き脚つかず後方から、なんだかんだでほぼ最後方に。向こう正面では馬郡の外にだして押し上げて、コーナーでも強引にそのまま外回し、好走したドゥレッツァ、タスティエーラ、リビアングラスと比べるとかなりロスが大きく、外回しでも伸びてきたソールオリエンスと比べると道中の立ち回りが厳しかった。
 更に今回に向けて評価したいのが神戸新聞杯の走り。全体的にスローからの瞬発力戦が多かった現4歳世代の世代限定戦のなかでこの神戸新聞杯は馬場も相まってではあるがレコード決着の高速展開。後半1000mのラップが12.0-11.6-10.7-10.9-12.0で57.2とかなり凄まじく、坦々としたラップを追走しながら足を溜めてのロングスパート戦かつ直線では高いトップスピードを示しているというのは今回の天皇賞春にも通じる実績。
 更にもうひとつ面白いのがクッション値、開幕週では両日ともに9.9とかなり高め。そんなハイクッション値な馬場だった京都が日~水に雨が降った上に前日の土曜にも雨予報。そこまで雨量はない予報なので開催自体は良馬場にはなると思うが、先週のように極端に高いわけではない9.5前後に落ち着くという可能性は十分あり得る。つまりはこれまでのレースの中でベストパフォーマンスであったであろう神戸新聞杯と似た馬場コンディションで走ることが出来そう。
 一週前追切の動きを見ても、これまで未完成な感じが残っていた走りに随分芯が入ってきた印象で、四肢の連動性が上がっているというか、走りに無駄が少なくなってきた。長距離を走るにあたってこれ以上ない変化であり、状態面はしっかり強い相手と2走戦った分の成果が出ていい方向に進めていそう。近走で大きく増えた馬体重がここでしっかり絞れてくるならばかなり期待できるかと思う。
 ここからの理想は最終追切で力み過ぎずリラックスした走りで好時計、そして内目の枠を取れること。ここまで揃ってくれれば本命まであり得るかなと考えています。

【まとめ】

 もっとも期待したいのはサヴォーナですが、タスティエーラ、サリエラあたりがどんなオッズになるか次第ではこちらも面白そう。人気的にはドゥレッツァとテーオーロイヤルの2強になりそうですが、この2頭なら断然ドゥレッツァですね。
 ここまであまり触れてこなかった馬で気になるのは極上のキレを持っているスマートファントム。あまりにコンスタントに使われすぎている故に難しいとは思うものの、かなり競走馬として完成の域に近づいてきているマテンロウレオあたりも気になりますね。
 荒れるときは荒れるタイプのレースですし、週末までしっかり見極めて高配当をゲットできるよう、考えていきたいと思います。

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