天皇賞(春)の追切メモ

 今回は気になる馬9頭について書いていきたいと思います。

・サヴォーナ

 まず一週前の動きがかなり良い。
 そもそも馬体重が前走時点で536㎏の大型馬であり、近走の一週前追切だとまだ馬体を持て余し気味で、首の使い方がいまいちな印象だったが、今回の一週前ではグッと完成度が増した感じで手前替えにこそ時間がかかったが、直線での伸びは素晴らしく後肢にグッと体重が乗った状態で体幹も安定、前肢にも柔らかみが増してスピードに乗ることが出来た。ストライドも以前よりゆったりと大きく伸ばすことが出来ており、今回長距離戦に臨むにあたっていい変化が生まれている。
 そこから日曜日にも坂路で57.0とまずまずの時計からの加速ラップを挟んで最終はCW……そう!!CWなんです!!
 これまでは基本的に中竹厩舎らしく勝負仕上げのときは坂路で51秒台の時計でまとめてきていたが、今回は切り替えてCW。これまで長距離戦で好走しきれなかった菊花賞、阪神大賞典も坂路51秒台仕上げ。ただ、坂路で好時計を出すとどうしても体に力を入れて思いっきり走る必要があるので、どうしても力みながらの走りになってしまい、長距離戦に向けての調教としてはかみ合い切らない。
 それが!!今回は!!!CW!!!しかも早い時計でもなく6Fだと82.6から終い11.8-11.7のサヴォーナにしてはゆったり目の時計で仕上げ!!!!これは良いですね。
 一週前でも感じたように、これまでよりも走りに柔らかみが出ている。これまでは速く走るからこそ安定感のある走りが出来ているという感じだったが、ここにきてゆったりの時計でも無駄のない動きが出来ている。これならば長距離らしい道中の落ち着いたペースでも体力の消耗は少なく抑えられそうで、ここに来てステイヤーとしての完成度が一気に上がってきた。馬体のハリ艶も目立ち文句なしです。併せた同厩のスカーフェイスも楽に突き放す走りが出来ており、メンタル面もG1挑戦に向けてかなりいい状態に持ってこれているのではないかと期待できる。

・サリエラ

 一週前はCWで併せ馬の内側、動きは軽快ではあるが、ハイレベルの長距離戦に臨むことを考えるとまだストライドは伸びきっておらず、走りも窮屈に映る。中距離でも上位のキレを使える馬なので、直線でのスピードの乗りは良いが、最終追切ではもう少しゆとりをもってこのスピードを出せてほしい。
 最終追切は併せ馬の外側、幾分リラックスして走ることはできているが、最後まで前後のバランスを安定させ切ることが出来ておらず、やや前傾なフォームに。馬なりで動かした分トップスピードも物足りず、併せた馬も手綱を引きながら待ってくれていたような感じ。
 前走から更に相手が強化されてのG1挑戦に向けての仕上げとしてはやや物足りない印象は否めないが、力は出せる仕上がりにありそう。前走並かやや上かという状態でどこまでか。

・シルヴァーソニック

 一週前はCWで併せ外側、全体時計終いともに好時計でかなり負荷をかけたが力み過ぎないいい走り。直線で手前が替わらなかったのはマイナスではあるものの最後までフォーム崩れずに走れており流石の能力の高さは感じさせた。あとは最終追切でゆったり目の時計で仕上げられればと思っていたがそこから日曜に坂路で55.0から12.9-12.2とまずまず早めの時計を出しながら最終も坂路で53.1から12.5-12.6と早い時計でまとめた。
 映像でも見るからに力んでいるように映り、集中して走れて入るものの長距離G1に向けての仕上げとしてはやや不安。昨年の仕上げが坂路で55.5から13.2-13.5とかなり抑えた調整だったので、この変化は歓迎できない。
 シルヴァーソニック自体、休み明けなど仕上がり切っていないタイミングの方が最終まで好時計でまとめてくる傾向が強いので、今回もちょっと厳しいのではないかなと思う。

・スマートファントム

 中1か月での出走だからというのもあるのかもしれないが、全体的にゆったり目の時計の仕上げ。
 最終追切の映像を見ての第一印象は思っていた以上にステイヤーらしい走り。ゆったりとした時計でも全くフォームが崩れずそれでいて力が抜けているでもない。集中した動きで仕掛けられればすぐに反応して加速できる。
 追い込み一辺倒の競馬だったのでここまで出世は遅れてしまったが、キャリア13戦中7戦で上がり最速を記録できるほどに”折り合い”と”足を溜める”ことが得意なのが理解できる追切の動き。
 人気薄ではあるが一発あってもいいレベルでいい状態に映る。

・タスティエーラ

 一週前はCW併せ馬の外側で6F82.8から終い11.0の好時計。流石ダービー馬と思わせる質の高い走りではあるが、昨年のダービー時などピークの時の動きと比べるとまだ仕上がり途上感は否めない。スピードは出ているがまだ体は力みがちで、前進気勢が強い。最終はもう少しゆったりとした走りでスピード感が欲しいところ。
 そこから日曜には坂路で58.1とやや遅めな時計で最終追切はなんと意外なことに坂路仕上げ。併せ馬の内側で全体55.5から終い13.0-12.4のゆったり時計。この仕上げ方の変化がどうでるかは未知ではあるが、動き自体は一週前と比べてもかなりいい意味で力が抜けており、併せても変に力んでいない。しっかりコントロールが効いて抑えるところは抑えて動かしたいところでは動くことが出来ている。
 近走の結果がふるっていない現状から一つ切り替えるための工夫とは思うが、いい方向に向く可能性も十分期待できそう。ただ、やはり抜群の状態かと言われると一枚落ちる感は否めず、その状態でも能力の絶対値の高さとどんな流れでも力を出せるレースセンスの高さとコントロール性の高さでどこまでやれるか。

・テーオーロイヤル

 ここ何走かは追切を見るたびに明確に前走以上の上昇を感じられる動き。
 G1挑戦に向けて、連戦の疲れがあるかどうかがこの馬を評価するにあたっての焦点になると思いますが……ピークは前走だったんじゃないかなぁという印象は否めない。
 一週前は単走での走り、姿勢が低く体を大きく使って走るいつもの動きは出来ているがややいつもより前傾過ぎるというか前肢が地面に着くまでにゆとり、余裕が無い。最終でどういった動きを見せてくれるか注目していたが、最終追切は3頭併せ馬の内側、前に馬を置いてじっくりと直線で躱す内容だったが、手前替えは遅く加速にもあまり切れが無い。馬具もつけて工夫しながら何とか状態をキープしようとしているような感じに映り、前走以上の上昇には期待しづらいのではないかなと思う。
 ただ、前走のパフォーマンスが素晴らしかったことは間違いないので、そこからやや落ちたとして、今回どこまでやれるか。

・ドゥレッツァ

 一週前はCWで併せ馬。長めから追って6Fだと81.6、終いは11.2と好時計。動きを見るとやはり今回のメンバーでの横の比較でもやはり質が高い動き。一歩一歩の推進力が非常に高く、弾むような走り。そこまで大きな馬ではないがストライドの雄大さ、それを支える背中の良さは目立っており、一週前の時点でかなり仕上がりは順調に映る。
 そこから土曜に坂路で55.9とまずまずの負荷をかけてから最終追切ではCWで単走。ラチ沿いを通しながら全体時計は6F81.9から終い11.7と好時計でまとめられているが、映像を見ると決して全力で走っている感じではなく余裕をもって走りながら結果的にこの時計になってしまっているだけという感じ。やや前進気勢が目に付くのは気になるので、馬郡に揉まれた時にどうなるかはやや気になるところではあるが、まともに走れれば勝ち負けという状態にあるように見える。
 人気でも逆らいづらい。

・ヒンドゥタイムズ

 全く人気が無さそうではあるが、ちょっと面白そう。
 これまでの調教では基本的に負荷をかけられながらスピードは出せているが、ストライドにゆとりはなく突っ張り気味の走りという印象だったが、今回はかなり長距離仕様に切り替えて仕上げられている。
 最終追切は併せ馬の外側でラチ沿いを通しながら6F86.2から終い12.3-12.3とかなりゆったりした動き。走りのフォームはいつもに比べるとかなり状態を起こしながらストライドも広めに走ることが出来ており、ゆとりが感じられる。折り合いにも難しさは感じられず力を抜いて走ることが出来ている。最後は追われて併せ馬の前に出た分いつもの感じになっているが、仕掛けに合わせて動きがかえられるコントロール性もそれはそれで好感が持てる。
 中距離戦ではややトップスピードが足りず、渋った馬場でしか重賞で勝ち切れていなかったが、長距離仕様に仕上げられた今回、路線変更がぴったりはまるという可能性も無くは無さそうで。大穴ならば紐で抑えておいても面白そう。

・マテンロウレオ

 前走の調教の動きもかなり良かったように思うが、今回の方が更に一ついいかもしれない。
 動きは前走の時も思ったがこれまでと比べるとかなり背中に安定感が出てきており、その分動きに無駄がなくなりスムーズな走りが出来ている。
 前走時と比較して今回良いなと思ったのは前走よりもリラックスした走りながらフォームが全く崩れていない、しっかりと地面を捉えて四肢のバランスよく体重を支えながら乱れの無い走り。
 時計控え目な分迫力には欠けるが、前走の好状態をしっかりキープしながら長距離仕様に仕上げ。
 昨年4着だった大阪杯には向かわずに、日経賞を使ってここに出てきたというのも良さそうで、一年たって競走馬としての完成度は増した今、昨年5着からの上昇があっても良さそう。
 ……好きな馬ゆえに若干の贔屓目が入っている可能性はある。

【まとめ】

 もう今回はとにかくサヴォーナがCWで仕上げてくれたことが非常に嬉しいというのが素直な気持ち。やはり長距離戦に向かう仕上げ方としては如何にリラックスした状態で本番に迎えるか。そこまでタイトではない中盤で如何に消耗せず最後の直線まで足を残すことが出来るかというのが重要だと思うので、これまで結果の出ていなかった坂路好時計から切り替えてくれたのは非常に嬉しい。それもサヴォーナ自身ここは勝ちたいという勝負度合いが高いレースではこれまで坂路好時計だったところから今回切り替えてきたというのはかなり面白い。よっぽど外枠になったりしない限り◎を打ちたいという気持ちになっています。
 人気サイドではやはりドゥレッツァは逆らいづらい。こっちは揉まれるよりは気分よく外を回せた方がよさそうにも映るのであまりうち過ぎない5~6枠くらいならば。
 穴で面白そうなのはスマートファントムですね。長距離戦は初めてではありますが一発回答もあり得そうなステイヤー然としたスケール感ある動き。神戸新聞杯で上がり32.9を引き出した岩田望来騎手への乗り替わりも展開次第ではと思わせる。
 逆にテーオーロイヤルはやはり使い詰めな分ここでの上昇は期待しづらそうですが、そこまで大きな出来落ちという感じもせず充実度でどこまで走ってくるか。ここの扱いが馬券を組む上では重要になりそうですね。
 触れなかった馬は基本的にはあまり良くは映っておらず、ブローザホーンが終い吉岡厩舎の定番調教から外れたうえに終い失速ラップというのはちょっと評価が下がります。
 あとは枠順と土曜の馬場状態含めて結論までじっくり考えたいとは思いますが……サヴォーナ、サヴォーナですかねぇ……

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