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ウェディングジャーナル連載_Vol 3  新規セールス改革

※本記事は2023年にウェディングジャーナルに連載した記事です。

連載テーマ:ブライダル業界に於ける「次なる改革」

新規セールス改革


第3回は"新規セールス改革をテーマとします。コロナ禍がもたらす影響、マーケットのシュリンクなどのネガティブなテーマに対して、このコラムを通じて、明日へのヒントを見出していただけるお手伝いが出来ればと考えています。

本稿「新規セールス改革」のアジェンダ
(1)「来館前」セールス(来館率・期待度を高める)
(2)「成約率」の向上
(3)「数値管理」とは?

新規セールスがテーマになる際に「集客」を多く取り上げられます。HP・SNSの整備、ビジュアルの改編は、もはや多くの方が実行しなくてはならないと思っている点ですので、今回のテーマからは除外しました。※また別の機会で「実際に効果を生んだ集客」についても寄稿したいと考えています。

(1)「来館前」セールス(来館率・期待度を高める)

ブライダル業界では成約率が主なテーマに挙げられましたが、今後激化するトピックスは「来館前セールス」になると予測しています。
現在、来館前のセールス活動に関して、様々な企業の現状を見ると、以下に分類されます。
①   予約以降何もやっていない
②   予約以降、メールは送る(開封しているかは未確認)か、少し電話している
③   予約以降、電話でセールスを熱心に行っている
④   予約前から動向を追い、予約以降は自動配信ツールと電話を効果的に織り交ぜている。

●MAツールの活用
来館率と成約率が高く、コロナ禍に於いても過去ギネスを記録するような企業は、軒並み③④の状態にあると感じています。本コラムは「次の一手」をテーマにしていますので、敢えて断定的な言い方をしますが、今後MAツール(Marketing Automation)活用は、今後不可欠だと思います。これは、来館率合戦がより激化するだけでなく、工数の問題も避けては通れないからです。来館前の期待値を、最小工数で高めることが出来て、他社との差別化に繋がっていれば、自ずと来館率・成約率は向上します。また通信速度の向上は、世の中の広告を今後静止画から動画へシフトさせますが、ブライダルこそ、動画でのアプローチが今後のキーになっていくと思われます。

●来館率を高める施策
(※以下では、来館特典で何か差し上げる等の飛び道具的な施策は言及しません。)
来館率は、成約率ほどの大きな数値の変化はありません。しかし、その5%~10%の変化が、大きな業績の進化をもたらします。その為に出来るコトとして、
・顧客のニーズに沿った個別化された動画・写真配信(先述MAツールの活用)
・定期的なリマインド(予約時・来館日2週前・1週前・前日の自動連絡)
・双方向コミュニケーション(顧客のニーズを聞ける、そして価値を伝えられる仕組み)
・午前中の来館シェア拡大(受入れの枠数・体制の最大化を企業全体で取り組む)
・即時対応(顧客対応がシームレスに、待たされるなどストレスなく行われる)
などのアクションの積み重ねと工夫により、実際に来館率は高まります。

(2)「成約率」の向上

●来館前に差別化を図る
多くの方が「来館時の意向度が、もの凄く高いお客様」を経験されたことがあると思います。要はこの状態を、今後は来館前にいかに多く創出できるかが極めて重要になります。事例を挙げますと「宿泊施設・便利」という特徴だけではない新たな武器を訴求し始めたあるホテルでは、実際に来館直後のアンケートで、第一希望という割合が劇的に増加し、連動して来館率・成約率も向上しています。「業態」だけの差別化は難しくなり、来館前の差別化が今後益々重要になっていくと予測されます。
また、コンセプトや提供価値を磨き上げるだけではなく、それをどのように発信するかという意味において、SNSの活用も重要になります。顧客の立場で考えたときに、予約した式場のHPはもちろん、SNSも確認する方の割合は高いです。今、この記事をご覧になっている方への質問です。
・貴社のSNSは何を使用しようしていますか?
・何を目的としてSNSの発信を行っていますか?
・SNSを担当する方は、明確に決まっていますか?

●今までの当たり前を「進化」させる
成約率の進化に繋がった施策を幾つか紹介します。
・脱スクリプト(台本)接客
ブライダル業界で、代表的な存在になったスクリプトの活用ですが、今でも有効な一手だと感じていますし、強みをしっかり抜け漏れなくという観点に於いては、今後も必要になってきます。しかし一方で「顧客の個別化」が蔑ろにされているような違和感があります。「顧客の個別化」により、もっと信頼は高められます。私は、人材開発・研修の分野で他業種のコンサルティングも行っていますが、ブライダル業界の方々は、圧倒なコミュニケーション力を備えていると感じます。研修などでコミュニケーションの構造を会得してしまえば、他産業の方と比較して圧倒的な進化を遂げるコトが出来ると思います。

・現状の見直し
今行っているオペレーションやツールよりも効果的な一手は、必ず存在します。私もその提案(視察)の為に、土日に各地の会場に呼ばれることもありますが、これは、本来自社内でも出来るコトです。
例えば・・・
・アンケートを来館してから書いていただくのではなく、事前に入力していただければ、
接客時間が長くとれるし、接客者の調整も更に効果的に出来る。
・朝礼をよりコンパクト、効果的に行えば、清掃時間を増やせる。
・土日見学時の状態が、ベストな状態で無いのであれば、引出物を配送にすることで改善。
・粗利改革をおこなえば、他施設に比べて、価格の優位性を生める。
・強みの訴求が伝わっていないので、動画を保管ツールとする。
・成約説明は動画にすることで、昼休憩で英気を養える。
等、アクションは無数にあります。
「否定ではなく進化」という観点で、現状の見直しをしてみるだけでも、おそらくメンバーの皆さんから多数のアイデアが寄せられると思います。

(3)「数値管理」とは?

ブライダル業界の方に「数値管理とは?」という質問をさせていただくと、多くの方が「実績の取りまとめ・分析」と答えられます。数値管理をテーマとしたのは、その考え方を変えるコトこそが、セールス改革に必要だからです。
数値管理とは仮説設計・検証・分析・改善の一連の工程であり、事実の羅列ではなく、成果を変えるコトが数値管理です。

●ターゲットの明確化
まずは「ターゲットの明確化」が重要になります。マーケットの大きさや業種にも拠りますが、一般的には、3つのターゲット設定が効果的だと感じています。ポイントは、これまで来ていた顧客が多いからなんとなく・・・というよりも、マーケットの中で自社が取るべきポジション・支持される(勝てる)成約理由を基に設計することです。

●今後抑えておくべき数値
今後セールスで抑えておくべき数値を、下記に記載します。一般的な「来館数・成約数・成約率×媒体ごと」「見学順」などは抑えている前提として、今後は下記の数値管理が重要になります。
・問合せ数(組)
・来館率(%)
・ターゲット別 問合せ数(組)・シェア(%)
・披露宴・会食比率(%)
・成約単価/成約人数/成約時利益額(率) ※来館時のマネジメントは前号にて

●問合せ数と来館率
自社の平均問合せ数(来館予約・資料請求数など含む)は何組で、来館率はどれくらいかを、来館数・成約率の平均と同じくらいの感度で答えられる方は未だ少ないようです。
例えば、とある地域の大型ホテルでは、この2年間で来館率が15%上昇しました。月間100組の問合せと考えると、来館数が月間15組、年間で来館数が180組も変わることになります。現在、それほど着手されていないとすると、効果は充分あり得ると考えられます。

●成約単価/成約人数/成約時利益額(率)
かつては「結婚式=大人数が主流」であり、その為、単価よりも成約の獲得という状況でした。現在、人数が減ることに拠り、利益額が大きく減少して、経営に大きな影響を与えるようになりました。もちろん、人数帯の大小は、経営的観点で重要なのであり、列席人数の大小に関わらず、たいせつな一組に変わりはないことは敢えて記載しておきます。

●披露宴・会食比率 の設計・マネジメント
「大人数・少人数婚礼の比率」も重要です。成約数だけを追うのではなく、設計した通りの比率であり、受注数の内訳になっているかどうかを追っていくことが、今後必須になります。
企業側からの仕掛け・取組みがあってこそ、比率は変わっていきます。「結果的に成約人数が多かった・少なかった」ではなく、どうすれば「この人数帯に●組ご成約をいただくことが出来るのか?」という観点で設計し、実績を追いながら修正し続けるコトが重要です。実現させる為の具体策には、大人数顧客が流入しやすい媒体の選定、それに伴う広告の写真やコピーを考案、更には大人数のパーティレポートの訴求強化、或いは披露宴時間自体の見直しを行い受注しやすくするなどの施策が必要になります。

明日からの進化のヒントになるコトを願っています。(終)

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