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映画『窓際のトットちゃん』と静かな戦争

日曜日に、息子さんが
「また『トットちゃん』が見たい」と言うので
公開初日につづき2度目の鑑賞へ

公開初日は平日で、
見に行ったのが18時過ぎからの回
ということもあり子どもは少なめ
全体的にもわりと席が空いていた

日曜は、13時半からの回で鑑賞
かなり子ども連れが多かったし
ほぼ満席に近かった

窓際のトットちゃんの舞台は実家に近く
親しみがあった
母がいわさきちひろの絵が好きで
そのイメージがあったが
本の内容はあまり記憶になかったし
その時代背景もまったく記憶になかった

トットちゃんのお家は洋館で
とても生活が洋風でお洒落なのが印象的

父親がヴァイオリン奏者ということや
母親がクリスチャン
(母の祖母が敬虔なキリスト教徒であった)
ということも影響しているのかも知れない

正確には、父方の祖父もクリスチャン
父方も母方も祖父は医者で
やはり教養があると言うか育ちが良いと言うか
全体的に庶民とはちょっと違った印象

母である朝さんの本では質通いの話があったり
金銭面では裕福ではない記述がありましたが
服装や生活用品、赤い屋根の洋館の内装など
とてもそのように感じないくらいお洒落だし
精神的にはかなり豊かだったように感じます

お友達の泰明ちゃんにしてもお金持ちそうだし
すでに戦争が始まっているのに
葬式が教会で行なわれているのも違和感でした

なにせ、第二次世界大戦と言うと
「欲しがりません勝つまでは」とか
〝鬼畜米兵〟というステレオタイプの
イメージだったので、、、
野球も用語を日本語に変えたりとか
服装もモンペとか和装で
質素で地味なイメージだったので
トットちゃんやお母さんのお洒落な洋装が
とても違和感があったのです

それもそのはずですね
第二次世界大戦と言えば空襲のあった末期を
イメージしていたからなのでしょう

開戦4ヶ月で空母艦船から空爆があったが
本格的に本土に空襲を受けるようになるのは
開戦から数年後にマリアナ・パラオ諸島の戦い
に勝ったアメリカ軍がマリアナ諸島に
大規模な航空基地を建設した後からの
出来事だったからですから

映画では、開戦のラジオ放送を受けて
トットちゃんのお父さんが
「これからお父様お母様と呼びなさい」と
パパママと呼んでいたトットちゃんに言います

しかし、しばらくの間、生活ぶり自体は
大きく変わる事はありませんでした
海外や戦地に軍隊を派遣するスタイルの戦争
だからだったんだと改めて思いました
(日本が島国だった故に当時の航空技術では
 すぐに本土は襲撃されなった)

まず、当初の頃の戦争による市民への影響は
贅沢や華美な格好を規制し
質素倹約を求められる
戦争を支えるための国債購入
軍国主義的な洗脳教育をされるといった
直接的には命の危機にさらされないものばかり

飽くまで戦争は
軍人がしているものだったのです

映画のトットちゃんを見て
あまり知らない言葉がいくつかありました

その中に、
「じゅうご」と言う言葉がありました

「15」?

いえいえ

「銃後」です

銃後【じゅうご】
戦場の後方。また戦時中、直接の戦闘に
加わらないで前線の背後にあって
これを支援すること。
また、その一般国民および国内をいう。


〝兵隊さんがお国の為に戦っているのだから〟
戦況の悪化と共に徐々におとずれた
物資や食料不足による飢えなどを
我慢しろというような精神ですね

映画でも、徐々に戦争の色が濃くなるのを
周りの変化で感じる事ができました
国防婦人会の行進だったり
街灯での千人針や出征の風景だったり
横文字の看板が漢字に直されていたり
国債をすすめる看板やポスターなど
徐々に徐々に戦時色が濃くなる様子が
登場人物の背景として描かれているのです

買えていたキャラメルの自動販売機が
お金を入れても買えないのを不思議に思い
お金を見つめるトットちゃんだったり

切符売りのおじさんが女性に変わっていたり

子供によって、それぞれ個性的だったお弁当が
画一的にご飯に梅干しだけの日の丸弁当へとなり
最後は、袋に入れられた数粒の煎った大豆だけに

紙にインクがジワジワ染みるように
戦争が市民の生活を苦しめて行くのが
丁寧に描かれています

クライマックスに近いシーン
仲良かった泰明ちゃんのお葬式会場である
教会からトモエ学園までトットちゃんが
走る途中の風景には、さらに戦況が厳しくなり
負傷兵や戦死した息子の骨壺を抱え泣く
母の姿が描かれていたり
防毒マスクをつけて戦争ごっこに興じる
少年たちの姿が描かれていたり

親友の死だけでなく
戦争の恐怖や戦争による死から
トットちゃんが逃げているかのような演出は
とても印象深くなっていました

もし、息子さんがまた見たいと言ったら
次はもっと背景の描写の映り変わりに
注視して見たいかなぁと思います

職業病的にコマを止めてみたいくらい
緻密に描き込まれている〝静かな戦争〟

もちろん〝静かな戦争〟だろうと
戦争は嫌なものではあるのだけど

しかし、今起きているガザの状況を鑑みると
ある意味、あるべき戦争の形な気もします
(海上での艦船同士の戦いなどは…。
 戦争はしたい人がしたくない人に迷惑を
 かけない所で勝手にやって欲しい派なので)

例え、〝軍事拠点がある〟と言う
大義名分があっても
人々が生活する市街地にいきなり
空から爆弾を落とすのは
とても賛成できるものではありません