小西マサテル『名探偵のままでいて』を読みました。

本というのは不思議なものです。
ちょうど認知症になった身内をなくしたときに読むのが、この本だったなんて。

主人公の祖父は、元校長先生で71歳。
まだまだ世間では若いと言われる年頃でしょう。
認知症にならなければ、余生を楽しむこともできたのではないかと考えてしまいます。
でも、不条理にやってくる病気は、そんな予定なんか壊してしまうんですよね。

主人公の周りの不可思議な事件を、次々に解決していくおじいちゃんが素敵でした。
「楓はどんな物語を紡ぐかな」
という言い回しも好きでした。
そして、マドンナ先生が失踪した話の時
「物語は面白くなければ意味がない」
といった、シリアスな中にも面白さを求めるユーモアさもかっこいいと思いました。

私も認知症の身内を見てて、知を失うことの怖さを感じました。
知がない自分を想像すると怖くなりました。
でも、そこに向かうことは抗えないのだと虚しさでいっぱいになりました。

主人公と祖父の時間が、長く続いてほしいと本を読みながら願ってしまいました。

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