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純度100%の不安

知らない街で、私は途方に暮れていた。

逃げて逃げてたどり着いたその街は、石造りの古い洋館が3つ複雑にからまりあい、駅と複数の宿と雑貨屋と飲み屋街を飲み込んで、レトロな雰囲気をまとった立体迷路の様相を呈していた。

3つの洋館の一番奥のデパートに母と妹を残し、私は今日の宿をとるべく隣の建物に向かった。そこが破格の安さで3人泊まれることを妹が調べてくれたのだ。いつまで逃亡するかわからないので、お金はかからない方がいい。

薄暗く長いトンネルの様な連絡通路を抜けたら隣の建物かと思いきや、どうやらさらに奥の建物に突き抜けてしまったらしい。

向かう先々の通路という通路はうねり、エスカレーターや階段は不規則に現れるもののつなぐ階数や方向がばらばらで、おまけに通り過ぎてから引き返すともうそこにない。せまい通路ですれちがうひとは皆日本人ではなく、現在地を示すものはなにもなく、妹と母がどちらの方角にいるのかもわからなくなった。

2階から長い長い階段を上がるとそこは地上で、大通りに面しているテナントはすべて廃墟だった。立ち入り禁止のロープがあちこちに張られ、明かりの消えた薄汚れたショーケースの向こうに、乱雑に置かれたままの洋服や雑貨が見えた。3つ並んでいるはずの石造りの古い洋館はどこにもなく、そこは背の低いビルがぽつんぽつんと建っているだけの場所だった。

目の前で小さな電車が走っていく。電線の向こうの空はグレーがかったピンク色で、夜がせまっていることを知る。
みんなどこにいるのだろう。私はどうなるのだろう。これからどうするのだろう。どこへ向かえばいいのか見当がつかないまま、純度100%の不安に包まれてそこに突っ立っていた。

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今日一日、眠くて眠くて仕方なかった。夕方帰宅して少し眠ったらこんな夢をみた。頭はすっきりしているけど気持ちはまるですっきりしない。私に妹はいないし、逃避するほどせっぱつまっていることは何もないけれど、これは今の私の心の状態なのだな、ということはわかった。
にしても怖いわ!!
うまく夢で消化しようとしてくれている健気な営みとはいえ。

そういえば、迷っている最中に出川哲郎さんの家に寄って助けを乞い、途中道案内をしてもらった。そしてよけいに迷ったのだった。

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