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反動

「おしとやかさ」を求められる場所が苦手だ。普段からがちゃがちゃして無駄が多い自覚があるので、どうしてもなじめず息が詰まる感じがする。地声がでかいので、本来出したい声の大きさが出せないと動きも委縮し肩も凝りがちに。

催事のヘルプで呼ばれ、格式が高くて厳かな(と勝手に苦手意識を感じる)百貨店にしばらく通った。カジュアルな服装でいいっすよ、という誘い文句につられ、好きな服を着まくれると思いウキウキ乗ってみたのに、話が全く違ったのだ。時すでに遅し。フォーマルが死ぬほどいやなんで、と辞退するわけにもいかず、コスプレだと思って2週間ほど通った。仕事は楽しかった。

店内はしっとり落ち着いていて、整えられていて、美しいものがずらりと並んでいる。働くひとたちは一様に優しくて常に微笑んでいて良い人ばかり。お客様は、上質なものは高くて当然と思っているようで値切らないし(というか値段を見ない方もいる)、いつもゆったりとして時間に追われていない。

でもどうしてだろう、とてつもなく居心地が悪かったのだ。

普段いる場所みたいに、急かされてイライラしている人がいたり、しょうもない理由で誰かがいつも怒ってたり、ちょっと意地悪な人がいたり、知らない人の愚痴を延々聞かされたり、多少汚れてたり散らかってたりしている方が、なんとなく落ち着くなと思った。百貨店は非日常を味わえる場所でもあるから、あそこが悪いわけではなくて私自身との相性だと思う。
人間臭い雑味が適度にある中で、まあしょうがないよね~と思いながら、たまにちょっと巻き込まれてイライラさせられたりしながら、気分転換したりその中で楽しめることを探したりして進んでいく。基本的にうすーく憂鬱さが漂うのが日常で、だからこそ目にとまるきれいなものが際立って見えるし自分のアンテナを嬉しく感じる。そういう、見通しがよすぎない空間の方が、私にとっては結局呼吸がしやすいんだろうなと感じた。

普段の自分らしさを封じて過ごしているうえ、残業でレッスンにまともに通えなかったのでフラストレーションがたまりまくり、さまざまな反動が現れた。

暴飲暴食はもとより、疲れすぎて帰ってきたそのままの身なりで朝までソファで眠ってしまうこともしばしば。おかげで肌ががさがさ。
夜になると部屋の模様替えがしたくてしたくてたまらなくなり、睡眠を削ってDIYに時間を費やした。
時間のかかるマクラメ編み(リリヤンみたいなやつ)を完成させるまで寝なかった。
自炊が出来なかった分、時間と手間のかかる料理にのめりこんだ。
きれいに並んでいるものに飛び込んでぐちゃぐちゃにしてしまいたくなり、自作自演でそれが出来るドミノを買った。

合間合間にピクニックや観劇予定がはさまり、それぞれがご褒美のような時間だった。

件の仕事が完パケしたばかりで、反動はまだ続く。 これを書いたら植木の植え替えをしようと思います。



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