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hl
2015年6月19日 02:08
出てきた家が集まって遠くでもう町になっている同じ本をいつまでも読んでいるいつでもはじめのページから同じところを読み返している夜になるとひとつも欠けずに遠くで窓が点灯する華奢なつくりの栞を持っていてあの町のどこかになくしてしまった
2015年6月19日 02:22
世の中をお母さん お母さん お母さん お母さんと掻き分けていくと、結局なんにもない
2015年6月19日 02:25
スペードの8、パン屋の前のブレーキ痕ダイヤの13、目をつむって開いたページの感嘆符ハートの6、バターナイフの握りのレリーフクラブの4、砂場で見つけた黒いビニール片
2015年6月29日 11:48
触れた瞬間息を飲む冷たさはくっきりしていて頑丈な気がするのでその町では誰も彼も本当に寒い夜になると知らないひとの凍える指先を探して自分の体温であたためられた懐かしい毛布を残らず燃やしてしまう川の対岸では隣の町の厚着したひとたちがめいめい手をつないで音を立ててはぜるまぶしい孤独を見ている
2015年7月3日 20:58
わたしの) 庭わたしの) 蜘蛛の巣わたしの) 木わたしの) 空と鳥わたしの) 線路通りわたしの) 野良猫わたし ) 水たまり ) 靴音 ) 35.9 )
2015年8月28日 16:00
鈍く冷える火の名残りを尾羽の先に滲ませたまま、ひしめくクライマックスに架かる歩道橋の遥か頭上をあなたがゆっくり帰っていった
2015年9月12日 20:08
夕焼けの雲の映る窓がありたわむ電線の映る窓があり黄色い街灯の映る窓がありわたしの窓にはわたしがいて向かいの窓に跳ね返る、細い細い月明かりでりんごの皮を長く長く剥く