夢 -0113

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 折りたたみ式の小さな机に向かって、正座して弁当を食べていると犬が帰ってきて、見ると赤い曼珠沙華を一輪くわえている。座った形をしている、と横からだれかの声がして、相づちを打って私はそれを机の上に置き、いつの間にかまた小さな陶器になってしまった犬も、手に取ってくるりとそちらへ向けてやる。
 母が来たので半分ほど中身の残った弁当箱を差し出して、里芋の煮っころがしと肉じゃがを指さして、これがもうあのひとの作っておいてくれたものの最後だから、と言って私はしきりと勧めている。言いながら私は追い詰められるような気がして息苦しくなる。
 じゃが芋の上のさやえんどうだけが、晴れ晴れと緑色をしている。

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