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『父、帰る』(2004/ロシア)

だいたいどれを観ても「暗い、悲しい」後味に定評があるロシア映画のレビューです。『父、帰る』は2003年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、新人監督賞など、他にもとにかく沢山の賞を受賞した評価の高い映画です。

まずはあらすじ。母子家庭の二人の少年(兄弟)と、12年ぶりに突然帰ってきた父親との小旅行を描く家族劇である。兄弟は中学生ぐらいなんですが、写真の父しか記憶にないようです。その父が何の前触れもなく突然帰ってきて、特に嬉しそうにするわけでもなく、一家に加わります。

さあ皆さん、想像してください。12年も疎遠になっていて、ほぼいないことになっている家族が急に帰ってきて、何の脈絡もなく家族の一員として日常生活を送る事を。
父性の塊のような父であり、少し恐怖感もあります。そんな父が帰ってきたら困惑しますよね、パワーバランスが崩れますよね、劇中も予想どおり家庭はギクシャクします。

結局、劇中では父が12年間何をやっていたのかは明かされません。何やらカタギの仕事でないような事をやっている描写はあるのですが分からずじまい。そんな怪しい父はいきなりサバイバル旅行みたいな事を企画して、有無を言わさず兄弟を連れていきます。
家長かもしれませんが、いきなり帰ってきた父にそんなところに連れ回されても困るので弟のイワンは反抗的になります。兄は父に認めてもらおうと好意的にするのですが、、、

前半は空気が悪い感じで進みます。後半でなんと無人島に行くわけなですけど、ここからが見ものです。気に入らない父親に対して兄弟はどう対応するのか、また父はどのように対峙するのか。
兄弟は中学生ぐらいなので思春期です。父親によって感情をあっちに持っていかれ、こっちに持っていかれ、振れ幅大きく揺り動かされます。思春期にこんな強烈な体験をしたら、今後の人格形成に大きな影響を与えそうですし、自分だったら気持ちの整理が追いつかずに思考停止するんじゃないかと思います。
でも何かが変わる時って、こうやっていきなり変わるものだとも思います。

一言で例えるなら、「ロシア人監督による暗くて悲しいスタンド・バイ・ミー」ですね。思春期の成長映画の側面もあるので、そういうのが好きな方はお国柄を楽しみながら見て観てみてください。

(面白さ:★★★★★★☆☆☆☆)

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