見出し画像

if i could write poetry

ここ2年くらいで書いた歌詞の置き場に困っていたのでnoteにまとめておく。ほぼ活動停止状態ではあるが、一応音楽活動らしいことをしていないわけでもないという証拠でもある。曲としてほぼ完成しているものを載せているが、陽の目を見ることになるのかはHAMADA次第です。※50音順~



川辺に座って


生まれ変わることがあれば
またこの場所に足を運ぶ

川辺に座って空を仰ぐ
トンボの羽音に身構える

生暖かい風が連れてくる
水の匂いが生々しい

川辺に座って息をのむ
トンボの羽を引きちぎる

よくよく思い返すと
素晴らしい旅をしたことも
いくつかあったでしょ

子供の頃のことを考える
手元には止まったままの腕時計

川辺に座って息を吐く
トンボの羽を陽に当てる

川辺を下って石を投げる
トンボの羽がキラキラ光る


記録係


記録係は君のことを君より知っているんだ
紙に書いた記録が風に飛ばされて
知らない誰かの足元にひらりと落ちたとしても
悪い気持ちにはさせない記録係

記録係は君のことを君より知っているんだ
よく知らない顔見知りが当たり前のように
無言でカメラを向けている
それをよく思えない気持ちを文字か絵に記録したい

記録係は君よりも頭がいいそんな気がするんだ
傷を広げるアイデアがあふれ出して止まらない
そんな風にならないと思える
自分自身を疑え
鉛筆を手に取って
本当の名前を強めの筆圧で
刻み込め
記録係


最後の家


目の前にちらついた雪が睫毛に降り積もった
報告されることのない祈りについて考えている

壁を覆う蔦のように
夜が空の色をゆっくりと隠そうとする

最後の家に灯りが点くなんて
二階の窓はまだ黒く塗られていなかった

見当たらないということは君が居た証拠なんだ
一人づついなくなるこの場所を街と呼ぶべきなのか

屋根に伸びる蔦のように
山の向こうにゆっくりと月が昇る

最後の家に灯りが点くなんて
二階の窓はまだ黒く塗られていなかった

川沿いにただ一つだけ四角い家が建っている

最後の家に朝日があたるなんて
二階の窓はまだカーテンが閉じられていた

ここにいるということは取り残されただけなのか
天気のせいで痛くなる傷跡が増えただけなのか


断線


何か大事なことを話しているに違いない
ラジオの音が昨日よりもよく聴き取れない

定期的に切れる線が
次の回路で立ち止まる
行けたら行けるあの場所が
また少し遠くに

何か大事なことが決まったに違いない
隠し事ができない人が迂闊に口を割る

定期的に切れる線が
次の回路を見失う
水に氷を足して
汗が引くのを待つ

悪気のない噂が回っているに違いない
人当たりのいい顔に言葉を飲み込んだ

繋ぎ直した線が
次の回路にはじかれる
肺に溜めた古い空気
何処に吐けばいい

鞄の中で複雑に絡み合った線を
ほどくための指が10以上あれば

つきまとう


今ならわかる
火をくべるべき場所
多くを見落とした
過去は死んではくれない

君の心につきまとう歌が
あるのだとしたら
気付いているのなら

最寄りの砂漠に
運ぶ水を飲みほした
耳元の紐に
冷たい汗が染みわたる

君の心につきまとう歌が
あるのだとしたら
気付いているのなら

鳥が鳴いて目を覚ます
朝昼晩耳を澄ますことがふえる
足音が迫る

君の眼がつきまとう歌が
いくつかあった
わかってたことなんだ

軽く思い出した
旋律を追いかけた
今ならわかることが
飾り付けてあった


BUS STOP


市バスで通院したいところだが
踏み出す足の力が抜ける

あの橋の真ん中にある
バス停を家の前に置いてくれ
傘を忘れたとしても
雲の動きが気にならない

通り過ぎたことのないカーブが現れる
おかしな車が道をふさいでいる

よく喋る運転手が
交通マナーを説いている
錆びついた時刻表が
雨の多さを物語る

暖かい背もたれと眠気を奪う悪い知らせ

ガタガタした道が古いタイヤに抗う時
街の背骨の位置が少しずれる

次で降りるボタンを押した
君の行先は霞んで見える
肌が焼ける季節になったら
バス停に傘を立てかける


本が上手く読めない


本が上手く読めない頁から離れていく気持ち
壁にぶつかって落ちる視線が幾重に積みあがる

本が上手く読めない値札が綺麗に剥がせない
指の腹をくすぐる帯をなくすわけにはいかない

本が上手く読めない
鼻先をくすぐる
古いインクの匂い
本が上手く読めない

本が上手く読めない殺し屋はまだ殺されてない
胸が躍るミステリータイトルの意味が分からない

本が上手く読めない郵便配達がやってきて
2度以上ベルを鳴らす今日は相手にしたくはない

本が上手く読めない
陽に焼けた背表紙
紙魚の手帖は薄い
本が上手く読めない

本が上手く読めない通い詰めた古書店
カビの匂いが鼻を衝くと栞がひらりと抜け落ちる

本が上手く読めない何物にも代えがたい
気持ちの送り主が棚に乱れて横たわる


窓の縁


地球最後の日ふと目に映る
埃だらけの窓の縁

明日に別れの口づけを交わすと
アルコールの匂いが強い

ジャケ写のような朝焼け
目に焼きつけている

縮みゆく男のように弱きをくじく
残された逃げ場は窓の縁

ガラスの向こう側で蠢く
鴉が闇夜に紛れようと企む

ジャケ写のような夕景
胸に迫りくる

鞄の中に詰め込んだ
本の続きはうわのそらだ
心の奥の方にまっすぐ立つものが
倒れだしたんだ

網戸をすり抜けて
激突する強い風
鍵が上手く掛からない窓の縁

羽を休める鳥や虫が屋根を彩る
私がしてしまったことが
沁み込んでいる窓の縁

レインコート


地下街を歩く二人は
何を食べたいのかもわからない
騒がしい足音が
天井に跳ね返る

君の身体に丁度いい
雨具が家のどこかに眠っている
好きな色すら答えられない
君に相応しい

いろんなものが混ざった雨を浴びておかないと
余計なものがわからない
大事なこともよくわからない

地下街には昔のことが忘れられない
人が集まっている
ひこうき雲
浮かんでいることも気に留めない

階段を上手く登れない時期が
ようやく終わりに差し掛かる
雨具のフードを地上の風が
粗く出迎える

いろんなものが混ざった雨を浴びておかないと
余計なものがわからない
よからぬことも思い出せない

心地よく秘密めいたところに置き忘れた
折り畳み傘の柄は持ちづらい
雨宿りがしたい

余計なものが混ざった雨を浴びておかないと
いろんなことがわからない
悪魔の顔も見分けられない
雨具の色も決められない


輪切りのわたし


白が白らしくない
不穏な形 輪切りのわたし
すべての原因
隙間と隙間が埋められる

あまり触れてはいけない線に触れてしまった
脳の言うことよく聴こえないまだ聴きづらいんだ

眼鏡の奥の目
眺めているわたしの輪切り
耳の奥で笑う鼻
夢が悪い悪い夢だ

手すりに触れた指が冷たい指が汚れる
脳の言うこと軸足が聴こえない振りをするんだ

君はビョーキの味方であれ

笑ってはいけない
かわいそうな輪切りのわたし
古い記録媒体
封じ込まれたわたしの輪切り

輪切りのわたし

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?