見出し画像

輪廻する宇宙(3)

横山順一著『輪廻する宇宙』の構成は下記の通りです。今回は第一章の続きを描きます。

  • 序章 輪廻転生とは何か 転生者の捜索と科学の方法

  • 第一章 宇宙の中味をさぐる

  • 第二章 宇宙観の変遷 偏見からの解放

  • 第三章 加速膨張宇宙の謎

  • 第四章 ダークエネルギーの正体

  • 第五章 宇宙のはじまり

  • 第六章 宇宙の将来

  • 終章 ダライ・ラマとの邂逅

第一章 宇宙の中味をさぐる②
ビッグバン元素合成

現在の宇宙の約28%を占めるヘリウムの大半は、ビッグバン宇宙の初期に求められる。

ビッグバン後1秒当時の宇宙は、高いエネルギーを持った多数の光子とニュートリノが飛び回り、その中にごくわずかの陽子と中性子がぽつぽつと存在しているような状態だった。

ビッグバン宇宙初期の元素合成は、陽子と中性子を融合させてまず重水素を作るところから始まる。重水素は水素と同様に化学的性質を持つ陽子1個と中性子1個からなる原子である。同様に陽子1個と中性子2個からなる原子を三重水素という。その後次々と核融合反応が起こりヘリウム4が生成する。

こうしてできたヘリウム4ができた後はどうなるか?

実はビッグバン元素合成はこの段階でほぼ止まってしまう。

何故か?

この次に起こるべき反応は、ヘリウムに陽子をぶつけてリチウムを作る反応か、ヘリウムどうしをぶつけてベリリウム8を作る反応ということになる。核子の数でいえば5か8を作るということである。

しかし、核子の数が5または8の安定な原子核は世の中に存在しない。ヘリウム4があまりに安定した原子核であるために、反応が進まないからである。

この原子核の持っている固有の性質がなかったら、ビッグバン元素合成は、もっとずっと重い元素まで突き進み、原子核として最も安定な鉄となる。

もし仮に宇宙のはじめに中性子が全部鉄の中に取り込められていたら、そうなれば、ガスを固めて星を作ろうとしてもこれ以上核癒合を起こすことができないので、夜空に星はなく、星のないところに仮に地球のような惑星があったとしても、文明を営むような生命体は存在することができなかったであろう。

恒星の最後
恒星の最終的な運命は、その質量と伴星の有無、つまり太陽のように孤立した恒星として存在しているのか、それとも二つの恒星がペアをなして重心の周る連星系をなしているのか、その違いだけで決まるといってよい。

白色矮星は、超高密度天体であり、連星系の中にあると、相棒の星から積り積るガスによって徐々に温度が上がっていくと、ある段階で炭素の燃焼が始まり、壊れた原子炉のような反応が起こる。その結果、炭素の爆発的燃焼波が発生し、星全体が吹き飛ばされてしまう。これをⅠ型超新星爆発という。

まとめる と、 ヘリウム より 重い 元素 の うち、 鉄 までは 恒星 の 中 の 核融合反応 によって 作ら れ、 それ より 重い 元素 は 星 の 進化 の 最終 段階 に 起こる 超新星爆発 の とき、 そして その後 に 残さ れる 中性子星 が ペア を 作っ て 最後 に 合体するときにできたと考えられる。地球上のすべての物質も、わたしたち自身の体も、もとをたどれば星の中でできたのである。

ダークマターの発見
光 だけで なく 電波 を 使っ て 観測 し たり、 光 の 観測 を もと に、 頭脳 を 働かせ て 銀河 の 動力学 の 問題 を 解い て みる と、 宇宙 には 実は 目 に 見え ない謎の物質が目に見える元素以上にたくさんあることがわかる。

このことをはじめて指摘したのは、アメリカの天文学者ツビッキーでした。彼は銀河の運動を分析することによって、銀河団内にどの程度に強さの重力が働いているかを見積もったのである。

重力の強さがわかれば、その元になっている質量の大きさもわかる。彼は光で見える質量のざっと400倍もの見えない質量があることを発見した。

円盤銀河の星は中心の周りを緩やかに回っているが、その回転速度から星に働く遠心力を求めることができる。銀河 の 外 に 向かっ て 働く 遠心力 と 中心 に 向かっ て 働く 重力 が 釣り合っ て 星 の 位置 が 決まっ て いる と 考え られる ので、 それ によって 銀河 の、 星 の 位置より内側にある部分の全質量を推定することができる。

さらに、銀河の外側にガスしかない領域の回転速度を電波によって観測することによって、より広い範囲の質量を測ることができる。

その結果、各銀河には星の持っている質量の10倍程度の見えない質量があることがわかった。これをダークマターという。まだその正体はわかっていないが、未知の素粒子であると思われる。

わたしたちは何でできているか
地球上の生命体はタンパク質によってできており、代謝によって活動するためのエネルギーを得ている。

そして、DNAとRNAという二種類の核酸によって同じタンパク質を作り、子孫を残していく。このタンパク質と核酸が含まれている入れ物が細胞である。

したがって、宇宙史の中で生命がいつ、どのようにして誕生したかを知るためには、タンパク質と核酸がどのようにしてできたのかを明らかにする必要がある。しかしながら、いまだに定説がないので大問題となっている。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?