ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ 『アンチ・オイディプス 資本主義と分裂病』(15)読書メモ

第三章 第十節 資本主義の表象

コードを解読する〔脱コード化する〕ということは、おそらくひとつのコードを理解し解釈することを意味しているとしても、それはさらにコードそのものを破壊し、このコードを古代的、民俗的、あるいは残滓的機能を割り当てることも意味している。この機能こそが、精神分析と人類学を、私たちの現代社会において二つの貴重な学にしている。


というのも公理系は、生身の内に書き込むことも、身体や諸器官に 刻印することも、人間に記憶を作りだすことも、まったく必要とし ないからである。 コードとは反対に、 公理系は、それ自体のさまざ まな様相において、実行、知覚、記憶といった固有の器官を見いだ す。 記憶は、悪しきものとなった。 とりわけ、もはや信仰は必要で はない。 資本家は、今日、誰もがもはや何も信じていないというこ とを嘆いているが、これはうわべだけのことにすぎない。

言語はもはや、信じるべきことを意味するのではない。むしろ、言語は、これからなすべきことを示す のだ。 ずる賢い、したたかな連中は、ことば半分だけでそれを解読し理解する。その上資本主義は、 身分証明書や分類用カードや管理手段をふんだんに用意しているにもかかわらず、身体から消えてし まった剣印を補うために、帳簿に書き込むことさえ必要としないのだ。 残っているのは漬物であり、 復古主義であり、それが今日的機能を果たしているにすぎない。

【 信用なら ない男が経営する会社でも、その株や社債が市場の取引で安定した価格で取引されれば、信用がある会社 になります。そういう状態を人為的に作り出すこともできます。 紙の上だけで存在する法人がありますね (仲正昌樹『アンチ・オイディプス入門講義)より】

対立は、階級と階級外との間、機械の手下たちと、機械を爆破し、歯車装置を爆破する人びととの間、社会的機械の体制と欲望機械との間、相対的な内的極限と絶対的な外的極限との間、お望みなら、資本家と分裂者の間にあるといってもいい。この両者は、脱コード化の水準においては根本的に親密な関係にあるが、公理系の水準においては根本的に敵対するのだ(十九世紀の社会主義者たちがいだいたプロレタリアと完全な分裂者との間に類似性が求められるのは、このためである。)


いわゆる社会主義国家は、生産の、生産の単位の、経済的予測の変容を前提としている、しかし、この変容がじっさいに行われるのは、それ以前にすでに征服された国家から出発することによってでしかなく、この国家も公理系に関する同じ問題の前に立たされている。剰余あるいは剰余価値に抽出、蓄積、吸収、市場、貨幣に関する予測、等々といった問題である。そうすると、事態は、プロレタリア階級がみずからの客観的利益に応じて勝利するか、それともブルジョア階級が国家の統制を守るか、いずれかであるほかない。プロレタリアが勝利するとき、作戦行動は、この階級の前衛意識や前衛政党の支配の下において行われ、その結果、官僚機構やテクノロジーに味方し、これらは「大いなる不在の階級」としてのブルジョア階級に匹敵するものになる。


いわゆる〈権力の人格化〉は、いわば、機械による脱領土化を裏打ちするひとつの領土性なのである。現代国家の機能が、脱コード化し脱領土化した流れを調整するということが真実なら、この機能の主要な様相のひとつは再領土化を行うことによって、脱コード化した流れが社会の公理系のあらゆる末端から逃走しないようにすることである。

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浅田彰著『逃走論』より、コード化、超コード化、脱コード化について、参考用として引用する。

「コード化の段階においては、《社会体〉としての大地の上に欲望の流れがはりついている。つま り、属化されているわけですね。ところが超コード化の段階になると、いったん脱属領化が起こ り、欲望の流れが大地から離れて高みへと上昇し始める。しかしながらそれはかなたに存在する超 越者としての王の身体という《社会体》の上に再属領化されるわけで、いわば王を頂点とするビラ ミッドのようなかたちの布置が作りあげられることになります。

さて、近代資本主義は、徹底した 脱コード化にともない、すべてをいっぺん脱属領化する。しかし脱属領化された流れを多数多様な かたちで散乱させるのではなくて、みずからきわめて動的なかたちをとるにいたった《社会体》で あるところの貨幣=資本の流れにたばねていく。そのために、いったん無効になったはずのさまざ まな領域性をパッチワークのように組み合わせて、堤のようなものを作るんですね。こういう整流 のための再属領化において最も重要な役割をはたすのが、エディブス的家族という領域性だというわけです。

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