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「療育」ってなあに?【前編】〜そもそも療育とは〜

最近のご質問の中に、”療育に通っています””療育先の探し方って?”等、「療育」ということばが見られるようになってきました。
 
私は、相談支援専門員として、日々、就学前後のお子さんを持つ保護者の方のご相談を受けています。

9月ごろから増えてきたのが、
・幼稚園のプレ教室で、他のお友達がやっていることができません。
・入園願書がもらえませんでした。
・療育を受けるように言われたのですが…
・保育園の入園申請をしたら、発達支援が必要と言われました。等々
というご相談です。
 
幼稚園、保育園に入ることができると思っていたのに、まわりのお子さんの様子と我が子の様子の違いをつきつけられた。
しかも入園を拒まれるケースも多く、絶望と不安を抱えている保護者の方もおられます。

そんな時に出てくる「療育」というものは一体どのようなものなのでしょう。

今回は、この「療育」について、未就学のお子さんが対象の児童発達支援のことを相談支援専門員の立場から、前編、後編2回に分けて書いてみたいと思います。

「療育」の意味


「療育」とは、医療と育成の造語で、元々は肢体不自由児の自立に向けたアプローチとされていました。
現在では、身体障害のあるお子さんだけでなく、知的能力障害や神経発達症(従来の発達障害)、発達に心配のあるお子さんを含めた広い意味で使われているようです。
また、「発達支援」ということばも、「療育」と同じ意味で使われているようです。

早期療育の誤解


「療育」を考えるときによく出されるのが「早期療育」ということばです。
1日も早く、専門家の支援を受けることと世の中では考えられていますが、これにはちょっと誤解があるように思います。

人間の脳は可塑性があり、一部分が機能していなかったとしても、他の部分で補っていることがあります。そのため、早く専門家が対応していくことで可塑性を促そうということもあります。

※可塑性(かそせい)・・・神経系は外界の刺激などによって、常に機能的、構造的に変化を起こしており、ここではその性質のことを言う

それだけでなく、「早期療育」とは、早期に保護者を含めたまわりの大人がお子さんの特性を理解し、それに合った対応を専門家と一緒にやっていきましょうという意味も含まれています。

児童発達支援事業所に通えるようになった~安心!ではなくて、保護者も一緒に取り組んでいくことがお子さんの成長には必要になってきます。
そうすることで、二次障害を防ぐことができるといわれています。

※二次障害・・・一次的な疾患や変調が原因で、機能的/形態的な障害が起こり、それによって能力障害が生じ、環境に適応できず起こる障害のこと

「発達支援」は楽しいことが大事


こどもは、遊ぶことが仕事です。
遊んでいる中で様々なことを学んでいきます。
これは、「発達支援」が必要なお子さんも同じです。

大人だって、嫌々やらされることってどうでしょう。まったく楽しくないし、何も身につきませんよね。

楽しく遊ぶ中に発達に必要なことを入れ込んでいくことができることが発達支援の専門家の仕事、腕の見せ所と思います。
 
児童発達支援事業所を見学に行くと、○○法・△△療法等いろんな方法でお子さんの発達支援を行っていることがわかります。
「どの事業所を選んだらよいかわかりません」という声もよく聞きます。

ここはぜひ、お子さんが楽しく遊べる場、通える場、そして保護者の方が安心して任せられそう、相談ができそうと思える所を選びましょう。
様々なアプローチの仕方がありますが、お子さんの状況や性格により、合う合わないは違います。

ぜひ、お子さんも保護者の方も楽しく通うことができるところを選んでほしいと思います。

発達の道筋はどの子も同じ


保護者は、”幼稚園保育園に通園をさせたい””発達に不安のある子もみてほしい”と思っています。 
その一方で、保育園幼稚園の先生方の中には、”うちの園では見られない””発達に不安のある子を見たことがないからわからない”と思われる方がいらっしゃいます。

実は、発達の道筋はどんな子でも同じです。
違うのは、発達のスピードです。

定型発達と言われるお子さんたちは、自らまわりの環境から自分の成長に必要なものをつかみとって、成長をしていきます。
それに対して、発達に心配のあるお子さんたちは、自らつかみとる力が弱いだけです。そのため、放っておけば成長のチャンスを逃してしまいます。

そこで、発達支援の専門家の登場です。
お子さんの現状を読み取り、まわりの環境から必要な力をつかみとれるように、スモールステップとよばれる支援の階段を用意します。
具体的には、お子さんの持っている力(発達の最近接領域ともいわれます)に、ほんの少し力を足せばできる課題、ステップを用意し、達成感を味わえるようにしながら成長を促していきます。

このステップはお子さんによりまったく違います。
定型発達のお子さんが1段でのぼっていく成長の階段を、お子さんに合わせて10にも20にもわけて設定をしていきます。
また、環境を整えることも同時に行います。
 
そのスモールステップを保護者を含めたまわりの大人たちが共有していくことが重要です。共有をしていくことにより、普段通っている幼稚園や保育園でも生活していくことができます。
そのサポートとして、保育所等訪問支援事業や巡回相談事業というものがあります。


(参考資料)
「保育所保育指針」厚生労働省
「児童発達支援ガイドライン」厚生労働省
「知っておきたい発達障害の療育」ミネルヴァ書房

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