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スーパーマリオとモードレスデザイン

はじめまして、アジケでUIデザイナーをしている半田と申します。

近年のWebやアプリのデザインの一つのトレンドとして、『モードレスデザイン』という言葉があります。
また、OOUIを理解するためのキーワードとしても『モードレスとモーダル』という概念が重要になってきます。

モードレスデザインとは

モードレスとは、その言葉通り 『モードがない』 という意味で、
相反する言葉として、モーダルという概念があります。

これに関しては、
詳しい記事があるのでそちらを参考にしていただければ幸いです。

この記事では
その概念をわかりやすく感じるために、
モードレスを極めた1つのデザインを紹介し、理解の一助となればと思います。

そのデザインとは、スーパーマリオブラザーズの1-1です。

スーパーマリオブラザーズ

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スーパーマリオブラザーズとは、任天堂が1985年に発売したファミリーコンピュータ用ゲームソフトです。
このゲームのプレイヤーが、最初に訪れプレイすることになる1-1は、
『遊びながらルールを学習できるようにモードレスに設計されている』 と言えます。

マリオに慣れきった我々にはやや難しいことになりますが、
ここから初めてマリオをプレイする気持ちで読み進めていただきたいです。

① はじめての画面

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ここにきた時に、
何も考えなくても、右に進めそうなことが分かるのではないでしょうか。

ここでは視覚情報として、

・ 左側に配置された、顔が右に向いた状態のキャラクター
・ 左は山で閉塞的なイメージがあり、右側に開けた空間が広がる
・ 右に進まない限り何も起こらない静的な空間

がデザインされています。

このように、ユーザーが次にすべきことを画面のレイアウトで暗示し、
説明書を読まなくても、右に進むゲームなんだということがユーザーに予期されます。

② はじめてのキノコ

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はじめてキノコが出た時、びっくりするのではないでしょうか。

しかし、マリオをプレイしたことのある人の中で、
一度もキノコに触れたことのない人は1人もいないと思います。

その理由は
『キノコは敵ではないこと』
『強制的にキノコをとってしまうレイアウト』
がデザインされているからなのです。

ここでデザインされているのは

・ 自分と同じ方向に進むということから与えられる安心感
・ うまくキノコを取れなくても土管に跳ね返って帰ってくるような配置
・ ブロックでジャンプすることを防ぎ、キノコからの逃げ場をほとんど無くし、強制的に成功体験を積ませるレイアウト

です。

③ 緩やかにあがっていく難易度

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なんとなくプレイしていても、なんとなく様々な局面に対応出来ていく感覚は、ゲームの1つの面白さだと思います。

1-1のコースを俯瞰して見てみると、
何度も同じような形状が反復されていることに気付きます。

なんとなくプレイしていても、出来るようになってしまうのは、
『緩やかだが確かにあがっていく難易度』 がデザインされているからです。

・ 「敵がいない」「穴がない」など、失敗しても良い場所を経験させる
・ 似たモチーフを用いて難易度をあげていくことで、プレイヤーの学習の過程で「ハラハラ」と「成功」を経験させる


ユーザーに成功体験を積んでもらうことで、操作に慣れ親しんでもらうことが設計されていることが分かります。

モードレスの世界

スーパーマリオブラザースには、
チュートリアルのような画面や、途中で解説してくれるナビゲーターもありません。
まさにモードレスな設計と言えるでしょう。

3つのシーンを見てきたようにスーパーマリオブラザースの世界では、
その解説がなくてもプレイヤーにゲームを遊んでもらえるようなデザインが施されていました。

モードレスの世界では
いかに意図通りに経験させるかという設計が大切になってきます。

なぜマリオはモードレス?

マリオは非常に高度にモードレスなデザインが施されていますが、
なんでそこまでしてモードレスにするのでしょうか。

それは 面白さの設計を徹底している からだと思います。

例えば、ユーザーに分かりやすいように...と

『右に進んでください』
『敵を踏んで倒してください』
『キノコを取ってください』
『Bボタンでダッシュしてください』

とアクションを逐一モーダル的に促されたらどうでしょうか。

せっかく遊んでいるのにリズムも失われ、面白さが損なわれてしまいます。

なんとなくのプレイの中に
こうしたらこうなるかな?と小さな仮説をユーザーに立てさせ
それが正解だ!という成功体験を積ませることで、
ユーザーは自身でその道具の使い方を学び、操作できるようになっていきます。

自分には上手く扱えるという帰属意識が高まり、
このゲーム面白い! という実感を与えているのだとされています。

終わりに

マリオのデザイナー宮本茂氏(現 任天堂代表取締フェロー)は、
1-1は全てのステージのデザインが終わった後、最後にデザインすると語っています。

長い期間同じアプリやサイトをデザインしていると、
機能に慣れてしまって、初めて触れるユーザーにとって何が一番良い体験なのか、分からなくなりがちです。

初めてのユーザーがどう使って、どう自由に使えるようになるのか
にいつも立ち返って、振り返りながらデザインしていきたいです。

参考/引用文献

書籍

出典

Legendary Nintendo designer explains the secrets behind Super Mario Bros.’ iconic World 1-1
mariouniverse


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