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ウィーン・プレミアム・コンサート 4月6日 東京オペラシティコンサートホール

 今回は、4月6日 東京オペラシティ コンサートホールで聴いてきたトヨタ自動車が主催し20周年を迎えたウィーン・プレミアム・コンサートについて書きたいと思います。
 トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーンは、ウィーン・フィルのコンサートマスターのフォルクハルト・シュトイデが芸術監督を務め、ウィーン・フィルとウィーン国立歌劇場のメンバーを中心とした30名の室内オーケストラであり、ウィンナワルツを中心とした今回のプログラムは、日本にいながらにしてお正月のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを生で聴くことを体験できるような素晴らしいコンサートだったと思います。

 

 冒頭のこうもり序曲から明るく軽快でユーモアに溢れ、まるでウィーン国立歌劇場のオーケストラピットから音楽が聴こえてくるような雰囲気を味わうことができ、オペレッタの音楽の世界に惹きこまれていきました。つづいて、第2幕より“侯爵様、貴方のようなお方は”と第3幕より“田舎娘に扮するときは”の2曲のアリアでは、コロラトゥーラソプラノの妙技と可憐でユーモアのある歌唱を堪能しました。プログラムノートによれば、ソプラノのリッターはウィーン・フォルクスオーパーと専属契約している20代の若手歌手でアデーレ役も歌っているとのことで、役柄にぴったりな歌唱と容姿に魅了されました。また、オペラやオペレッタを生で聴くのはコロナ禍のため4年ぶりだったこともあり、オペレッタの世界に陶酔しました。
 前半のハイライトは、最後に演奏された≪春の声≫だったと思います。ソプラノ独唱のバージョンであり、カラヤンがキャスリーンバトルと共演した1987年のニューイヤーコンサートの録音で聴いて一度生で聴いてみたいと思っていたのですが、華やかで明るく美しい演奏で、待ちわびた春にふさわしい美しい音楽となっており幸せな気持ちになれました。

 プログラム後半のJ・シュトラウス 喜歌劇「踊り子、ファニー・エルスラー」より“シーヴェリングのリラの花” 、喜歌劇「ウィーン気質」より“なつかしい愛の巣”  R.シュトルツ “プラーターに再び花は咲き”なども曲名が洒落ていて抒情的でリッターの歌唱も美しく音楽に陶酔しました。またアンネン・ポルカのウィーン情緒香る可憐なポルタメントや最後の美しく青きドナウなどの名曲も聴くことができ、ウィンナワルツを堪能することができました。ウィーン・フィルには、バイオリンのヴィブラートやポルタメントの奏法など独特の豊かで暖かく美しい音色があり、それに身を浸すことの幸せは格別でした。美しく青きドナウはオーストリアの第二の国歌であり、プロシアとの戦いに敗れ疲弊したウィーン市民を勇気づけるために作曲されたと言われていますが、コロナ禍の3年からやっと平穏な日常生活を取り戻しつつあるこの時期に聴いて、改めて、J・シュトラウスの音楽は、明るくユーモアがあり、人を勇気づける、美しく、幸福感を味わうことができる素晴らしい音楽だと実感しました。アンコールには、観客が候補の2曲の出だしの部分を聴いて好きな方を選べるという粋な趣向があり、盛大な拍手で≪わが夢の街ウィーン≫がリクエストされ、ウィーン愛と幸福感に満ちた音楽でコンサートを締めくくりました。

 

 ウィンナワルツをもっと聴いてみたいと思っている方に、いくつかの録音を御紹介したいと思います。ウィンナワルツの名曲を聴くのにお薦めなのがウィーン・フィルのコンサートマスターでニューイヤーコンサートで弾き振りをしていたボスコフスキーの名曲集です。オーディオメーカのエソテリックが出しているボスコフスキー&ウィーン・フィル/シュトラウス・コンサートはSACDのため音質が良く、ワルツ≪美しく青きドナウ≫、アンネン・ポルカ、ワルツ≪南国のばら≫、常動曲、ワルツ≪ウィーン気質≫、ピツイカート・ポルカ、ワルツ≪春の声≫、皇帝円舞曲、ワルツ≪ウィーンの森の物語≫、ワルツ≪わが人生は愛と喜び≫、ラデツキー行進曲が収められています。あわせてDECCAの美しく青きドナウ~ウィンナ・ワルツ名曲集 ボスコフスキー/ウィーン・フィルに収められているレハールのワルツ『金と銀』ヨーゼフ・シュトラウス『天体の音楽』などを加えれば、この2枚でほぼ名曲を網羅することができていると思います。また歴史的なコンサートとしては、1987年のカラヤン、1989年、1992年のクライバー、2002年の小澤などがお薦めです。毎年、旬の指揮者が独自のプログラムで振り、新曲も取り入れているので、選曲にも注目しながら聴くと、より一層ウィンナワルツの世界を愉しむことができます。ニューイヤーコンサートを聴き幸福感に浸り英気を養うのが私の新年のルーティーンになっています。

参考盤
ボスコフスキー&ウィーン・フィル/シュトラウス・コンサート
 ウィリー・ボスコフスキー指揮 ウィーン・フィル 
 エソテリック ESSD-90129

美しく青きドナウ~ウィンナ・ワルツ名曲集
 ウィリー・ボスコフスキー指揮 ウィーン・フィル 
 DECCA UCCD4091

ニューイヤーコンサート1987
 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ウィーン・フィル
 DG Deutsche  Grammophone UCCG-53069
 
ニューイヤーコンサート1989
 カルロス・クライバー指揮 ウィーン・フィル 
 Sony Classical SICC-40032
 
ニューイヤーコンサート1992
 カルロス・クライバー指揮 ウィーン・フィル 
 Sony Classical SICC-30338

ニューイヤーコンサート2002
 小澤征爾 指揮 ウィーン・フィル 
 DECCA UCCD40001
                 


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