帰り道の”あの時間”がなくなったら私は私でなくなってしまうよ

~医療系ライターが送るエモコラム~共通テーマ「帰り道」

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自宅や実家までの「帰り道」に物思いにふける。私はあの時間がたまらなく好きだ。

青春や就職、退職、同棲など……。私の人生のターニングポイントは帰り道にあるといっても過言ではない。

ちらっと前置き。
そう、今日のテーマは「帰り道」だ。

帰り道は特別で大事な時間だった

小学生のころ、帰り道に考えていたことといえば「早く帰らないと門限に間に合わない!」だった。
中学生のころは「今日の夕飯は何かな~?」だったし、それ以降は、もっぱら恋愛に一喜一憂しながら、実習の予定とバイトのシフト表をにらめっこしながら帰っていた。

当時、自宅までの帰り道は私にとって「特別な時間」。誰かに邪魔されるでもなく、ありもしない空想を膨らませたり、今日あった出来事を思い出したりする時間だった。

嬉しいことがあった日は、家族にそれを早く伝えたくて急ぎ足で家に帰ったし、悲しいことがあった日は、どこかに寄り道して家族にばれないように、こっそり泣いて気晴らしして帰ったこともあった。

そうやって、いつのまにか大事なことや悩んだときは、帰り道に答えを出す習慣がついていた。

あの日歩いて帰ったから、今、私は私らしく生きている

社会人になって歩いて帰る機会は少なくなった。三次救急の病院に就職したこともあり、とにかく忙しい。

あれだけ好きだった帰り道の時間もバスを使ってさっさと済ませるようになった。
とにかく早く帰って身体を休めたい 。
ご飯を食べるぐらいなら、趣味の時間を作るぐらいなら寝ておきたかったし、毎日を忙しく過ごしているうちに、次第に帰り道をどう過ごすかなんて忘れていった。

そのうち無理が続いたのか、身体にガタがきて倒れてしまった。しばらく入院して自由な時間ができたとき、ひどく安堵した。
今思えば身体だけでなく心も悲鳴を上げていたのかもしれない。

そんなことがあって、退職するかを迷っていた日の帰り道。

ふと、
「歩いて帰ろう……」
そう思った。
自宅から職場までの帰り道は、歩いて一時間ほどの道のり。
いつもなら絶対にそんなことはしないだろう。

どういうわけだか、その日はどうしても昔のように、自分の足で時間をかけて歩いて帰りたかった。

その日、一日をどう過ごしたかはもう覚えていない。けれど、帰り道のことだけははっきりと覚えている。

これまでの生き方と家までの道のりを重ねるかのように、私は帰路を丁寧に歩いた。

すでに日は暮れていて、信号機の明かりやお店のネオンが鮮明に映った。雨上がりだったからかもしれないし、退職を決意し気分がハイになっていたからかもしれない。
車が流れる音、脇をすり抜けていくバイクや自転車の音、これまでに幾度となく聞いてきた音なのに妙に新鮮だった。

「昔もこうやって、一日を振り返りながら帰ったなぁ」

私はゆっくり時間をかけて帰りながらひとつの答えを出した。

「今の勤務先から離れよう」
「諦めがつくまで、自分の好きなことをしてみよう」

と。

それから私は、彼との同棲を機に、長年の夢であった「物書き」として生きることを決めた。

在宅ワーカーは納期まで比較的時間にとらわれない働き方ができる。取材や打ち合わせで外に出る日もあれば、数日自宅に引きこもっている日もある。
どんな働き方にも悩みや苦労はあるが、今の働き方は私に向いているようだ。

退職を決めた日、一時間かけて歩いて帰らなければ今も病院で働いているかもしれない。

院内を忙しく駆け回っている自分が好きだったし、あの日々は私の誇りだ。
けれど、長年の夢をかなえるために自宅で忙しく過ごす今の自分はもっと好き。

あの日の帰り道は、ターニングポイントのひとつとなった。あの日以降、私はまた、自分だけの「帰り道ライフ」を楽しんでいる。

いつだって、帰り道の”あの時間”はある

私は人付き合いが得意ではない。人間関係で傷ついたり傷つけたり、逃げ出したりもした。

そんなときでも「帰り道」は変わらずあって、帰り道の時間を大切にすることで、人間関係で悩んでも自分の気持ちに折り合いをつけ、なんとか前へ進んできた。

これから先も、私は帰り道の時間を誰よりも大事に丁寧に過ごす。退職を決めた日がなければ今こうして思いを綴ることもなかっただろう。

私は今、この記事を出かけ先で書いている。これを書き終えた後、愛する人が待つ我が家へ、一日を振り返りながらちょっぴり足早で帰るのだ。


※本記事は、看護師ライターのゆみかさんとの共通のテーマを用いた企画です。#エモの成長を見守る

お読みいただきありがとうございました。

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ほっち

医療系ライターが送るエモコラム

普段、堅苦しい文章を書くことが多い医療系ライターの二人が「もっとエモい文章書きたい!書けるようになりたい!」という思いでマガジン化。さて、どのくらい成長するかな(笑)
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