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緊急事態宣言下、腹痛で救急搬送された話

「妹が埼玉から泊まりに来る」という小さなイベントすらも見合わせる慎重な大型連休も彼方へ通り過ぎた2021年5月某日、都内某賃貸マンションで事件は起きる

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初夏の光が眩しく差し込む朝、腹部に嫌な痛みを覚えた。やがて良くなる事を期待し暫く耐えるもみるみる増悪化。
やがて身動きひとつ取れなくなり、ついに観念して救急車を呼んだ。
薄いわヘロヘロだわで他人に見せるにはみっともない部屋着が気にはなったが、救急隊員はこーゆー事態にも慣れてるだろうと割り切るしかなかった。ベッドに横たわり激痛に足掻く人間に、着替えなど器用な事はできない。
男性隊員が3人がかりで動かない私を担架に乗せ、マンションの三階から階段を慎重に降りて救急車まで運んでくれた。

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意識の確認、体温測定などされつつ背中をさすられながら色々な質問をされた。
「生の魚など食べましたか?」「食..べてません....」何となく食中毒の類でない事は体で感じながら総合病院へ着。看護師が出迎える。
スピーディーに院内へ運ばれるかと思いきや、入り口でストップ。担架に寝かされたまま体温測定を促される。
この時の私は激痛で意識が朦朧としており、なんでまた病院目前で体温検査なんじゃと思いながら体温計を必死に受け取った。「37.4度」「高めですね...」 看護師の表情が曇る。
喉の痛み、咳、嗅覚と味覚の確認をされたところでやっと気付いた。 
あ。コロナ感染の疑いが強いと病院に入れないのか。私は微熱と腹痛以外の症状は無く引き篭もり生活であった事を嘘偽りなく答えた。

結果、重い病院の扉が開く。
あらゆる検査を経て、緊急手術の可能性を示されつつも確定診断に至らないまま入院を余儀なくされた。
が、すんなりと病室へ行ける訳ではない。
「入院にはPCR検査が必須、陰性なら入院可能です」

で では、陽性であればー
異常事態で緊急事態な陽性患者は、どうすればよいのかー 聞けなかった。
こんな形で初めてのPCR検査を受ける事になるとは。鼻の奥まで長い棒を突き刺される。地味に痛いが腹痛の比ではない。

1時間待ち、入院病棟へ案内された。私はこの時も立ち上がれなかったが、鎮痛剤の点滴により座る事ができ、看護師が車椅子を引いてくれた。
「あの、私、陰性でしたか?」
「はい。陽性ならば入院はできません。」
「入院できない時はどうなるんですか?」
「一旦、自宅待機かー.... 他の病院...を...」

ゾッとした。
入院したいなんて思ったことはないけれど
人生で初めての入院を余儀なくされるぐらい私は今、ピンチであるらしくー
最速で救急車に運んでもらったところで医療を受けられなかったかもしれないのだ。
もし入り口の体温測定で、37.5度と出ていたらー?
病院の扉は、開かなかったのだろうか。

ここでは私の病名など詳細は省略しますが、(感染症の類ではありませんでした)よりお伝えしたい事は「私が大変だ」より「医療現場が大変だ」という事です。
言われんでもとっくにご存知だと思いますし私もその認識はありましたが、身に降りかかると衝撃でした。

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私が搬送された病院はベッドの空きがあったので「陰性ならOK」であったがー 搬送先や状況によっては「陰性でもNG」だったかもしれない。
コロナ感染しても早めに回復し後遺症が残らない人は数多くいる。殆どがそうなのだろう。
しかし、仮にどんな逞しい健康な若い人でも「突発的で緊急性の高い病気や怪我」に、いつ見舞われるかは分からない。
その際、コロナ感染または疑いが色濃い
あるいは病院そのものが満床であればー?
自宅に戻されたり受入先を探している間に、コロナ感染と直接関係のない病気や怪我までもが悪化し、最悪、命を落としてしまうのだ。

人生で最も心細く命を危ぶんだ瞬間に「医療を受けられないかもしれない」という容赦なき現実は、絶望の色を濃くした。
これは世界中で起きていて、今や何も珍しい事ではない。だからこそ。

私はその後、入院を経て、投薬と絶対安静でそこそこ症状が緩和され、手術は一旦見送られ通院と自宅安静を条件に何とか退院しました。
しかしまたいつ緊急性を伴って運ばれるかなどは分かりません。
その時にこの国の医療を受けられるのかー
保証はないので。


逼迫した医療に何一つ貢献できない以上、自分が感染しない様、他人に感染させない様に。
努力を徹底するしかないと改めて感じる事件でした。
ただ、個々で出来ることを頑張るとしても
国民よ都民よ頑張れ自粛れと、緊急事態宣言を繰り返すだけ繰り返した先に国際的な祭典を盛大に催さんとする近未来には恐怖しかない、23区民です。

病気、診断名のレポートについては色々と落ち着いてからそのうち書くかもしれませんが、とりあえず私は生きております。

ちなみに人生で初めての「入院生活」について少し触れると、一切の面会禁止というのは実に楽しくないポイントでした。

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コロナ陽性患者の事ではよく聞きますが、「コロナ陰性」患者の入院も、実質は監禁というか閉鎖病棟。院外への移動は勿論のこと、売店や他フロアへの出入りも禁止。院内クラスター対策なので仕方ありません。
私は夏でも日常的に白湯、お茶、珈琲など温かい飲み物を飲んでいたので、容態が安定し歩ける様になってからも、それらを求める術のない事は地味に辛かったです(冷たい飲料の自販機は一台ありました)。
陽性でも陰性でも、長く苦しく孤独な入院生活。温かな飲み物ぐらいは手に入れられたら良いのにな.... などと言ったらベッドや看護師が足りない緊急事態では怒られそうですが。

今回、突発的かつコロナ渦の閉鎖下で入院中の着替えやら生活用品も色々と高くつき不便だったので、退院して真っ先に「入院セット」を準備しました。
緊急性があるも入手困難という意味で最も重要と感じたのは「携帯の充電器」「マスク」です。パジャマや歯ブラシなどは院の有料アメニティーセット・後払いで何とかなるのですが、売店やコンビニや自販機すら行けず見舞いもNGだと、中々揃えるのが難しい。院内有料セットの中身は綿棒やカミソリなどより使い捨てマスクを優先的に入れて欲しいと切に感じました。
とはいえ、患者は患者で出来る工夫をするしかありません。
当日、余裕がなくても2秒で支度できる様に。
私の部屋の棚には現在、入院セットのビニールバッグが堂々と鎮座しています。
これが活躍する機会がない事を祈りつつー

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何のタシにもならない言葉ですが
皆様、どうぞお身体に気をつけてください。


救急搬送された患者を即時受け入れ入院させたところ、その患者から院内クラスターが発生し新規患者の受入停止という事案が都内のすぐそこで発生しています。
本記事はコロナ陰性の入院患者視点ですが、医療従事者にとっても最も苦しく過酷な状況には違いなく、状況の危惧こそすれど現場の方々を非難する気持ちはありません。
決して歓迎は出来ないであろう救急搬送患者にも真剣に対応してくださる医師・看護師・現場の皆々様へ感謝申し上げます。

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引用イラスト:©︎アトリエほっかむLINEスタンプ 

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