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道の駅 はにゅう①

「出身は 埼玉 です」と答えると何故かしらける。

「北海道」や「沖縄」だったら

「おお!」と謎の歓喜が湧くのに 対し
「埼玉」には それ がない。

「あぁ、埼玉ね。」と勝手に納得されたうえ
「ちなみに、先週のアメトーク見た?」と勝手に会話がすり替えられている。

「埼玉は何もないよね」と思われる度に心が痛い。

だが、

「何もないのが埼玉の良さだよ!」
と無駄に張り合う自分は もっと 痛い。

しだいに私は「埼玉コンプレックス」を抱き、
「出身は埼玉ですけど 現住所は 東京です」と
面接で しょうも無い見栄を張る 卑しい大人になった。

しかし、
そんな県民コンプレックスを拭い捨て、
県民のプライドを 再起させる 道の駅が出現!

その名を、「#道の駅はにゅう 。」


そこは埼玉県の北東に位置する 羽生市、
かの有名な 故 関口 義明 (せきぐち よしあき)の出生地だ。

関口 義明といえば 羽生市の#藤田ニコル
ほどの知名度と影響力を持つ 偉大作詞家であり
彼の代表作 「あゝ上野駅」が刻された石碑が
ここ道の駅の敷地内に設けられている。

目前のボタンを押すと


スピーカーから近隣迷惑に繋がりかねない
猛爆音の 「あゝ上野駅」が流れて
その あまりの振動に思わず身体が跳ね除けてしまう。

そして、

「上野は僕らの心の駅だ〜」と唄の終盤になると
背後から 地元の ばあちゃんが 石碑に近寄ってきて

「あぁこの曲。家族と別れて集団就職したときのことをね、思い出すのよね」

と 目に涙を浮かべ 私は 黙って そのか細い老婆の背中をさそる という ベタなホームドラマが演出されてしまった。

他にも ここの直売所では 珍しい観賞魚の販売もしている。

農産物と同じコーナに金魚が陳列してあり
そのアベコベな感じが たまらない。

直売所の店員、渡部さん(仮名)に話を聞いてみると
「この金魚は道の駅で一番の売れ行きですよ、あ、一番は嘘ですね。でもそれなりには売れてますね へへっ」

と 50代の「へへっ」を 左へ受け流して
お目当ての 加工母ちゃんコーナーに足を運ぶと

羽生市の郷土料理である
「いがまんじゅう!!!!」

大々的にメディアに取り上げられたのが高じてか、
羽生市のマスコットキャラクターが
「いがまん ちゃん。」

中学男子が ものの数分で生み出しそうな
ローコスト ロークオリティで
それが余計に愛おしくさせる という市の戦略にまんまとのってしまう私。

早速、購入した 「いがまんじゅう 」を
すぐ先の利根川を眺めて食べるのが最高に気分を上げる。

片手に綾鷹と綾鷹色に淀んだ 利根川が
この日ばかりは 「いがまんじゅう」を
一層美味しくさせるのは あまりに不本意だ。

そして他にも絶対に忘れてならないのは
「切り干し大根 おやき。」

味は おやきの名産 長野にある 「#道の駅おがわ」に
負けず劣らずで、中の具材に 「干し椎茸」を使うたあたりが 農村女性部の プロ意識を感じさせるし それを裏切らない 食味には感嘆する。

「お店の仕事は 辛いけど
胸にゃでっかい 夢がある〜♪」と

後ろから 近所のおじちゃんが 「あゝ上野駅」を熱唱し、それを もみ消すように 小さな坊主が
「金魚かうのーーーー涙」とママに懇願するのを 必死に なだめる パパ。

何もない埼玉県。

それでも、やっぱり

「何もないのが埼玉の良さだよ!」
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