手抜き試合

昨日の記事に書いた「ギャンブルレーサー」と言う漫画に出てくる印象的だったお話を1つ。

主人公の関(せき)という男には息子がいまして、この息子が野球をやっておりまして、中学校から始めたんですけどピッチャーの才能がありまして、通ってた中学校は近所の公立校だったんですけど、そいつのおかげで結構良いところまで勝ち上がることができたんですね。

それで一躍有名になって、いくつかの高校からスカウトが来て、高校は野球名門校に行くことになったんですね。

で、そっからメキメキと頭角を現し、夏の甲子園に2度出場する程の大活躍をするのですが、高校3年の最期の夏、とある事件が起こります。

それは夏の地区予選の初戦。相手は弱小の進学校でした。こういうとアレですが、勉強ばっかりしてても身体によくないからちょっとは運動しとくか程度の感覚でやってるような野球部でした。

よって超ヘタクソ集団なわけです。

このヘタクソ集団というところが大きな問題を起こします。

関の息子の高校はもう初回から猛攻を仕掛け、大量リードを奪うのですが、ここで予想外の展開が。

攻撃が終わらないのです。いつまでたっても。

相手の守備がヘタ過ぎて、通常なら凡打になる当たりもヒットになってしまうのです。

ある程度点を取ったところで選手も監督も気が付きます。「これ試合終わらんぞ」と。

そう気が付いてから、どうにか試合を終わらせようという方向へ話が進みます。

「なるべく優しくボールを打って、ボッテボテのゴロを野手の正面に打てばさすがにアウトにしてくれるだろうから、トスバッティングのような打撃をしよう!」という作戦を立てました。

結果はダメでした。ボテボテの正面の打球でも、相手はエラーを繰り返し、ワンナウトも取ってくれません。

どんな打球を打ってもアウトにしてもらえない。試合時間は長くなる一方。このままではいたずらに体力と時間を消耗するだけ。痺れを切らした関のチームの監督は、とうとう最期の手段に出ます。

「お前らもう全員わざと三振しろ!」

もう試合を終わらせるためにはそれしかないですからね。

選手達も早く終わらせたい一心で命令に従います。

これによって無事に試合は終わりました。

が、この試合をたまたま観ていたマスコミの人間が、「これはネタになりそうだな」と思い、『強豪野球部、弱小校相手に手抜き試合!わざと三振する!』という見出しで記事にしたのです。

これが連日テレビ等で話題になり、相手の高校が可哀想だということで関の高校は猛烈なバッシングを受けます。

バッシングを受け続けた結果、関の高校はその後の試合出場を辞退するハメになりました。

これ、漫画の中の作り話なんですけど、めちゃくちゃリアリティのある話だと思うんですよね。

実際に高校野球で同じこと起こったら、おんなじようにバッシングされて、出場辞退させられるハメになりそうですよね。

なおかつこのケースに関しては、わざと三振する以外の解決策も見当たらないです。相手の高校が「もう負けで良いです」って言わない限りは、100点取ろうが200点取ろうが5イニングが終わらない限り試合は続くし、5時間かかろうが10時間かかろうが試合は終わりません。

「最初から最期まで全力を、ベストを尽くす」ってのは原則だし、それに則るべきだとは思いますが、にしたって限度ってのはあると思います。

たまに地区予選とかで50点差とか100点差とかの試合があったってニュースを見ますけど、あれはどっちも辛いんでしょうね。コールドのルール見直したほうがいい。

実力が拮抗してての『6時間超えの激闘!』ならともかく、実力差がありすぎての『6時間超えの激闘!』は冗談でも笑えないです。審判が死にます。

にしても世論てのは厄介ですね。常に自分が一方的に攻撃しても大丈夫なターゲットを探してますから。見つかると暇つぶし感覚で他人の人生狂わせに来ますから。

あとこの話、考え方を変えると新しい強豪校潰しに使えそう。新型の八百長ができそう。

高校野球ってホントめんどくさいですね。

読んでいただいてありがとうございました。退屈しのぎにでもなっていれば幸いです。