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【第22話】園内研修だけじゃだめなんですか⑤

しばらく三人で考え込んでいたが、今回も順子が口火を切った。

「日々の保育記録の代わりに、保育のドキュメンテーションを作るというのはどうでしょうか?」

順子は承認を求めるように油井園長の方を向いて言った。よほど思い切った意見だったのか、油井園長は少し驚いた様子で答えた。

「・・・そうね。でもドキュメンテーションだと、今の保育記録に入れている保育の計画の部分が欠けてしまうわね」

どうやら油井園長の頭の中には、新たに取り組みたいドキュメンテーションの具体的なイメージがあるようだった。栗田はA4用紙とペンを一本用意して言った。

「園長先生が考えていらっしゃるドキュメンテーションとはどのような項目が入るものなのか、簡単に教えていただけませんか?」

油井園長はドキュメンテーションに入れることを想定している項目を栗田に伝えた。
栗田は簡単な表を作成した。

油井園長が考えているドキュメンテーションに入る項目は、次の通りであった。

・子どもの姿
・保育者の援助

一方、現在の保育記録では、さらに次の二つの項目が含まれるとのことであった’

・ねらい
・考察(保育のふりかえりとそれをふまえた改善点など)

栗田の書いた表を眺めていた順子が突然、「あ!」と叫んだ。

「今、職員のほとんどがパソコンで保育記録を作成しています。日々の保育記録はそのまま続けて、少し形を変えてドキュメンテーションを作るというのはどうでしょうか?たとえば、写真を追加するなどしてみたらどうでしょうか?」

「いいですね。何かを減らす、無くすのではなく、日々の保育記録を活用してドキュメンテーションを作るのですね!」

「いいかもしれないわね」油井園長も同意した。

「こんなアイデア今まで全く思いつきませんでした。話してみるものですね」と順子は言った。話し合うことの大切さは、今日の園内研修に参加した職員の様子を見ていて、感じてはいた。ただし、今始めて自分の体験を通して、話し合いの意義を実感できた。

「では、まずはこの三つに取り組んでみましょう。今度の園内研修は二ヶ月後ですので、一ヶ月後にこの三つの取組みのふりかえりを一緒に行いましょう。ただ、一つお願いがあります・・・」

その時、ノックが聞こえ栗田は話を中断した。油井園長が入室を促すと、一人の男性保育士が三人のいる事務所に入ってきた。保育園の幼児リーダーである、飛田虎太(ひだとらた)だった。

「ストーリーで読むファシリテーション 保育リーダーの挑戦」一覧はこちら
https://note.com/hoikufa/m/mdab778217cb1

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