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保苅実とつながる会ニュースレター:Dec 2023

皆さん、こんにちは。年末年始のご挨拶にはちょっと早いですが、今週から子供たちが帰省しますので、その前に。

さて。ミノルが亡くなって1年後にうまれた娘の仁香瑠(ミドルネームは「みのり」)を、無事オハイオ州の大学に入寮させたのが8月半ばのことですが、私は10月半ばから三週間、日本に一時帰国しました。こんなに楽しく充実した一人旅はうまれて初めて。世話が必要な相手はいないし通訳の必要もなし。好きなときに好きなものを食べて、変貌した9年ぶりの東京、4年ぶりの日本で、アメリカ人化した私は何を見ても可笑しくて笑い転げながらの3週間でした。

東京と金沢で、ミノルの一橋時代の友人や、彼の研究に強く影響をうけた若い人たち、そして岩波書店の渕上皓一朗さんと図書出版みぎわの堀郁夫さん、東京と新潟で中学時代以来の友人たちに会いました。ひとりかふたりを除いて、ミノルが亡くなって20年近くメールだけのやりとりをした人たちと今回初めて会ったのです。私の中にミノルのかけらを見た彼らと話しながら、忘れていた思い出がつぎつぎに蘇ってきたのはほんとうに楽しく嬉しいことでした。

同時に、いまや大学教授になった彼らや若い研究者、出版を手がける編集者たちとの会話は、それはそれは知的なもので、これまでの私の人生に欠けていたものはこれだったと思いました。文系の彼らは思慮深く、その丁寧な言葉の選び方が、とても強く印象に残りました。

私が両親に会ったのは、コロナ禍のロックダウンの直前、2019年に高校を卒業した息子を連れて帰省した時以来です。まるで台風のような私が、彼らの幸せで静かで穏やかな生活に乱入し、私が何に大笑いしているのか、彼らにはまるでわからないまま過ごした1週間。これからは季節モノの台風のように、春と秋に「上陸」を果たすつもりです。

秋に「ラディカル」の第四版が出て、来年はじめにはデジタル版も出ます。御茶ノ水書房版も合わせて、紙の本は2004年の刊行以来、10,900部出ました。デジタル化する「ラディカル」は、さらに身軽になってまたまた新しい読者層に出会うことでしょう。

来年2月から5月の間に、順番に刊行が予定されている、保苅実著作集(全二巻)と、彼の英文博士論文をもとに2011年に出した”Gurindji Journey: A Japanese Historian in the Outback” の和訳本の出版準備は順調に進んでいます。7月に亡くなられたひとり出版社、みずき書林の岡田林太郎さんと、この企画を引き継いだ彼の後輩である、同じくひとり出版社、図書出版みぎわの堀郁夫さん。彼らとの出会いの経緯は、刊行される3冊のなかで私が書きましたので、お楽しみに。今回の滞在中に、解説をお願いした皆さんにお会いして、美味しい食事と楽しい会話とともに、私の人選は間違いなかったと確信しました。

岡田林太郎さんは、みずき書林のブログをもとに、「憶えている」という一冊を遺しました。保苅実が遺した一冊だけでなく、彼がどう病気と死と向き合って生き抜いたかが、岡田さんの中でどう活かされたのかが、わかります。どうぞご一読ください。

岡田林太郎さんには間に合わず、お目にかかることはできませんでしたが、岡田さんが出版し私に贈ってくれた一冊「マーシャル、父の戦場:ある日本兵の日記をめぐる歴史実践」の編者である大川史織さんと、奥様の岡田裕子さんにお会いすることができました。

編み物に興味を失った私が、最後に開催した “Nimara & Japarta: Knit-A-Thon 2022”からの寄付を林太郎さんのお名前でさせていただくこと(”in honor of Rintaro Okada” )を裕子さんに快諾していただき、先日無事にオーストラリア国立大学の保苅実記念奨学基金に寄付しましたことをここにご報告します。

最後になりますが、新潟市での写真展は、長いこと延期になっています。来年春の出版イベントを終えて、秋に新潟と東京と、できれば他の都市でも写真展を開催したいと思っています。

ご覧のとおり、2024年は楽しみなイベントが満載です。皆様にとっても、どうか良い一年になりますよう。

保苅由紀

オリジナルのメモリアルウェブサイト "Being Connected with HOKARI MINORU" のコンテンツは、オーストラリア国立図書館のデジタルアーカイブ Trove に 2021年4月29日の状態で永久保存されています。


トップの写真は、保苅実の母方祖父である芥田一馬が趣味で描いた水彩画です。


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