退職論文①

はじめに

 近年、若年層の退職が急増している。他国では何やら、グレート・レジグネーションなる流行もあるらしい。
 世界的に生活環境が変化し、働き方や生き方といったものを見直さざるを得ない状況下にある今、さして驚くべきことではないのかもしれない。そもそも転職者は増加の一途をたどり、転職の広告が至るところにあった状況ではあったし、退職を希望する状況や気持ちが理解できる人も多いだろう。ところが、どうやらそうでない人も多数いて、そしてその多くが彼らへの対応をかなり間違えており、結果、双方とも苦しんでいる現状があると気付いたので、自己省察も兼ねてハッキリ明文化してみることにした。
 要因をまとめるにあたっては、できる限り個人的な視点を除き一般化したつもりではあるが、私が退職した側であるということから退職希望者寄りの文章になり、雇用側の人にとっては不快な部分もあるかもしれない。だが、原因が分かれば対策ができるという観点から、ぜひそういう方々にこそ読んでいただきたいと願う。
 
 なお、端くれでも一応はエンジニアであった身として、「技術的な要因による、価値観・人生観の変化」にフォーカスしての考察、要はインターネット普及前後の比較をするため、生まれた時からネットのある世界で育った人—いわゆるデジタルネイティブ云々と言われる人にとってはごく当たり前のことばかりだと思います。ただ、まさにその「当たり前」の感覚が分からない引き留め側と、この「当たり前」を前提とする退職希望者が、その前提を共有しないまま話し合うために種々の対立関係が発生しているのではないかと考え、それを明らかにすることで、決裂することなく納得して背中を押し合える円満な別れの実現、さらにはアルムナイ活用による、双方にメリットある退職の増加を目指します。


0章 引き留め側の方々へ

 本題に先立ち、「転職先未定の退職希望者への対応について」注意とお願いをさせていただきます。本文はさらに長くなりますが、これだけは多く方に知っていてほしいです。


 ①引き留めは逆効果です。


 もうこの環境には居られないと思ったので退職を切り出しています。特定の人間のせいでも、部署のせいでもありません。事前に相談されなかったのは、引き留められたくないか、信頼関係がないかのどちらかです。強く引き留められるほど、拒否感や嫌悪感が増加し、「早く出たい」という気持ちが強くなります。

 一人の人間として退職者を想い、将来を心配してくださっての引き留めであっても、後述しますが選択肢は無数にあるので、辞めてから考えても全く困らないのが実情です。


 ②会社/皆が困ると言って非難するのも逆効果です。


 それは分かっていますし申し訳なく思っています。むしろ逆に、会社や皆が困ったって全然なんとも思わなければ居座ってサボりながら適当にやります。でも、「職人と違ってサラリーマンは取り換えがきく部品。究極その人にしかできない仕事はない。1人いなくなって会社が潰れるわけではないし、もし大量の退職者が出て成り行かなくなったって、1社なくなっても地球は回るし人生は続く」。本当に困窮するはずはないのです。困るではなく、面倒と言われるほうがまだマシです。困ると言っておろおろされ、同情と義務感から取り下げたとしても、拒否感や嫌悪感は爆増します。

 ちなみに「君が必要だ」と言われれば、喜ぶのではなく焦って新しい職を探し、強制的に退職を認めざるを得ない状況に持ち込みます。誰も幸せになりません。結果的に予定より早く退職する場合が多くなるため、冷静に交渉して双方にとって最適な時期を取り決めるほうが良いと思います。

 退職を認めてもらえる時期が見えれば、強行することはありません。「困る」といっていたずらに引き留めるのではなく、欠員を補うための具体的な方法を決め、それにかかる期間を明確に提示して、ビジネスマンらしく交渉してください。必要であれば本人にも協力を要求してください。実現のためなら精力的に動きます。対策を”決め”、”指示”を出す。それが、「経営・管理」職の最優先の仕事だと思います。


 ③退職を決意するに至る原因はやっぱり「人」。


 考え始めるきっかけは様々かもしれませんが、決定打を与えるのは人です。人間関係が良好で、信頼関係が築けていれば、ヘッドハンティングまたは具体的にやりたいことがある人以外は、正式に「転職/退職したい」と切り出したり踏み切ったりすることはありません。突然退職を切り出されて慌てる前に、仕事よりも人を大事にしてください。


 以下、その状態が良いか悪いかという話ではなく、「現状としてそうなっている」という事実のみを整理したつもりです。ただ自己省察を兼ねている以上、主観的・感情的になってしまっているかもしれませんが、現場からの生の声として、あるいは単なる一意見、または一生物の生態として、ご観察ください。


最後までお読みいただきありがとうございます♪