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困ること、不快になること、孤独になること、苦しむこと――それが旅行だ。


2020年2月16日。浅田次郎さんの 「ほんとうのおもてなし*」に触発されて。

そもそも、旅に「おもてなし」は必要だろうか?

私の旅の目的は、知らない街に溶け込むこと。正しくは、そこに生まれ育ったかもしれない自分を空想する、とでもいうのか。

ゆえに、写真映えする「美しいものを見て美味しいものを食べとにかく楽しく過ごす」という旅行には興味がない。

良い旅とは、「万事うまくいって快適で始終楽しかった」旅ではない。「いろいろあったけど無事に帰れたね」という旅だ。”帰る”から旅なのだ。

だから最良のお土産は思い出話の他にはないのである。どこにも売っていない、現地だけの限定入手品であるから、忘れないように注意されたい。

汗をかく、不自由する。だから、今度はこうしよう(また来よう)と思う。

癒しを求めて温泉旅館に泊まるときでも、手取り足取りお世話されたらたまらん。入院じゃないんだから。その場所の風景の一つになりたくて来てるんだから、もうずっと昔からそこに居たかのように扱ってくれればいい。
私はそれがおもてなしだと思う。

そもそも、快適と安寧を求めるなら、旅になんて出ちゃいけない。

中国でお腹を壊したり、モンゴルで虫に襲われたりしてきた。だから思う「今度からはスポーツドリンクの素と室内でたっぷり使える虫よけを持ってこよう」と。なんて賢くなったわたし。

備えあっても憂う。それが旅だ。これまでの常識をフル活用して備えて、憂い、また備えても、憂う。だから、考える。だから、見直す。
良い旅とは、常識を覆される旅だ。
快適になりたくて、順応したくてもがくから、そこに新しい知恵や自分が見える。

そういう意味では、読書も、映画も、音楽も、あらゆるものが、旅なのだろう。

*JAL-SKYWARD 2020年2月号 つばさよつばさ より

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