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介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる 連載第39回 「福利厚生⑦=106万円の壁」

こんにちは。ラボ事務局の杉田です。
今週もラボ代表及川による「介護新聞」連載企画(第39回)をお届けしてまいります。
第39回のテーマは「福利厚生⑦=106万円の壁」です。

 従業員の社会保険適用範囲を左右し、会社の人件費や労務管理に直接的な影響を及ぼすという点で「年収の壁」問題は見過ごせないポイントです。
 特に、中小企業や非正規雇用を多く抱える企業では、この年収の壁によって、労働者の福利厚生や税負担が大きく変動します。

 今回の記事では、この106万円という数字がビジネスにどのように影響を与えるのか、具体的なケーススタディを交えながら分かりやすく解説します。
 また、企業や従業員がこの壁にどのように対応すべきか、効果的な戦略を提案します。この知識を身につけることで、より良い労務管理と経営の見通しを立てることが可能になります。ぜひご参考にしてください!

介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる
連載第39回「福利厚生⑦=106万円の壁」

 今回は106万円の壁への対応です。「年収の壁」はいろいろあるのをご存じですか?「100万円」「103万円」「106万円」「130万円」「150万円」「201万円」の壁があるうち、社会保険側の壁106万円130万円。これ以外は税金における年収の壁です。

 簡単に税金の壁をまとめますので、リーダーはスタッフが何の壁を気にしているのか、整理しておきましょう。
① 100万円の壁 = 住民税のライン
② 103万円の壁 = 所得税。さらに配偶者控除が適用されなくなります
③ 150万円の壁 = 配偶者特別控除の額が段階的に減額されます
④ 201万円の壁 = 配偶者特別控除が適用されなくなます。


 106万円の壁は社会保険に影響する壁で、対象事業所は、「厚生年金被保険者数が100人を超える法人」となります。我が国の年金制度改革は厚生年金保険への加入者数を増やす方向で舵(かじ)を切っています。
 その一環として2022年には、厚生年金保険の加入適応要件を拡大して、被保険者数100人を超える規模まで下げ、そこで働く短時間労働者の要件を緩和したのです。
 その年収要件で、ざっくりとですが106万円を超える場合に強制加入としており、現在、106万円を境に、厚生年金が適用されない扶養の範囲、いわゆる第3号被保険者を選択している方がいるということです。

 ちなみに24年10月1日から適応を拡大し、厚生年金加入者数が50人を超える規模が要件になります。法人単位で見ますので、グループ企業が介護事業を運営するなど中規模以上の介護事業所は今のうちに要件についての理解を深めておく必要があります。

 23年10月現在、政府は社会保険適用拡大と人材不足による労働力確保の対策として106万円の壁に対するアプローチを示しました。実際は106万円よりも、月収8.8万円ととらえるとよいと思います。130万円の壁(前回記事参照)の際は、一時的な所得増ということで、第3号被保険者から第1号被保険者になることへの回避対応として2年連続まで、第3号被保険者のままでいれる対応にしました。

 106万円(月収8.8万円)の場合は、まったく対応が違います。106万円を超えた場合は、社会保険加入になります。その代わり、3年間に渡り、法人が負担する社会保険料増額に関する激変緩和措置として助成金を支給、という対応が発表されました。この助成金は、社会保険の適応を受けた本人ではなく法人が対象です。社会保険は会社と労働者が半分ずつ保険料を支払う仕組みなのでこのような対応にしたのですね。

 当該職員の対応として「社会保険適用促進手当」を創設しました。本人負担分の保険料を上限に社会保険の算定から除外する措置のことです。短時間労働者が社会保険適用にすると手取り収入が減少する「逆転現象」を防ぐため、それを補填する特例です。

 分かりやすいシミュレーションが、次の例です。
 ①年収106万円
→ ②16万円の社会保険料が発生手取り90万円(逆転現象)
→ ③16万円の手当を支給
→ ④保険料が18万円に引き上がる
→ ⑤手取り収入103万円(逆転現象解消せず)
→ ⑤16万円の「社会保険適用促進手当」を支給
→ ⑥保険料の算定対象とならない
→ ⑦手取り106万円(逆転現象解消)。

 社会保険適用促進手当を支給するかどうかは義務ではなく事業主の判断となりますが、「年収の壁」への労働者の関心は高いことから、現実的には何らかの対応を行うことが求められるでしょう。人手不足、最賃引き上げ、物高などの影響が重なって、採用事情はパートさんなどの非正規雇用の方がむしろ厳しい情勢になりつつあります。

 手当の支給を渋ることで適正な採用ができなくなり、今いるパートさんたちのモチベーションが下がってしまうことのないよう、むしろ助成金も絡めながら積極的に動くことが必要です。

介護新聞11/10付「介護福祉事業所の人事労務戦略室―次世代リーダーを育てる!!」
http://wwu.phoenix-c.or.jp/~medim/kaigo/2023/202311kaigo/kaigo20231110.html

今週もご訪問いただきありがとうございました!
また次回、第40回の記事でお会いしましょう!

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