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『作業』 『仕事』 『志事』

※注)今回は少し一人称の風に書いてみました。

#仕事について話そう

そこは地下街の少し奥まったところにある、昭和のかほりと淹れたてのコーヒーと古き良き”人間くささ”、そしてタバコの香りが入り混じった喫茶店。
少し奥の長ソファ席の一人用テーブルに席を取る。
タバコの煙が充満しているが、某国の光化学スモッグに包まれながら毎日を過ごしている人たちよりはまだ健康的なのでは無いかと自分を正当化させる。
当然の如く、自称愛煙家であるボクは席に座るなりまずはジッポーの音を店内に響かせた。
かく言うジッポーはそれほど良いものでは無いため、その響きを楽しんでいるのは僕だけの自己満足であることは言うまでもない。

「すみません、こちらのホットをひとつ、いただけますか。」

メニュー表を指さして店員さんへお願いをする。
僕は初めて訪れる喫茶店では、できるだけそのお店のオリジナルブレンドをまずは楽しませてもらうことに決めている。
隣の席では、70歳前後と思わしき、社会の荒波を全て乗り越えてきて、第二の人生を謳歌しているであろう雰囲気を醸し出している老紳士のお二方が、
ドラマ化もされていると言う小説の文庫本の貸し借りをして、ひとしきりその話しで盛り上がっている。
平日の午前ということもあり、店内にはやはり人生を謳歌している紳士淑女と、サラリーマン・OLと言ったビジネスマンが目立つ。
斜め前の四人がけの席では、これまた類に漏れないご淑女がホットコーヒーと共にファッション雑誌を片手に、その時を楽しまれている。

ホットコーヒーを楽しみながら、とある手紙の下書きを作成するため、カタカタとPCで耳障りでブサイクなリズムを奏でていると、ポツリポツリ、お隣のご紳士も、斜向かいのご淑女も席を立ち、空席となる。
人気のお店ということもあり(きっとほぼ100%の客が愛煙家であることは想像に難くない)、すぐに別のお客がやってくる。
やってきたのは、これまでの沢山の思い出と苦労と楽しみをてんこ盛りに入れた大きなトートバックを肩にかけたご年配のご紳士。
逆の手にはこれまた大きなバッグを下げている。
決して広いとは言えない店内の導線。ボクの嫌な予感は見事に当たった。
その確定的な予想を競馬に使えたら、僕はこの日、仕事の面接に街中へ出向いてはいないだろう。
断っておくが、この話しの主役は仕事の面接云々、ではない。

その大きなカバンで、ボクの隣の席の椅子をブルトーザーよろしく引っ掛けて椅子を押しずしてしまう。
心の中で、「あ〜〜……」とつぶやくが、もちろんそんな声はブルトーザーのガガガガガという轟音にかき消され、我が道を歩んできたそのご紳士はそれに気付かず、斜向かいの席へ。
椅子はちょうど椅子ひとつ分ずれててそこに佇んでいる。
もしその椅子に言葉という文化を持っていたとしたら、間違いなく文句の言葉の一つや二つはすぐそばにいたボクの耳に聞こえてきていたであろう。

そんな様子を見ると、きっと今の世の中であれば、

「これだからお年寄りは…」

なんて声が聞こえてくる気がするのはボクだけでは無いと思われる。

さて、皆様は今日のお話しの主人公はその人生の思い出を沢山に詰め込んだバッグを持った老紳士…

ではない。
今回の主役の登場はもう少し先へ預けさせていただく。

景色を店内の様子へ戻そう。

そのズレた椅子のすぐ目の前を、実に三人ものスタッフさんが通った。
その仕事ぶりは、テキパキとメニューをお客へ出したり、オーダーを取ったり、お冷を出したりと、そつないものであった。
だがしかし、誰一人として、問題のその椅子を直さなかったのだ。
というよりも、正確には、気づいていなかったのだと思われる。

テーブルセッティングをする
お客様にメニューをお渡しする
オーダーを取りに行く
オーダーを伝えに行く
商品を正確に提供する

もちろん、これらのことは飲食店のスタッフとして大切な仕事であるだけでなく、出来ることがマストとされる。
しかし、それだけに注意を払ってしまうがゆえに、周りを見ておらず、気付かない。

「なっていない店員だなぁ…」

そんな声が聞こえてきそうだし、そう思うのも当然のことと思う。
確かにそのスタッフさん達の能力の有無ではある。
しかし、ボクはこれは決してその店員さん達の能力の有無の問題ではないと思う。
マニュアルとして前述した様な項目をそつなく正確に遂行することと教えられ、
それが仕事であると錯覚させられていることが、そもそもの原因なのではないかとボクは思うのだ。
つまり、”仕事”ではなく、その全てが”作業”となっていること。
やっと、主役のお出ましである。

飲食店に限らず、世の中にある”仕事”とは、
それらを利用する人たちの

人生の豊かさのお手伝いをすること

だと、ボクは思う。
その想いの上で仕事をする時、
”仕事””志事”へと昇華するのだと思う。

好きな言葉に、

” 世界はあなたの仕事でできている。あなたの仕事が世界を変える ”

株式会社新規開拓代表取締役 朝倉千恵子

という言葉がある。

この世の中にある仕事は、

この社会の中で生きている全ての人々が
その人生を豊かに生きていく為に存在しているもの

というのがボクの持論でもある。
そして、お金をいただいているから価値を提供するのではなく、価値を提供するからお金をいただける、のだとも思う。
そのサービス(ここでは価値という意味で使わせていただく)が、それを利用する人の豊かな人生のひとつの礎になるのであれば、人は喜んでお金を払うものではないかと思う。
もちろん、現実問題として、無い袖は振れない、という言葉の通り、そのサービスを利用したい、手に入れたいと思っても利用・入手することが叶わない人も多いと思うし、知られていないだけということも多々あると思う。
なので、その価値にお金が集まらなくても、イコール価値が無いということではないと、ボクは思う。
その話しをすると、また同じ量の言の葉を綴らなければならなくなるのでまたの機会に譲るとする。

話しを戻すが、この世の多くの人が、世の中の”仕事”と呼ばれるものをしていると思われる。
しかし、皆様はぜひここで、ご自身の胸に手を当ててご自身に問うて欲しい。

本当の意味での”仕事”ができているだろうか?

大変僭越ながら、その多くが”作業”とはなってはいないだろうか。

どういうことか。

前述の喫茶店のということを例に取ってみると、

【作業】
マニュアルにあること、言われたことをその通りに行うこと

【仕事】
マニュアルに無い事も自分で考え、創意工夫を凝らして行うこと

【志事】
利用する人の豊かな人生の為に全ての行動を行うこと

と、考えられる。


では、どうしたら、【作業】から【仕事】へ、
そして【志事】へと昇華出来るのか。


それはまた、次の物語で。


〜〜〜 info 〜〜〜

POTOFU
(プロフィール・リンク集)

17LIVER
(毎日21時より生配信・ID:♥️𝕬𝖗𝖙𝖍𝖊𝖗🍸🐉)

ゆめのたね放送局ラジオパーソナリティ
(8月デビュー予定)

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